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第四部 一章 「その名は無色」

★序章★

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 ようやく樹海を抜けた一行。
 小さな街で宿をとり安らぐも、水面下では魔銃使いの心を蝕んでいく。
 クロトに突きつけられた現状。ニーズヘッグをその身に宿す限り、今の状況を維持することはできない。
 何が最善か。ついにはエリーまでもがクロトの事情を知ってしまう。
 
 いつか来る別れ。それは本当に今なのか。

 ――そして、もう一つの別れの物語が語られる。
 
 それは蛇の記憶。彼が見た、世にも珍妙な者の話。
 透き通るが如く、無色透明な者。

【厄災の姫と魔銃使い】第四部 無明華編 開幕

************************



 ――それは私の日課の一つ。
 
 私は日記を毎日書いています。
 理由は、特にありません。ただ、その日を淡々と振り返るのみ。
 書かれた分。私が此処にいたことを残す。
 誰かに見てほしいとか、誰かに知ってほしいという気はなかった。
 私には、そういった親しい存在がいませんので。
 
 ――何故かって? それは、皆が私を嫌っているからです。

 ……皆。たぶん、皆です。
 私は皆の迷惑にならないように、一人でひっそり暮らす毎日。
 
 ――何か問題でもありますか?

 誰しも、嫌いな人とは関わりたくないものです。
 なので、私は皆と離れて暮らす。
 そうすることで皆が幸せならば、それを維持するのが私にできること。
 一人でも大丈夫。何かあっても怖くないし、誰も悲しまない。誰も……、辛い思いをしなくていい。

 ――でも。そうやって過ごしている間に、一つの変化がありました。

 変化は私の日課である日記を彩り、書いている私も楽しくなるという、贅沢でとても嬉しいこと。
 それは、こんな私にができたことです。
 
 ――どんな人かって? いいえ、です。

 は私の事を助けてくれた。そして、とても面白いのです。
 面白くて、綺麗で……。一緒にいると毎日が楽しくて仕方ない。
 こういうのを幸せと言うのですよね。
 私はとても幸せ者なのです。
 幸せいっぱいが記された日記。私のキラキラとした日々。



 ――だけど。それは私のという名の芽を育てていた。



 私は全くその事に気付いていなかった。
 あれほど一緒にいたのに……。あれほど会話もしていたのに……。
 今までの輝いていた思い出が、後悔の気持ちで歪んでしまう。
 人生で初めて、失ってはいけない大切なものが穢されていく。
 ……全部私のせいだ。
 愚かな私が……彼を傷つけたという。
 最後に犯した……大きな


 ――お願い、泣かないで。そんな辛い顔をしないで。もう二度と**のが**なんて言わない。**でも誰も*****なんて、馬鹿なこと言わない。だから、……だから…………。


 
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