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一章 一ノ瀬兄弟
愛のないセックス 2
しおりを挟む身動きがとれないように押さえられて……後ろから下着に大量のローションをかけられて、尻を揉まれる。とろみのついた液体が、灰色の布を黒く染めて、いやらしく光らせる。下着越しに生温かいローションを塗られて尻や性器を揉まれた。
「あっ、あん……や、やだぁ……」
口で嫌と言って心も本当に嫌がっているのに、凛の身体は快楽に正直だった。腰を無意識に動かし、まるでおねだりをするように振る。おちんちんほしい、早くいれて……そう言っているかのような動きだ。
綾瀬は一刻も早くつっこみたい気持ちを抑えて、はさみを使って下着を少し切った。そしてそこから破いていって……下着の後ろに穴がぽっかり開いている状態にしてしまう。恥ずかしい恰好だ。履いているのにいつでも挿入できる……ヤるためだけに開いた穴。凛は震えながらも、でも、これからされることへの期待がどこか心の奥底にあった。
ローションがお尻の割れ目に塗られ、指が体内に入って……凛より一回り大きな指が、きゅんきゅんと締めつける内壁をかきわけて奥に進む。
「ひゃん! やぁ、やあああ!」
無骨な指が前立腺を探し当てて、執拗にこする。凛はうつぶせのまま足を曲げ、腰を高くあげて、無意識に挿入しやすい体位になる。指が一本、もう一本と増やされ、ナカを広げられ……ぐちゅ、ぐちゅと出し入れされる。その動きで凛のお尻の肉がぷるぷると誘うように揺れた。
いつでもいれられるように準備が整った。お兄ちゃん専用の秘密の場所を荒らされ、誰でも使えるようにトロトロにされてしまう。心ではお兄ちゃんが大好きで、こんなことはしたくないのに……身体は全然言う事を聞かない。それでも。最後にどうしても譲れない事があった。
「あの、ゴムっ、ゴムしてください! ナマで出さないで……」
「……いいよ」
綾瀬は枕元からコンドームを出して、ぎんぎんになっている性器に装着した。きちんとした手順で漏れないように、ちゃんと根元まで丁寧にかぶせる。凛はよく分からなかった。キスやゴムの要望は聞いてくれる……そういう所はちゃんとしてくれるのに、何で動画を使って脅してきたりするんだろう? 考えても考えても分からなかった。
ローションでどろどろになった襞に、コンドームが装着された綾瀬の性器がぴと、と当てられる。いつも兄の事を思ってほぐしているところが、好きな人のものではない性器を待ちかねたように飲み込む。
「あん、あああああっ! あ、あ、あ、あ!」
前立腺をこんこんと叩くように突かれて、凛は甘く切ない声をあげる。ぱんっぱんっと尻と足や腰の肉がぶつかる音がアパートの一室に響く。乳首をシーツにこすりつけて、凛はうつ伏せで必死に腰を動かす。気持ちいい、気持ちいいっ!
皮肉な事に、身体の相性は抜群だった。凛のいい所に綾瀬は的確に性器を当てる。とん、とん、と一定のリズムで突かれるだけで、凛は声が止まらなくなる。ローションが性器にからみ、二人の粘膜の間で透明な糸を引いた。じゅぷっ、じゅぷ、ぐちゅ、ぐちゅ……外で鳴く蝉の声に交じって、卑猥な水音が響く。
綾瀬が入り口の絡みついてくる肉をかきまわし、前立腺を強く突き……それから、どんどん奥へ奥へと進んでいく。
「あ゛んっ、お゛っ、お゛く、すごいぃいいい!」
今まで届いた事のない場所だった。凛は獣のような喘ぎ声をあげて、身体を震わせる。射精感なしで絶頂に達し、精液が押し出されて出てくる。いわゆるトコロテンで凛の性器がだらだらと精液を垂れ流す。射精している意識がないのに精液がぴゅっぴゅと出てきてシーツを汚した。舌を犬のように出して、今まで出したこともないような声で喘ぐ……性行為というよりは交尾に近いもの。凛はもう何がなんだか分からなかった。
兄のために自分の指でぐちゃぐちゃにしている時とは全然違う。太くて熱くて大きなモノが、容赦のない動きで凛を責め立てる。分かっているように弱い所をついて……凛のナカをめちゃくちゃにしていく。
「だめッ、おれ……おにぃひゃんのなのにぃ……だめぇえ……!」
「ゴムしてるから大丈夫……出すよ」
「あ゛んっ! あ゛ッあ゛ッ!」
綾瀬の精液が勢いよく体内に注がれるが、コンドームがきちんと守ってくれる。綾瀬はしばらくナカをかきまわして抜こうとする……が、凛の体内がぎゅっとしめつけて離さない。
「締めつけがすごいな……ここが、まだしたいって言ってる」
「はーっ、はーっ……う、ううぅ、ひどい、ひどいよ……」
綾瀬の性器は抜けた。コンドームがぎゅううと締めつける体内に引っかかって、外れる。ぱくっ、ぱくっとひくつくお尻の穴は桃色に染まり、コンドームを咥えて離さない。心はお兄ちゃんだけのものなのに身体は……精液が飲みたい、もっとしたい……そう言っていた。兄を愛する心に反して、いやらしくて浅ましい身体。凛は涙をぽたぽたとこぼしながら、綾瀬を睨みつける事しかできない。
「やくそく……動画、消して……」
「そうだな、約束だからな……でも、その前に」
綾瀬はスマホを凛に向けて写真を撮った。まさか撮られるとは思わなかった凛は油断して全てをさらけ出してしまっていた。真っ赤に染まった頬、首元にたくさんつけられたキスマーク、いじられて痺れるように腫れた乳首、精液で汚れた腹……いまだ震えながら勃っている性器、コンドームを飲み込んだままの尻の穴……コンドームからとろとろと流れ出す、綾瀬の精液……。全部、全部丸見えだった。誰がどこからどうみても性行為のあと。
「……この前の動画は消した。さっき撮った画像は……お兄ちゃんに送ってあげよう」
「は!? な、なに言ってるの……やめて!」
「ファイル添付して、あとは送信……っと」
「やめて、やめて! お兄ちゃんにこんなもの送らないで!!」
スマホを奪おうとするが力で叶うはずもなく、うつ伏せにねじ伏せられてしまう。泣きながらじたばたと身体を動かす凛に、綾瀬は無表情で言った。
「送ってほしくなかったら、これからは俺が呼んだらここに来て」
「…………えっ…………」
「これからも、よろしくね…………凛ちゃん」
小学生の時に初めて出会った。兄が家に連れてきた友人。昔からの呼び方。思い出すのはお菓子をもらったこと、一緒に虫取りをしたこと、兄と三人で遊びに連れていってもらったこと……優しくされた記憶だけ。もう一人のお兄ちゃんみたいな人。あの頃からは考えられない、今の関係。凛は綾瀬の身体の下で涙を流す事しかできなかった。
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