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◇2 紛れ込んだ悪魔
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気が付いた時には、知らない部屋に座り込んでいた。周りには、私と同じくらいの若い女性達。そして、その外側には大勢の者達が立っていた。
周りの者達が何を言っているのか、分からなかった。言葉が分からない。だけど、いきなり大きな声が聞こえてきて、私達がいる台に乗り込んできた。そして、剣を抜き、私に向けてきたのだ。
私は、混乱していた。だって、私の立つ地面から溢れ出した光に包まれたかと思ったら、突然知らない場所に座り込んでいて、周りに知っている人が一人もいなくて、そして突然刀のような刃を向けられたのだから。
私が、何かしただろうか。刃を向けられるような事をしただろうか。ギラギラと光る鋭い刃。
けれど、すぐにその人達は刃を戻した。何を話しているのか分からないから、どうなっているのかすら分からない。
よく分からない内に、一人の男性が上がってきて、女性達に何かを渡し始めた。私に渡されたのは、これは、指輪?
嵌めてくれ、と仕草で伝えられ恐る恐るそのようにする。
渡してくれた男性は、すぐに次の人の所へ行ってしまったから、これは何なのだろうか分らなかった。
「来い」
「えっ」
いきなり、私の知っている言語で話しかけられた。台の端に座っていた私に話しかけたのは、台の下に丁度立っていた男性。暗めの赤色の髪と瞳をしていて、ガタイがよくて、背が高いのかな。台の上にいるから、どれくらい高いのか分からない。でも……凄く怖い顔をしていて。
どうしたらいいか分からず、そのままオロオロしてしまって。でも、チッと舌打ちが聞こえてきて、いきなり腕を掴んできた。
引っ張られ、落ちると思い目をつぶったけれど、あれ、痛くない。目を開けると、担がれていたことに気がついた。俵担ぎのように、さっきの男性に。
待って、どこに連れて行くつもりなの。というより、この人背が高いのか、こ、怖い……揺れるから余計怖い……
「公爵様、それでは聖女様に負担がかかってしまいます」
この男性に声をかける人物がいた。こちらからは顔が見えないけれど、声からして若い男性だろうか。
「聖女ではないらしいぞ」
「ですが、女性に対してこんな扱いはタブーです」
「チッ」
「キャっ!?」
いきなりの事でそんな声が出てしまった。降ろされたかと思ったら、この男性の腕に座らされてしまったのだ。これでいいだろ、そんなぶっきらぼうな事を言いながらまた歩き出した。あまりに怖くてがっしりこの人の肩を掴んでしまったけど、お、怒って、ないかな……?
でも、私には目もくれず隣の方と話をしていた。内容はよく分からなくて、でも単語単語で何となくは分かった。というより、寒気がした。
「手荒になっても構わない、全て吐かせろ」
「その後は」
「殺せ」
その言葉と共に、とある匂いがした。私の鼻はよく利くから、しっかりと分かった。
――血の匂いだ。
罪人、だと思う。どんな事をした人なのかは分からないけれど……けど、指先が冷たくなってしまった。
寒気がした理由はもう一つ。周りからの、こちらに向けられる視線だ。
冷たくて、鋭くて、さっき向けられていた刃がまた向けられているような、そんな気分になってしまって。だから、視線を上げることが出来なかった。
けれど、気が付いた時には少しずつ視線が揺れてきた。それは、次第に大きく揺れ出して。そして、重たい頭が落っこちたかのような感覚がして、私の意識も急降下していった。
ふわふわと、暖かいものが私の身体を包んでいる。
ポカポカと、優しい暖かさを感じる。
意識が少しずつ戻ってきて、そして瞼から眩しい日差しが入ってきた。
光を堪え、そしてゆっくりと目を開けた。
大きな、布団? 分厚いけど、ふわふわな掛け布団。下もふわふわ。一体これは、どうなってるんだろう。
周りは、キラキラしたものばかり。とても綺麗だ。
ここは、どこなのだろう。
私は、思い出した。そうだ、夕飯の支度をしていた時、突然床が光り出して、それで……全然知らない場所にいたんだ。あれから、あの怖い人に連れられて、そこから記憶がないんだけど……
きょろきょろと部屋の中を見ていた時、扉の開く音と、女性の悲鳴が聞こえてきた。この部屋に入ろうとしていたようで、すぐに閉められてしまった。走ってこの部屋を離れるような足音が聞こえてきた。その原因は……私、かな……?
また戻ってくるかな、そう思いつつ天気のいい外を眺めていたら、そーっとまた扉が開いた。
「……失礼、しま、す」
入ってきたのは、女性二人。タイヤの付いた、台? を手で押してきた。
用意してくれたらしい、台には色々なものが積まれていて。こちらに置いておきますので、どうぞご自由にお使い下さい。そう一言残し、一目散に二人は出て行ってしまった。
「……目、合わせてくれなかったなぁ」
聞きたい事はたくさんあった。ここはどこなのか、あの後どうなったのか、あの男性は誰なのか。けど、一番聞きたかったのはこれ。
「私、これからどうなっちゃうんだろ……」
台の一番上に置かれていたのは、食事。陶器のお皿が3枚と、銀色の細長いものが3本。私が使っていた〝お箸〟はない。
恐らくこの銀のもので食べるんだと思うん、だけど……使い方も分からないし、お皿の上にあるものも、全く目にしないものばかり。
こんなに平べったいお皿の中央にある窪み、そこに飲み物が入ってるようだけど……どうしたらいいのかな。私は、お椀に口をつけて飲むものしか知らない。こんなものに口をつけたら大変だ。こっちには匙の様なものがあるから、これですくって飲めばいいのかな。
でも、緑色。こんな色の飲み物は、体調不良の際に飲む薬ぐらいしか知らない。あれは、とっても苦くて飲むのに苦労するんだよね。これは、何というお汁なのだろうか。分からないと、ちょっと怖い。
お腹は、空いてない。せっかく作ってもらったのに、申し訳ないけど、食べ方も分からないから仕方ないよね。
お米と、お味噌汁があったらなぁ……
仕事中で掛けていた白い襷を外しながら、寝ている時汗をかいていたのかベタベタで気持ち悪い着物を洗いたいなぁ、と嘆いた。
周りの者達が何を言っているのか、分からなかった。言葉が分からない。だけど、いきなり大きな声が聞こえてきて、私達がいる台に乗り込んできた。そして、剣を抜き、私に向けてきたのだ。
私は、混乱していた。だって、私の立つ地面から溢れ出した光に包まれたかと思ったら、突然知らない場所に座り込んでいて、周りに知っている人が一人もいなくて、そして突然刀のような刃を向けられたのだから。
私が、何かしただろうか。刃を向けられるような事をしただろうか。ギラギラと光る鋭い刃。
けれど、すぐにその人達は刃を戻した。何を話しているのか分からないから、どうなっているのかすら分からない。
よく分からない内に、一人の男性が上がってきて、女性達に何かを渡し始めた。私に渡されたのは、これは、指輪?
嵌めてくれ、と仕草で伝えられ恐る恐るそのようにする。
渡してくれた男性は、すぐに次の人の所へ行ってしまったから、これは何なのだろうか分らなかった。
「来い」
「えっ」
いきなり、私の知っている言語で話しかけられた。台の端に座っていた私に話しかけたのは、台の下に丁度立っていた男性。暗めの赤色の髪と瞳をしていて、ガタイがよくて、背が高いのかな。台の上にいるから、どれくらい高いのか分からない。でも……凄く怖い顔をしていて。
どうしたらいいか分からず、そのままオロオロしてしまって。でも、チッと舌打ちが聞こえてきて、いきなり腕を掴んできた。
引っ張られ、落ちると思い目をつぶったけれど、あれ、痛くない。目を開けると、担がれていたことに気がついた。俵担ぎのように、さっきの男性に。
待って、どこに連れて行くつもりなの。というより、この人背が高いのか、こ、怖い……揺れるから余計怖い……
「公爵様、それでは聖女様に負担がかかってしまいます」
この男性に声をかける人物がいた。こちらからは顔が見えないけれど、声からして若い男性だろうか。
「聖女ではないらしいぞ」
「ですが、女性に対してこんな扱いはタブーです」
「チッ」
「キャっ!?」
いきなりの事でそんな声が出てしまった。降ろされたかと思ったら、この男性の腕に座らされてしまったのだ。これでいいだろ、そんなぶっきらぼうな事を言いながらまた歩き出した。あまりに怖くてがっしりこの人の肩を掴んでしまったけど、お、怒って、ないかな……?
でも、私には目もくれず隣の方と話をしていた。内容はよく分からなくて、でも単語単語で何となくは分かった。というより、寒気がした。
「手荒になっても構わない、全て吐かせろ」
「その後は」
「殺せ」
その言葉と共に、とある匂いがした。私の鼻はよく利くから、しっかりと分かった。
――血の匂いだ。
罪人、だと思う。どんな事をした人なのかは分からないけれど……けど、指先が冷たくなってしまった。
寒気がした理由はもう一つ。周りからの、こちらに向けられる視線だ。
冷たくて、鋭くて、さっき向けられていた刃がまた向けられているような、そんな気分になってしまって。だから、視線を上げることが出来なかった。
けれど、気が付いた時には少しずつ視線が揺れてきた。それは、次第に大きく揺れ出して。そして、重たい頭が落っこちたかのような感覚がして、私の意識も急降下していった。
ふわふわと、暖かいものが私の身体を包んでいる。
ポカポカと、優しい暖かさを感じる。
意識が少しずつ戻ってきて、そして瞼から眩しい日差しが入ってきた。
光を堪え、そしてゆっくりと目を開けた。
大きな、布団? 分厚いけど、ふわふわな掛け布団。下もふわふわ。一体これは、どうなってるんだろう。
周りは、キラキラしたものばかり。とても綺麗だ。
ここは、どこなのだろう。
私は、思い出した。そうだ、夕飯の支度をしていた時、突然床が光り出して、それで……全然知らない場所にいたんだ。あれから、あの怖い人に連れられて、そこから記憶がないんだけど……
きょろきょろと部屋の中を見ていた時、扉の開く音と、女性の悲鳴が聞こえてきた。この部屋に入ろうとしていたようで、すぐに閉められてしまった。走ってこの部屋を離れるような足音が聞こえてきた。その原因は……私、かな……?
また戻ってくるかな、そう思いつつ天気のいい外を眺めていたら、そーっとまた扉が開いた。
「……失礼、しま、す」
入ってきたのは、女性二人。タイヤの付いた、台? を手で押してきた。
用意してくれたらしい、台には色々なものが積まれていて。こちらに置いておきますので、どうぞご自由にお使い下さい。そう一言残し、一目散に二人は出て行ってしまった。
「……目、合わせてくれなかったなぁ」
聞きたい事はたくさんあった。ここはどこなのか、あの後どうなったのか、あの男性は誰なのか。けど、一番聞きたかったのはこれ。
「私、これからどうなっちゃうんだろ……」
台の一番上に置かれていたのは、食事。陶器のお皿が3枚と、銀色の細長いものが3本。私が使っていた〝お箸〟はない。
恐らくこの銀のもので食べるんだと思うん、だけど……使い方も分からないし、お皿の上にあるものも、全く目にしないものばかり。
こんなに平べったいお皿の中央にある窪み、そこに飲み物が入ってるようだけど……どうしたらいいのかな。私は、お椀に口をつけて飲むものしか知らない。こんなものに口をつけたら大変だ。こっちには匙の様なものがあるから、これですくって飲めばいいのかな。
でも、緑色。こんな色の飲み物は、体調不良の際に飲む薬ぐらいしか知らない。あれは、とっても苦くて飲むのに苦労するんだよね。これは、何というお汁なのだろうか。分からないと、ちょっと怖い。
お腹は、空いてない。せっかく作ってもらったのに、申し訳ないけど、食べ方も分からないから仕方ないよね。
お米と、お味噌汁があったらなぁ……
仕事中で掛けていた白い襷を外しながら、寝ている時汗をかいていたのかベタベタで気持ち悪い着物を洗いたいなぁ、と嘆いた。
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