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◇17
しおりを挟むそして次の日。午後のアフタヌーンティーのタイミングでキッチンに赴いた。
料理長にお願いしてあるから、きっと準備してくれてるはず。
今日エヴァンは屋敷の執務室でお仕事らしく、今そこにいると思う。
「おぉ、ありがとう料理長!」
「いえいえ、これくらいは当たり前です」
トレイに乗せられた、私が頼んだもの。そしてそれを台車に紅茶と一緒に乗せた。
奥様、これは私達の仕事です! とメイドに言われたけれど、でも私がやると言って断った。最後まで自分でやりたいもんっ。
そして、執務室に到着。コンコン、とノックをすると「誰だ」と声が返ってきた。
「お茶をお持ちしましたー」
その声に、数秒だけの間があり、そして入れと許可をもらった。メイドがドアを開けてくれて、台車を押しつつ部屋に入る。
何よ、その疑いの目は。私はただお茶とお茶菓子を持ってきただけじゃない。
「エヴァン~、お茶にしましょ!」
「……はぁ、メイドの仕事をぶん取って何してるんだ?」
と、観念したのか手にあった資料を置きテーブル前にあるソファーの方にやってきた。
ローテーブルと、それを挟んだ二つのソファー。そして、ローテーブルに持ってきたものを並べ、紅茶をカップに注いだ。
「メイドの真似事か?」
「私だってちゃんと出来ます~!」
「はいはい」
と、言って何故か私の隣に座った。紅茶は向かいで座るようセットしたのだが。自分で動かして目の前に持ってきたし。どれだけ私の隣がいいのさ。
「で、これは?」
「スコーンですよ」
「いやそれは分かるが……」
目の前にある、スコーンと、クリーム。そして、ジャムだ。その他にも、パンも持ってきたし、ヨーグルトも持ってきた。ちょっと多いんじゃ? とも思ったけどパンも小さめだから大丈夫でしょ。
「クリームとジャムを一緒に乗せて食べてください」
「一緒に?」
半信半疑のようだけど、言われた通りにスコーンに乗せて、一口で。反応は……
「……やば、何だこれ」
「どうです?」
「うまっ」
と、どんどんパクパクと口に入れていくエヴァンが、何だか子供のように見えた。そんなに気に入ったのか。
「ヨーグルト、いいな」
へぇ、ヨーグルト派か。ヨーグルトだと、砂糖と乳製品の贅沢づくし。最高級品だ。お、恐ろしい……
「ヨーグルト派ですか。私はスコーン派ですよ」
「スコーンも美味い。これ、どうしたんだ?」
「頑張って作りました!」
「……マジ? 愛情込めて?」
「……さぁ?」
「テトラちゃんかーわいっ」
と、キスをしてきた。いや、びっくりするからやめてください。しかもジャム食べた後だから甘い。その後スコーンを突っ込まれたが。
「やばいな、これは危険だ。なんてもんをうちの奥様は作り出したんだ。恐ろしいな全く」
「でも食べたいでしょ」
「当たり前だろ」
はい、旦那様も堕ちました。ちょろかったな。まぁ私もそうなんだけどさ。でもこれはやばい。こんなに美味しかったっけ、ジャムって。果物の質が違うとか? 砂糖が上等なのか?
これ、他のフルーツで作ってみようかな。ブルーベリーとか、りんごとか。うん、美味しそう。よし、決定。
そして、オデール大公邸は甘ぁ~い匂いでいっぱいになっていったのだった。
「エヴァン、危ないですよ」
「別に? それよりまだ?」
「ちゃんと冷やさないと火傷しますよ。明日です」
「え~」
キッチンに立つ私の後ろから軽く抱きしめてきたエヴァンは、私の頭に顎を乗せてくる。やめてほしいのだが。我慢の出来ない子供かよ。
……けど、なぁんか最近妙に不機嫌のような気がするのは私の勘違いだろうか。確か、最近王城に行くことがたびたびあって出かけてるけど……何かあった、のか?
「……はぁ、昨日作ったブルーベリージャム、食べますか?」
「食べる。ヨーグルトがいい」
「お夕飯前だから少しですよ」
「とか言って、本当はテトラも食べたいんだろ?」
「……」
否定はしない。けど、最初に食べるって言ったのはそっちだ。私はそんなに食い意地張ってないもん。だからその頬っぺたつんつんしてくるのはやめてください。
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