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しおりを挟む国王陛下から、この国の大公殿下との政略結婚をと言われてしまった。
こんな貧乏貴族の娘にこの国唯一の大公殿下を、だなんておかしな話だ。いや、国王陛下がそう言ってきたこともだいぶおかしい。一体どういう事なんだ、これはドッキリか、ドッキリなのか!?
「オデール卿はとてもハンサムですよ? 今は確か30でしたね。テトラ嬢とは少し離れていますがこれくらいは許容範囲内でしょう。首都ではだいぶ人気ですし、大公という地位もあって、しかもこの国一の王室御用達を意味するロイヤルワラント商会の取締役商会長という役職も持っています。これは優良物件と言っても過言ではありませんよ。この国一の大富豪でもありますから、きっと妻となられる方のご実家の支援もしていただけるでしょうしね。それくらい心優しい方ですよ」
「します、結婚」
「はは、では陛下にそう伝えておきましょう。この後馬車などをご用意いたしますから、首都へ向かうご準備などを済ませておいてください」
「はい」
「……はぁ、うちの娘は潔いな。恐ろしいくらいだ……一体誰に似たんだか……」
「じゃあお父様、あのクソ野郎と大公様どっちがいいの」
「娘の事をどうぞよろしくお願いします」
うん、お父様の潔さ、私は好きですよ。まぁ、誰が考えてもあの息子はない。閣下が一体どんな方なのかは私は知らないけれど。
この結婚で別に困る事はない。結婚生活は大人しくしていればいいだけの事。まぁ多少なりとも後ろ指を指すような人はいるだろうけれど、そんなものは無視すればいい。あら、虫の羽音が聞こえるわ~とでも言っておけばいい。学校に行かせてもらえたから馬鹿ではないし前世の記憶もある。
女主人としての振る舞いも理解しているし、そもそも夫人は仕事をしない。適応するのに時間はかかるだろうけれど、私が頑張ればいいだけの事だ。
というか……この人、妙にすんごく大公殿下の株をどんどん上げようと頑張ってるような気がするのだが。私達に向かってだいぶニコニコしてるし。何、同情? 会った事のないすんごい人といきなり結婚しろって言われて困惑してるだろうなって。まぁそうなんだけどね?
まぁ、でも大公殿下に助けていただけるのであれば、あの野郎共の顔面に一発入れられるって事だ。いいね、それ。
ではまたお会いしましょう、と来訪者は帰っていった。
「……テトラ、本当によかったのか」
「えぇ」
「……テトラにはだいぶ苦労を掛けてしまっていたから、せめて結婚は、自分が選んだ愛する相手としてほしいと願っていたんだ。どうか、幸せになってほしいと。リデルも、そう願っていた。だが、こんな形で結婚など……この家のために犠牲になど……」
リデル、とは私の母の事だ。レオが生まれた後すぐに亡くなってしまった。
「犠牲にだなんて言わないで。私は家族が幸せならそれでいいし、大公様は大富豪だからいい生活させてもらえるかもしれないし。だからそんな顔しないで、お父様」
「テトラ……」
そういえば、お父様って大公様とお会いしたことあるのかしら。まぁ、全員参加の王室主催パーティーなどに参加しているのだから見た事はあるでしょうけど。
オデール大公殿下かぁ。一体どんな人なんだろう。私そういうの知らないんだよなぁ。王室御用達の商会の商会長なんでしょ? 想像がつかないんだけど。
私の商会長のイメージはあのクソ野郎しか出てこないんだよなぁ。アレより酷い人かな。
でも今日来た人、大公様の事を優しい人だって言ってたから、期待はしておこう。
初めて会う人との結婚だから、愛だのとかそんなものは一切ない事は分かってる。私はこの家の為に嫁ぐのだから。私が少しでも実家の為に役に立てれば、家族と領民達が幸せな生活を過ごせれば、それでいい。
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