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しおりを挟むいきなりの大物来訪にもう屋敷内はてんわやんわ。とりあえず応接室にっ!! お父様すぐに呼んできてっ!! レオもっ!! いちばん高いお茶と見た目のいいティーカップをっ!! ……な感じで。
「申し訳ない、知らせも送らず押しかけてしまって」
「あ、いえ、お気になさらず……」
お父様、顔が引きつってる。まぁ、私も手汗がハンパないけれど。レオは何が何だかよく分ってないな。
「それで、国王陛下よりこれを預かりました。レブロン子爵に、と」
出してきたのは手紙。金ぴかの、王族が使う封筒だ。ちなみに言うと、王族主催のパーティーの招待状もこの封筒が使われる。
だけど、今回は一体何が書かれているのだろうか。
「……これは、本当ですか」
「はい、間違いありません」
中に入っていた手紙を広げて目を通したお父様は、信じられない、といった顔をしていた。
「閣下は今隣国近くの港の視察に行ってらっしゃいますが、すぐ帰ってくるようお伝えいたしました。こちらではもう準備は進んでいるので、すぐにでも首都に来ていただきたいのです」
閣下、って……大公殿下の事? 私、あまりその人の事知らないんだよね。陛下の甥としか。あと、この国一の商会の商会長を務めてる人。
でもどうしてその方が話に出てくるんだろう。
「婚約もなしに、もう結婚など……一体陛下は何をお考えなのでしょうか」
……ん? 結婚?
「今、閣下は独身で相手がいらっしゃらない。候補は何人かいますが、貴族派の娘ばかりなのです。そうなってくると、社交界や政治のバランスが崩れてしまいます。今、公爵家や侯爵家などが動き出しているためすぐにでもふさわしい相手を見つけなければならない」
「それが、うちの娘だという事ですか」
「はい。レブロン子爵家はずっと王族派であり、歴史の長い家柄です。そう言った面を考慮しお選びになったのだと思われます」
「いや、でも、それにはあまりにも身分差が……」
何の話をしているのだろうか。だいぶ忘れられているな、ここに私がいることを。
でも、話に出てきたワード。大公殿下、結婚、そして私。
いや、まっさかぁ……
「テトラ嬢はどうだろうか」
「えっ」
「オデール大公殿下とはお会いしたことはありますか?」
「い、いえ、そもそも2年前のデビュタントの時以外、首都に行かなかったものですから」
「そうですか。なら話は聞いたことはあるでしょう。〝この国一のロイヤルワラント商会の取締役商会長〟を」
「……」
「おっと、それは残念です」
すみません、こんなど田舎にそんな話とか入ってこないものですから。お父様も何回か首都に行くけど、そんな話聞いたことがない。……あの、お父様、あちゃぁ、って顔しないでくださいよ。
そして、私に手紙を渡してくれた。どれどれ、と目を通したが……
「……マジ?」
つい、お偉いさんの前で、そんな言葉が出てしまった。
私と、大公殿下の、結婚話が書かれていたからだ。
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