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しおりを挟む目が覚めた。
頭がガンガンする。昨日はだいぶ飲みすぎてしまったらしい。
頭を押さえつつ、上半身を上げた……けど、何かがおかしい。どうして私、服を着ていないのだろうか。
二日酔いの頭を動かしつつ周りを見渡す。乱れたベッド、放り投げられた服、そして……隣に、同じく何も身に付けていない、金髪の男性が一人。
現実逃避したい気持ちで目を逸らしてしまったが……ちょっと待て……
「鍛錬っ!!」
やばいやばい今何時よ! あっ! あと11分じゃんっ!!
ベッドから飛び起き、クローゼット勢いよく全開させ、その中にある私の騎士団用制服を引っ張り出した。ここから鍛錬場まで……最短ルートで走れば5分だ! いける! 2分の余裕を残して5分で移動だと4分残る! 4分で着替えて準備しなきゃ!!
頭をフル回転させつつ準備を急いだ。床に散らばった男性用の服を避けつつも。
「よしっ!」
全て終わらせて女子寮の部屋のドアを開けた。けど、寸前に見えた。床に散らばった服のうちの一枚を。いや、こうしちゃいられないと思い切り部屋から飛び出した。鍵は……かけると中の人帰れないからしょうがないかけないでおこう。
でも、そういえば……ちらっと見えた服、騎士団の制服だったような……いやいやいや今はそれどころじゃない!
「間ぁに合ったぁ!」
「おっセーフだなテレシア! 団長来てないぞ」
「おはようさん!」
「おはようございますっ!」
ようやく鍛錬場が見えて滑り込み、同じ制服を着た男性達のところへ飛び込んだ。
3つの列が並ぶ内の、一つ空いた所にすぐに立つとあの団長がやってきた。うちの騎士団である第三騎士団の騎士団長だ。まぁ簡単にあの方を説明すると……鬼。だから絶対遅刻なんてしてたまるもんですか。ただでさえここに女性は私一人なんだから。
「全員揃ってるな。点呼を取る!」
「「「はいっ!」」」
そういえば、部屋に落ちていたあの上着の騎士団の制服は白だった。白、という事は近衛騎士団の制服を意味する。我々騎士団よりも格上のエリート騎士団だ。
けど、そういえばチェーンブローチも付いてたな。そして……白い片マントもあった気が……
でも、そう考えるとあれは……近衛騎士団の、騎士団長の物では……?
あの……
――冷徹無慈悲な悪魔の騎士、リアム・ロドリエス。
歴代の騎士団長よりも能力値が高く、だいぶ鬼畜で任務遂行の為なら何をしようと構わないと思っている男。まさに悪魔だ。
……あ、やば。次私の番だ。
「次っ!」
「はいっ! テレシア・マーフィス!」
「次っ!」
とりあえず、考えるのは後にしよう。これから朝の鍛錬なんだ、気を抜こうもんならすぐにバレて大変な事になる。
そうして、恐ろしい朝の鍛錬を終わらせる事が出来た。
「テレシア、二日酔いはどうした?」
「ヤバいです、朝頭ガンガンでした」
「あれだけ飲めばそうなるって。俺だってそうだしな」
なんて話を、昨日飲んだ先輩と汗を拭きながら話した。確か昨日は、久しぶりの休暇で騎士団の先輩達と城下町にある飲み屋でお酒を楽しんでいたはずだ。それなのに……何故あの男性が私の部屋にいたのだろうか。恐ろしくてしょうがない。
「おいテレシア、そこどうした」
「え?」
ここ、ここ、と自身の首をつんつんしていて。まさか……昨日の……!?
「あ、はは……何かに刺されたのかなぁ?」
「お前そんなところ刺されたら勘違いされるぞ? まぁお前の事だからないだろうけどな、アッハッハッハッ!」
「あ、はは……ないですって~そんなの!」
ありました、ごめんなさい。……とは、口が裂けても言えなかった。あはは、笑えない……
けど、今私の部屋どうなってるだろ……これからすぐ仕事なんだよね。あの人どうなったかな。休憩の時戻ってみる? 鍵かけてないし、不用心だもんね。
でも、さぁ……もしだよ? もし、部屋にいたあの男性が……近衛騎士団団員だったら……クビ? いや、クビだけは勘弁してほしい。
そうでないようにと願いつつ、私は第三騎士団長の執務室に向かったのだ。まずはお茶出しだ。
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