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第二章

◇12 今日の俺はサンタさん

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 数日後、クリスマスの日がやってきた。


「はいヴィル、クリスマスプレゼントです」

「クリスマスプレゼントなんて貰ったのは、爵位を継いでからは初めてだ」


 あぁなるほど。誕生日とクリスマスとかが近かったら誕生日兼クリスマスのプレゼントにされてしまうのはあるあるだからな。

 残念ではあるけれど、まぁヴィルの事だから全く残念とは思ってないだろうな。誕生日が嫌いだと思ってる人だし。


「じゃあ俺忙しいんで」

「どこに行くんだ」

「今日の俺はサンタさんです」


 そう、俺は今日はサンタさんだ。屋敷にいるみんなにプレゼントを配るのだ。何を配るかって? それは俺が作ったコースターだ。以前ピモにあげたんだけど、ピモが自慢したところみんなが欲しがったらしい。だから作って今日クリスマスプレゼントとして配る事にしたんだ。

 まぁ、作る時に邪魔が入ったがコースターのような小さくて簡単なものならすぐに出来る。色々な種類の編み方に挑戦してみたから、見てもらって選んでもらう事にした。ちゃ~んと透明な袋にリボンでラッピングしてある。


「何です? 手伝ってくれるんですか?」

「……」


 なんて聞くと……みんなに配るコースターの入ったカゴを持ったのだ。まさかのまさかで手伝ってくれるのか。


「じゃあまずはピモ。いつもありがとな」

「ありがとうございます!」


 近くにいたピモには、みんなのよりも大きめのもの。そう、小さな肩掛けバッグだ。と言っても、まぁスマホが入るくらいの大きさ。俺が次は何を作ろうかと編み物の本を眺めていたらピモの視線を感じて。そのページは、このバッグだった。

 今ピモはだいぶ鉛筆とメモを使っているらしく、ポケットに入れるくらいの小さなメモだとすぐに使い切ってしまうらしい。まぁ、俺の世話係だからしょうがないな。だからここにメモを入れるらしい。こんなカッコいい使用人の制服に編んだバッグだなんて合うのか? とも思ったが本人たってのお願い事だから仕方ない。

 ここに鉛筆は入れられないのでは? と思ったが、内側には生地があるから鉛筆が抜け落ちる事はない。まぁ、簡単だったしピモ本人にも教えてもらったから簡単に出来たし。紐は革でちゃんと金属で繋げているから大丈夫。

 とはいえ、みんなと違うものを作ったからヴィルは不満気だったが。別にいいだろ、いつもお世話係として尽くしてくれてるんだからその感謝の気持ちなんだよ。……まぁ、色々と無理や可哀そうな事をさせてしまった事もあるからその謝罪も込めて。


「……リューク」

「はいはい、あとで作ってあげますから」


 全く……まぁヴィルはこれが通常運転か。それより早くみんなに配らなきゃ。

 はーい行きますよー、とヴィルの手を握り引っ張って部屋を出た。

 さて、どこから行こうか。まずは……と歩き出した。



「あら、奥様に旦那様。いかがしました?」

「やっほ、休憩中?」

「はい。いかがしました?」

「今日の俺はサンタさんです」

「あぁ! なるほど! では皆呼んでまいりますね」


 いや、仕事中の奴らは休憩に入ってからでいいんだが。邪魔する気はないのに。でもなんかみんな嬉しそうだな。

 そして、たてに一列で並び始めた。なんか面白いんだが。いくつか種類があるから、どれがいい? と先頭の奴に聞くと……


「よろしければ奥様に選んでほしいです!」

「……いいのか」

「はいっ!」


 らしい。自分で好きなの選べばいいじゃん。とは思っても、最後の方になってくると減っちゃうしな。だったら俺が選んだ方がいいのか。

 じゃあお前はこれ、お前はこっち、と一枚一枚配った。なんか、たまに俺の隣の方に視線を向けた奴が恐ろしいものを見たような顔をしていた事には何も言わずバシッと肩を叩いたが。

 おいヴィル、お前は今日はトナカイなんだかんな。プレゼント持ってるんだからそうだろ。何威嚇いかくしてるんだ。赤い鼻でもつけるか? まぁその時は俺も白いひげ付けてやるけど。


「あ、いたいた!」

「あ、奥様!」

「いかがしました?」


 大広間に置かれた大きなクリスマスツリー。その前で眺めていた3人の使用人達。テワール、タリシス、ボレス。元離宮使用人達だ。このツリーの前で昔話でもしてたのか?

 ほらお前たちの分、と三枚プレゼントを渡した。


「ありがとうございます、奥様」

「これ、奥様が編んだものですよね? とっても素敵です!」

「毎日使いますね!」


 まぁ、毎年クリスマスには俺が貰ってばかりだったからな。


「これで19回分のクリスマスプレゼントって事でいいか?」

「もちろんですよ!」

「奥様からクリスマスプレゼントを頂いたという事だけでもとても嬉しいのに、手作りだなんてとても光栄ですから」

「とっても嬉しいです」


 喜んでくれてるなら、それでいっか。


「とても素敵なクリスマスになりましたね、奥様」

「そうだな」


 サボってたら怒られちゃうのでこれで失礼しますね、とウキウキで仕事に向かっていった。これでやる気出してくれるならそれでいっか。


「……今まで、クリスマスの日にはちっちゃいクリスマスツリーとちょっと豪華な料理と、プレゼントをもらってたんですよ。それがここに来てこんなに大きなツリーを飾れて、プレゼントを俺の方からあげられるなんて、思いもしませんでした」

「そうか」

「あ、ちなみに言うと、その小さなクリスマスツリーは本宮で余ったやつをこっそり持ってきたやつなんですよ。毎年こっそりボレス達が持ってきて、こっそり返してたんですけど……一回もバレた事ないんですよ。すごいでしょ」

「毎年か。離宮の使用人達は実に優秀な者達だな。だが、余ったやつとはいえ、無くなった事に気が付かない本宮の使用人達もどうかと思うがな」

「あははっ、それもそうですね!」


 今となっては本当に懐かしい思い出ばかり。今離宮使用人達は退職して転職したり実家に戻ったりしていて残ってないらしい。またみんなに会える事が出来るか分からないけれど……今のクリスマスの日にこの思い出をちょっとでも思い出してくれればいいかな。


「リューク」

「ヴィル?」

「これを配り終わったら、リュークの話を聞きたい」

「クリスマスの、ですか?」

「あぁ」

「じゃあ、18回分全部語ってあげます」

「ククッ、時間はあるんだ。全部聞かせてくれ」


 これから、このみんなでクリスマスを何度も過ごせるんだ。素敵な思い出がもっともっと増えてくる。来年はお腹の赤ちゃんが生まれているから、もっと違ったクリスマスを過ごせる。もう今から楽しみだ。
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