52 / 86
◇52 俺を殺す気か!?
しおりを挟む
朝はいつもより早く目が覚めた。だってすっごく楽しみだったんだもん。昨日ヴィル約束してくれたし。
けど、いつもは見れないヴィルのちゃんとした寝顔をベッドの上で見ることも出来た。ほら、いつもは狸寝入りじゃん? でも今日はちゃんと寝息も聞こえる。ちゃんと寝てるんだよ。
いつもは大人なイケメンフェイスなんだけど、寝てると子供っぽいというか。ちょっと若返る? うん、ずっと眺めていられる。
今、俺銀髪だろ? でも前世じゃ日本人だったから黒髪だったわけで。俺染めてなかったし。だから同じく黒髪のヴィルをちょっと羨ましく思っている。
貴重品室で見た家族そろっての肖像画には、黒髪はヴィルと、先代辺境伯様。アメロの先代夫人と妹さんはハニーブロンドだった。赤い瞳は先代夫人以外全員だけど。
いいなぁ~、なんて思いつつ髪を触っていたら……頭が動いた。あ、起きた。起こしたか? ……あ、違う、また寝た。
「……可愛いな」
これは……毎日早起きをしなくてはいけないな。毎日の日課にしたい。……と思ってはいるけれど、夜ヴィルが大暴走しなければの話である。そう、風呂やベッドの上で。これ以上は言わないが。
その後、数十分後にぎゅ~っと俺を抱きしめる腕に力が入った。起きたらしい。狸寝入りの始まりだ。……と、思ったが案外早かった。
「早かったな」
「起きちゃいました」
「そんなに腹が減ったか」
「そんなに食い意地張ってませんけど」
「そうか?」
と言いながらキスをしてきた。おはようのキスか? 毎日してくるけどさ。でもベッドから出るつもりはないらしい。中々腕はほどけない。
「あ、そういえばヴィル。王城に行くって言ってましたよね。呼ばれたんですか?」
「いや、今年の報告書を提出しに行くんだ。言っただろ、国王陛下の代理で広い国土の管理をしていると。それに関する報告書を毎年提出しているんだ」
「なるほど。じゃあ陛下にお会いするって事ですか」
「残念ながら、な」
いや、それ言っちゃっていいのか? 気持ちは分かるが。でも、一応王族の俺を貰ったのだからそういう話もあるだろう。ミンミンの織物とか? あと青バラの話とか? まぁでもどうせヴィルだから全部流すだろうし、心配ないか。
「首都とかって行く時、剣とか持っていくんですよね。もしかして、あのデカいやつ……?」
「いや、短いのを持っていく。さすがに首都に白ヒョウはいないからな」
「あ、はは、そりゃそうですね」
まぁでもお偉いさん方はビビりそうだけどな。顔が見てみたい。
でも、もしその短いほうの剣を持っていなかったとしても……素手で戦えるよな、この人。あぁいや、変な事は考えないでおこう。
「いつもと違う剣だと、戸惑ったりしません?」
「白ヒョウ用よりも軽すぎるから、たまに飛ばすときがあるが……まぁその時には素手でなんとかなるから問題ない」
「……」
俺の考えは的中したらしい。もうこの話はやめにしておこう。怖いから。
それよりも、今日は仕立て屋さんが来るんだから寝坊なんてしてられない。ほら、さっさと起きろ!
今日の天気はよく、首都からいらっしゃる仕立て屋さん達は難なく魔法陣装置を通ってからこの屋敷までたどり着いた。いっぱい荷物を持って、だ。
「ご、ご機嫌麗しゅう、メーテォス辺境伯様、夫人」
なんか、びくびくしてないか? もしかして、いつもはいないはずのヴィルがいるから戸惑っちゃってる感じ? あ、あと俺か。ほら、王族の証である銀髪と青い瞳だから誰なのか一発だ。
つい数ヶ月前に結婚したからきっと皆の耳に入って噂になっちゃってるのかもしれない。一体どう言われてるのかすごく気になるところではあるけれど。
ソファーに座る俺達の前に並べられたマネキン。マネキンは、黒や青といった大人しめの色の正装を着ている。
「装飾が多い」
「え”っ」
「旦那様、最低限これくらいは付けていただかないと困りますよ。他ならぬ辺境伯の爵位を持っていらっしゃるのですから」
「……」
奥様!! と、隣のピモが助け船を欲しがっていそうな目を俺に向けていた。あぁ、なるほど。そのための俺だったのかとすぐに理解した。
「ヴィル、これもカッコいいと思いますよ。ほら、この刺繍とっても細かくて素敵ですし、こっちのも装飾が綺麗です」
「……リュークが好きなのを選べ」
「いやいや、着るのはヴィルでしょ」
「リュークが選んだものを着たい」
「はぁ……」
ほら始まった。それって全部投げやりって事だろ。そう言いたいんだろ。面倒くさがりモード発動かよ。俺、今までヴィルが何を着てきたのか知らないんだが。そんな俺が選んでいいのか? 不安なんだが。
でもさ、見たところどれも素敵なんだよな。ファンタジー漫画とかで出てきそうなデザインのものばかりなんだけど、刺繍の模様とか、使われてる布とか。高級感あるものばっかだ。まぁ、辺境伯だからそういうのを着ないといけない事は分かるけどさ。
「黒がいいですか?」
「リュークはどう思う」
「かっこいいと思いますけど……落ち着かないとかってあるでしょ」
「黒でいい」
あ、はいはい。そんなに面倒臭いのか。本当に俺に丸投げだな。
しょうがないな、と一つ黒のものを選んだ。試着って出来ますか、とそこで驚いていた仕立て屋さんに聞くと、どうぞご自由に! と言われたので、行け、とヴィルに目で伝え、別室に行かせた。もちろん、服を持たせた執事と一緒にだ。
はぁ、これは一苦労だな。仕立て屋さんも驚いてるし。見たところアメロだな。ここに来るの大変だっただろ。こんなに荷物持ってきて。
だがしかし、俺は仕立て屋の心配をしている場合ではなかったのだ。
心の準備をしておかないといけなかったことに、後悔するまであと少し。
「あの、ご夫人」
「はい?」
「本日は辺境伯様の正装とお聞きしていたのであまり持ってきていないのですが、アメロの洋服も数着ご用意しております。いかがでしょうか、ご覧になります?」
「あるんですか」
「はい。普段着は環境が違いますのでこちらで取り扱うよりメーテォス領の仕立て屋の方がよろしいでしょうけれど、首都にいらっしゃる際のお洋服などは我々仕立て屋をご利用してくださると光栄です」
「あ、なるほど。じゃあ見せてもらってもいいですか?」
まさか、見せてもらえるとは。アメロ用の正装やお出かけ用の洋服って事だよな。
サササッ、とマネキンが並べられる。おぉ、どれも華やかだな。ヴィルのは暗めだったから余計色が明るく見える。パンツドレスって言うのか。でもこれ着て外出たら寒そうだな。首都で着る用ではあるんだけどさ。ほら、首回りがハイネックじゃないし。
いつも着込んでるからこれ着たら最初は慣れないと思うな。まぁでも首都に行くことってあまりないだろうからな。
……なんて思いつつ、マネキンに着せられた服を眺めていた、ら……
「リューク」
「……」
……言葉を失ってしまった。
おいおいおいおいおいおいおい、誰だあれ。あのイケメン誰だよ!! かっこよすぎだよあの人!!
つい、顔を手で覆ってしまったが……やべぇ、眩しい。なんなんだあの人は。あれ以上見てたら多分俺目潰れるって。眩しすぎて。誰かサングラスを持ってきてくれ。
「どうした」
そう言って近づいてくるが、くるっと回って背を向けた。いや、そうしなきゃ俺死にそうだもん。なんかさ、ヘアセットまでされちゃってたし。前髪、右残して左後ろに流しちゃってるし。なんだよあれ、反則だろぉ……!!
「ククッ、耳まで赤くなってるぞ」
「うるさい」
「そこまで気に入ってくれたのであれば、これで決まりだな」
いや、たぶんどれ着てもこうなったと思います、はい。
あともう一つ恐ろしい事を言うのであれば……この人をこの状態でバラの間に連れてっちゃダメって事だ。多分10割増しになるから。俺どうにかなっちゃいそうだ。
これ、殺傷効果があるって。ダメだ、この人を外に出しちゃダメだ。
「そういえばリューク、昨日の約束、忘れてないだろ?」
「……」
昨日の約束……ヴィルと約束……あっ。
けど、いつもは見れないヴィルのちゃんとした寝顔をベッドの上で見ることも出来た。ほら、いつもは狸寝入りじゃん? でも今日はちゃんと寝息も聞こえる。ちゃんと寝てるんだよ。
いつもは大人なイケメンフェイスなんだけど、寝てると子供っぽいというか。ちょっと若返る? うん、ずっと眺めていられる。
今、俺銀髪だろ? でも前世じゃ日本人だったから黒髪だったわけで。俺染めてなかったし。だから同じく黒髪のヴィルをちょっと羨ましく思っている。
貴重品室で見た家族そろっての肖像画には、黒髪はヴィルと、先代辺境伯様。アメロの先代夫人と妹さんはハニーブロンドだった。赤い瞳は先代夫人以外全員だけど。
いいなぁ~、なんて思いつつ髪を触っていたら……頭が動いた。あ、起きた。起こしたか? ……あ、違う、また寝た。
「……可愛いな」
これは……毎日早起きをしなくてはいけないな。毎日の日課にしたい。……と思ってはいるけれど、夜ヴィルが大暴走しなければの話である。そう、風呂やベッドの上で。これ以上は言わないが。
その後、数十分後にぎゅ~っと俺を抱きしめる腕に力が入った。起きたらしい。狸寝入りの始まりだ。……と、思ったが案外早かった。
「早かったな」
「起きちゃいました」
「そんなに腹が減ったか」
「そんなに食い意地張ってませんけど」
「そうか?」
と言いながらキスをしてきた。おはようのキスか? 毎日してくるけどさ。でもベッドから出るつもりはないらしい。中々腕はほどけない。
「あ、そういえばヴィル。王城に行くって言ってましたよね。呼ばれたんですか?」
「いや、今年の報告書を提出しに行くんだ。言っただろ、国王陛下の代理で広い国土の管理をしていると。それに関する報告書を毎年提出しているんだ」
「なるほど。じゃあ陛下にお会いするって事ですか」
「残念ながら、な」
いや、それ言っちゃっていいのか? 気持ちは分かるが。でも、一応王族の俺を貰ったのだからそういう話もあるだろう。ミンミンの織物とか? あと青バラの話とか? まぁでもどうせヴィルだから全部流すだろうし、心配ないか。
「首都とかって行く時、剣とか持っていくんですよね。もしかして、あのデカいやつ……?」
「いや、短いのを持っていく。さすがに首都に白ヒョウはいないからな」
「あ、はは、そりゃそうですね」
まぁでもお偉いさん方はビビりそうだけどな。顔が見てみたい。
でも、もしその短いほうの剣を持っていなかったとしても……素手で戦えるよな、この人。あぁいや、変な事は考えないでおこう。
「いつもと違う剣だと、戸惑ったりしません?」
「白ヒョウ用よりも軽すぎるから、たまに飛ばすときがあるが……まぁその時には素手でなんとかなるから問題ない」
「……」
俺の考えは的中したらしい。もうこの話はやめにしておこう。怖いから。
それよりも、今日は仕立て屋さんが来るんだから寝坊なんてしてられない。ほら、さっさと起きろ!
今日の天気はよく、首都からいらっしゃる仕立て屋さん達は難なく魔法陣装置を通ってからこの屋敷までたどり着いた。いっぱい荷物を持って、だ。
「ご、ご機嫌麗しゅう、メーテォス辺境伯様、夫人」
なんか、びくびくしてないか? もしかして、いつもはいないはずのヴィルがいるから戸惑っちゃってる感じ? あ、あと俺か。ほら、王族の証である銀髪と青い瞳だから誰なのか一発だ。
つい数ヶ月前に結婚したからきっと皆の耳に入って噂になっちゃってるのかもしれない。一体どう言われてるのかすごく気になるところではあるけれど。
ソファーに座る俺達の前に並べられたマネキン。マネキンは、黒や青といった大人しめの色の正装を着ている。
「装飾が多い」
「え”っ」
「旦那様、最低限これくらいは付けていただかないと困りますよ。他ならぬ辺境伯の爵位を持っていらっしゃるのですから」
「……」
奥様!! と、隣のピモが助け船を欲しがっていそうな目を俺に向けていた。あぁ、なるほど。そのための俺だったのかとすぐに理解した。
「ヴィル、これもカッコいいと思いますよ。ほら、この刺繍とっても細かくて素敵ですし、こっちのも装飾が綺麗です」
「……リュークが好きなのを選べ」
「いやいや、着るのはヴィルでしょ」
「リュークが選んだものを着たい」
「はぁ……」
ほら始まった。それって全部投げやりって事だろ。そう言いたいんだろ。面倒くさがりモード発動かよ。俺、今までヴィルが何を着てきたのか知らないんだが。そんな俺が選んでいいのか? 不安なんだが。
でもさ、見たところどれも素敵なんだよな。ファンタジー漫画とかで出てきそうなデザインのものばかりなんだけど、刺繍の模様とか、使われてる布とか。高級感あるものばっかだ。まぁ、辺境伯だからそういうのを着ないといけない事は分かるけどさ。
「黒がいいですか?」
「リュークはどう思う」
「かっこいいと思いますけど……落ち着かないとかってあるでしょ」
「黒でいい」
あ、はいはい。そんなに面倒臭いのか。本当に俺に丸投げだな。
しょうがないな、と一つ黒のものを選んだ。試着って出来ますか、とそこで驚いていた仕立て屋さんに聞くと、どうぞご自由に! と言われたので、行け、とヴィルに目で伝え、別室に行かせた。もちろん、服を持たせた執事と一緒にだ。
はぁ、これは一苦労だな。仕立て屋さんも驚いてるし。見たところアメロだな。ここに来るの大変だっただろ。こんなに荷物持ってきて。
だがしかし、俺は仕立て屋の心配をしている場合ではなかったのだ。
心の準備をしておかないといけなかったことに、後悔するまであと少し。
「あの、ご夫人」
「はい?」
「本日は辺境伯様の正装とお聞きしていたのであまり持ってきていないのですが、アメロの洋服も数着ご用意しております。いかがでしょうか、ご覧になります?」
「あるんですか」
「はい。普段着は環境が違いますのでこちらで取り扱うよりメーテォス領の仕立て屋の方がよろしいでしょうけれど、首都にいらっしゃる際のお洋服などは我々仕立て屋をご利用してくださると光栄です」
「あ、なるほど。じゃあ見せてもらってもいいですか?」
まさか、見せてもらえるとは。アメロ用の正装やお出かけ用の洋服って事だよな。
サササッ、とマネキンが並べられる。おぉ、どれも華やかだな。ヴィルのは暗めだったから余計色が明るく見える。パンツドレスって言うのか。でもこれ着て外出たら寒そうだな。首都で着る用ではあるんだけどさ。ほら、首回りがハイネックじゃないし。
いつも着込んでるからこれ着たら最初は慣れないと思うな。まぁでも首都に行くことってあまりないだろうからな。
……なんて思いつつ、マネキンに着せられた服を眺めていた、ら……
「リューク」
「……」
……言葉を失ってしまった。
おいおいおいおいおいおいおい、誰だあれ。あのイケメン誰だよ!! かっこよすぎだよあの人!!
つい、顔を手で覆ってしまったが……やべぇ、眩しい。なんなんだあの人は。あれ以上見てたら多分俺目潰れるって。眩しすぎて。誰かサングラスを持ってきてくれ。
「どうした」
そう言って近づいてくるが、くるっと回って背を向けた。いや、そうしなきゃ俺死にそうだもん。なんかさ、ヘアセットまでされちゃってたし。前髪、右残して左後ろに流しちゃってるし。なんだよあれ、反則だろぉ……!!
「ククッ、耳まで赤くなってるぞ」
「うるさい」
「そこまで気に入ってくれたのであれば、これで決まりだな」
いや、たぶんどれ着てもこうなったと思います、はい。
あともう一つ恐ろしい事を言うのであれば……この人をこの状態でバラの間に連れてっちゃダメって事だ。多分10割増しになるから。俺どうにかなっちゃいそうだ。
これ、殺傷効果があるって。ダメだ、この人を外に出しちゃダメだ。
「そういえばリューク、昨日の約束、忘れてないだろ?」
「……」
昨日の約束……ヴィルと約束……あっ。
1,100
お気に入りに追加
7,884
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる