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◇48 凄いのばっかだな

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 メーテォス邸宅はとても大きくて広い。という事は、とても広い部屋や、部屋がたくさんあるという事。

 だから、俺はまだ行ったことがない部屋もあった。


「貴重品室です」

「めっちゃ広くないか?」

「4代前の辺境伯様が、骨董品こっとうひん集めを趣味としていたらしいですよ」

「あ、なるほど」


 という事は、もしかしたら夫人が好きなものもあるという事か。あんなに夫人想いな方々が多いんだからそれもあり得る。ほら、世界中の本を集めちゃったり、トゲのないバラを作っちゃったり。あるあるだな。

 中には、なっがいテーブルがいくつも並べられていた。そして壁には何枚もの絵画がかけてある。

 おぉ、すんごい細かい装飾そうしょくがされたつぼもあるぞ。いくつもあるけれど、どれもすごいデザインのものばかりだ。綺麗きれいだし。なんかだまされちゃったりしてないよな、その人。

 あ、いや、ここの人達って凄く優秀ゆうしゅうな人ばかりだから大丈夫だと思うけどさ。なら大丈夫か。


「うわぁ、デカい水晶だな」

「私も水晶は見た事がありますが、このサイズは初めてです」

「ピモ、ここ来たことないのか?」

「はい、ドアを開けて外から覗いただけです」

「……俺、入っちゃいけなかった?」

「ここの主人は旦那様と奥様です。ですから、奥様が入ってはいけないところなどどこにもありませんよ」


 あ、まぁ、そうなんだろうけど……それに、ヴィルにも言われてないしな。入るなって。聞いたことないけど。


「ピモは、入っちゃダメって言われてた?」

「いえ? それに私は奥様と一緒に入りましたから、何も言われないと思いますよ」

「あ、そっか」


 俺が許可したようなもんだもんな。なら大丈夫か。

 と、思いつつ見渡していたら……見つけてしまった。これは……家族全員が描かれた肖像画か。誰だろ。60代くらいのアメロと男性、あと子供が1人か。


「これは……きっと4代前の辺境伯様のご家族を描いたものではないでしょうか。あちらにあと4枚飾ってありますので」

「あ、なるほど」


 入り口付近には雪山の絵画ばかり並んでいて、奥には肖像画がかけられているな。

 うん、確かに何となくヴィルや妹さんに似てる。でもやっぱり男性だ。全員。うん、当たり前だけど。

 進んでいくにつれて、4枚目のものにたどり着いた。あ、ヴィルだ。あと妹さんとご両親と思われる方二人。ヴィルは……大体小学校低学年くらいか? まぁでも見た目だしな。本当はいくつか分からないけど……可愛いな。うん。笑ってないけど。

 まぁ、初対面でも笑ってなかったし、ちょっと怖かったしな。イケメンで顔整ってたけど。


「……そういえば、雪山の風景画が多いな。ここで描いたものなのか」

「恐らくそうだと思います。この国では、こんなに大きな雪山はありませんから」


 俺、この国とかそういうのまだ勉強中なんだよな。他の国とかの事も分からないし。あ、冬のじゃないのあった。


「これはここより少し遠いメーテォス領の風景ですね。メーテォス領はとても広いですから、こことはまた違った風景を見ることも出来るのですよ」

「あ、なるほど」


 確か、ヴィル達のご両親はめっちゃ遠いところにいるんだっけ。じゃあ、こことは全然違うところにいるのかな。雪があまり降らないところだったりあるのかな。行ってみたいけど……確か、行くのに3ヶ月かかるって言ってたか。いや、無理だな。


「あ」


 進んでいったら、見つけた。


蓄音機ちくおんきじゃん」

「そのようですね」


 テーブルの上に置かれていた、白い蓄音機ちくおんき。エレガントっぽい感じに金色に装飾されている。俺、実物は見た事なかったんだよね。へぇ、こんな感じなんだ。箱みたいな台に、レコードを乗せる台があって、お花みたいに伸びてるラッパが付いてる。

 蓄音機ちくおんきの横に1枚1枚箱に入ったレコードが積んである。きっとこれを使っていたんだろうな。


「使ってみます?」

「いいの?」

「見たところ、壊れているようには見えませんし……」


 俺、実物見るの初めてだからそこらへんよく分らないけど……一旦ヴィルに聞いてみる?

 では、聞いてみますね。そう言ってくれてピモが部屋から出て行った。


「あ、これ楽器か?」


 ハープか、これ。黒に金色の装飾でかっけぇな。

 ピンッ、と一本げんをはじいてみた。うん、めっちゃいい音。ハープってこんな感じの音だよな。

 初めて実物見たけど、ここにペダルみたいなのがあるな。これ、踏むのか? それとも曲に合わせてあらかじめ調節するのか? よく分らん。

 その隣には、ヴァイオリン。あと、ヴァイオリンのデカいバージョン。これ、なんて言うんだっけ。チェロ? 俺楽器とかって詳しくないんだよなぁ。

 俺は、離宮でクラリネットをやったことがある。誕生日の日に使用人達がお金を出し合って買ってくれたのだ。ひまそうにしてたから、って言ってた。クラリネットやったことあるやつがいて、いろいろと教えてもらったんだけど……まぁまぁ、ってところかな。あ、あとタンバリン?

 まぁ一応持ってきてはいるんだけど、きっと使う事はないだろうな。たぶん。

 と思いつつ周りを見て回っていたらピモが帰ってきた。ヴィルからOKを貰えたそうだ。


「そんな安物を使わずとも、ちゃんとしたものを買ってやるぞ、だそうです」

「いやいやいや、そんなのいいから」


 ただ鳴らしてみたいってだけだったんだけど。しかもこれが安物ですか。見た目からしてそんなに安物には見えないのだが。

 よし、じゃあ鳴らしてみるか。と思ったら、台車を持ってきてくれたみたいで。こんな狭いところよりも広いところで聞けって言われたそうで。だからこれを運んで違う部屋で聞くことになったのだ。

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