48 / 81
◇48 凄いのばっかだな
しおりを挟むメーテォス邸宅はとても大きくて広い。という事は、とても広い部屋や、部屋がたくさんあるという事。
だから、俺はまだ行ったことがない部屋もあった。
「貴重品室です」
「めっちゃ広くないか?」
「4代前の辺境伯様が、骨董品集めを趣味としていたらしいですよ」
「あ、なるほど」
という事は、もしかしたら夫人が好きなものもあるという事か。あんなに夫人想いな方々が多いんだからそれもあり得る。ほら、世界中の本を集めちゃったり、トゲのないバラを作っちゃったり。あるあるだな。
中には、なっがいテーブルがいくつも並べられていた。そして壁には何枚もの絵画がかけてある。
おぉ、すんごい細かい装飾がされた壺もあるぞ。いくつもあるけれど、どれもすごいデザインのものばかりだ。綺麗だし。なんか騙されちゃったりしてないよな、その人。
あ、いや、ここの人達って凄く優秀な人ばかりだから大丈夫だと思うけどさ。なら大丈夫か。
「うわぁ、デカい水晶だな」
「私も水晶は見た事がありますが、このサイズは初めてです」
「ピモ、ここ来たことないのか?」
「はい、ドアを開けて外から覗いただけです」
「……俺、入っちゃいけなかった?」
「ここの主人は旦那様と奥様です。ですから、奥様が入ってはいけないところなどどこにもありませんよ」
あ、まぁ、そうなんだろうけど……それに、ヴィルにも言われてないしな。入るなって。聞いたことないけど。
「ピモは、入っちゃダメって言われてた?」
「いえ? それに私は奥様と一緒に入りましたから、何も言われないと思いますよ」
「あ、そっか」
俺が許可したようなもんだもんな。なら大丈夫か。
と、思いつつ見渡していたら……見つけてしまった。これは……家族全員が描かれた肖像画か。誰だろ。60代くらいのアメロと男性、あと子供が1人か。
「これは……きっと4代前の辺境伯様のご家族を描いたものではないでしょうか。あちらにあと4枚飾ってありますので」
「あ、なるほど」
入り口付近には雪山の絵画ばかり並んでいて、奥には肖像画がかけられているな。
うん、確かに何となくヴィルや妹さんに似てる。でもやっぱり男性だ。全員。うん、当たり前だけど。
進んでいくにつれて、4枚目のものにたどり着いた。あ、ヴィルだ。あと妹さんとご両親と思われる方二人。ヴィルは……大体小学校低学年くらいか? まぁでも見た目だしな。本当はいくつか分からないけど……可愛いな。うん。笑ってないけど。
まぁ、初対面でも笑ってなかったし、ちょっと怖かったしな。イケメンで顔整ってたけど。
「……そういえば、雪山の風景画が多いな。ここで描いたものなのか」
「恐らくそうだと思います。この国では、こんなに大きな雪山はありませんから」
俺、この国とかそういうのまだ勉強中なんだよな。他の国とかの事も分からないし。あ、冬のじゃないのあった。
「これはここより少し遠いメーテォス領の風景ですね。メーテォス領はとても広いですから、こことはまた違った風景を見ることも出来るのですよ」
「あ、なるほど」
確か、ヴィル達のご両親はめっちゃ遠いところにいるんだっけ。じゃあ、こことは全然違うところにいるのかな。雪があまり降らないところだったりあるのかな。行ってみたいけど……確か、行くのに3ヶ月かかるって言ってたか。いや、無理だな。
「あ」
進んでいったら、見つけた。
「蓄音機じゃん」
「そのようですね」
テーブルの上に置かれていた、白い蓄音機。エレガントっぽい感じに金色に装飾されている。俺、実物は見た事なかったんだよね。へぇ、こんな感じなんだ。箱みたいな台に、レコードを乗せる台があって、お花みたいに伸びてるラッパが付いてる。
蓄音機の横に1枚1枚箱に入ったレコードが積んである。きっとこれを使っていたんだろうな。
「使ってみます?」
「いいの?」
「見たところ、壊れているようには見えませんし……」
俺、実物見るの初めてだからそこらへんよく分らないけど……一旦ヴィルに聞いてみる?
では、聞いてみますね。そう言ってくれてピモが部屋から出て行った。
「あ、これ楽器か?」
ハープか、これ。黒に金色の装飾でかっけぇな。
ピンッ、と一本弦をはじいてみた。うん、めっちゃいい音。ハープってこんな感じの音だよな。
初めて実物見たけど、ここにペダルみたいなのがあるな。これ、踏むのか? それとも曲に合わせてあらかじめ調節するのか? よく分らん。
その隣には、ヴァイオリン。あと、ヴァイオリンのデカいバージョン。これ、なんて言うんだっけ。チェロ? 俺楽器とかって詳しくないんだよなぁ。
俺は、離宮でクラリネットをやったことがある。誕生日の日に使用人達がお金を出し合って買ってくれたのだ。暇そうにしてたから、って言ってた。クラリネットやったことあるやつがいて、いろいろと教えてもらったんだけど……まぁまぁ、ってところかな。あ、あとタンバリン?
まぁ一応持ってきてはいるんだけど、きっと使う事はないだろうな。たぶん。
と思いつつ周りを見て回っていたらピモが帰ってきた。ヴィルからOKを貰えたそうだ。
「そんな安物を使わずとも、ちゃんとしたものを買ってやるぞ、だそうです」
「いやいやいや、そんなのいいから」
ただ鳴らしてみたいってだけだったんだけど。しかもこれが安物ですか。見た目からしてそんなに安物には見えないのだが。
よし、じゃあ鳴らしてみるか。と思ったら、台車を持ってきてくれたみたいで。こんな狭いところよりも広いところで聞けって言われたそうで。だからこれを運んで違う部屋で聞くことになったのだ。
921
お気に入りに追加
7,746
あなたにおすすめの小説
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
【完結】異世界でも変わらずクズだった俺だが気にしない! クズは生きてちゃダメ? 追放? だから出て行ったのになんで執着されてんの俺!
迷路を跳ぶ狐
BL
ある日、いろいろ行き詰まってぼーっと街を歩いていた俺は、気づいたら異世界に召喚されていた。
しかし、この世界でもやっぱり俺はクズだったらしい。
ハズレだったと言われ、地下牢に押し込められて、せめて何かの役に立たないかと調べられる日々。ひどくね?
ハズレだって言うなら、そっちだってハズレだろーが!!
俺だってこんなクズ世界来たくなかったよ!
だが、こんなところでも来ちゃったんだから仕方ない。せっかくだから異世界生活を満喫してやる!
そんな風に決意して、成り行きで同行者になった男と一緒に異世界を歩き出した。
魔獣に追いかけられたり、素材を売ったり、冒険者になろうとしてみたり……やたらくっついてくる同行者がたまに危ない発言をしたり引くほど過保護だったりするが、思っていたより楽しいぞ!
R18は保険です。
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
私が一番嫌いな言葉。それは、番です!
水無月あん
恋愛
獣人と人が住む国で、ララベルが一番嫌う言葉、それは番。というのも、大好きな親戚のミナリア姉様が結婚相手の王子に、「番が現れた」という理由で結婚をとりやめられたから。それからというのも、番という言葉が一番嫌いになったララベル。そんなララベルを大切に囲い込むのが幼馴染のルーファス。ルーファスは竜の獣人だけれど、番は現れるのか……?
色々鈍いヒロインと、溺愛する幼馴染のお話です。
猛暑でへろへろのため、とにかく、気分転換したくて書きました。とはいえ、涼しさが得られるお話ではありません💦 暑さがおさまるころに終わる予定のお話です。
いつもながらご都合主義で、ゆるい設定です。お気軽に読んでくださったら幸いです。
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜
ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……?
※残酷な描写あり
⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。
ムーンライトノベルズ からの転載です。
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる