バトル・オブ・シティ

如月久

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開戦

5.時間稼ぎ

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 「プレミアム・シティ」が新たに昇格したメガロポリスとの交渉に追われている間隙を利用して、昇格した3つの国は、着々と軍備を整えた。一気に空軍力を整備したのは、国の中に航空機メーカーの工場を抱えていた「イチロー」だ。国内の工場をフル回転させて戦闘機や爆撃機を増産し、国内の飛行場に分散配備した。
 メガバンクを中心とした金融の街「ポーラスターズ」も負けてはいなかった。「メガロポリス」世界に株式市場を創設すると宣言し、「プレミアム」に参加を打診した。もし、「プレミアム」が乗ってきたら、「ポーラスターズ」のメガバンクと「シティ・ジャニス」のオイルマネーで、「プレミアム」の主要企業を根こそぎ買い取る作戦だ。もし乗ってこなかったら、この世界で「経済二流国」に甘んじることになる。盟主を気取る「プレミアム」にとって、それは許しがたいことだろう。つまり、どちらをとっても、「プレミアム」には厳しい選択となる。
<メールがぱったりと止まりました。奴は熟考中のようです。単なる軍事オタクではないですね。なかなか賢いです>
 「ポーラスターズ」のオーナーから、こんなメールが届いたのとほぼ同時に、「鉄ちゃん」も昇格を果たした。「鉄ちゃん」はすぐに、連合国側でせっせと鉄道網を整備し始めた。もちろん、「プレミアム」は仲間外れにした。この行動も黙って見過ごすことはできないだろう。奴は必ず「鉄ちゃん」にもプレッシャーをかけてくるに違いない。
「放っておけない交渉を同時に4方向とするのは、正直キツイよ。我慢がいつまでもつかな」
「こっちの戦力はどんな感じなの?」
「まだまだ不十分さ。純粋な軍事力だったら、『プレミアム』の5分の1もない。今開戦して、まともに戦ったら、30分もたないだろう。そんな程度だよ」
「もっと時間を稼がなきゃならないのね」
「できるだけ、と言いたいところだけど、あんまり時間はない。ヨッシーの裁判が終わってしまう」
「いつまでも相手が動かなかったら? 判決がでてからじゃ遅いでしょう」
「そうなったら、こっちから仕掛けるしかない。開戦してしまえば、裁判どころじゃなくなるはずだよ。ところで、裁判に関する情報はある?」
 ジャニスは再度パソコンを操作した。「プレミアム・シティ・プレス」を閲覧しているのだ。
「まだ何もないわね。いついつに判決公判みたいな記事を探してるんだけど」
「もしかしたら、プログラムの重点が外交に向いたので、裁判はお休みモードなのかもしれない。もしそうなら、ラッキーだけど」

 リョウが「プレミアム」国境付近に、せっせと防御線を作っていたとき、メールが届いた。2通目を送ってから、約1時間が経っていた。
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