転生した先では、僕の結婚式が行われていました。

第2章

第56話

「今日……、デート……してくる」



「デート！？」


　ノアとルーシュは声を大にしてメアリに聞き返す。


「お前……、まだそんな年じゃないだろ……。相手は誰だ！」


「ととには言わないよ」


「何故だ」


　珍しくルーシュが戸惑っている。よほどメアリのデート発言がショックなのだろう。



「かかには教えてあげる。今度ガールズトークしようね」



「ガールズって……。俺男なんだけど……」


　メアリの中で、ノアは何故か女性に区分されているらしい。



（ガールズトークなんて、一体どこで覚えてきたんだろ……）



　学校に行き始めてからメアリは、見違えるほどに成長した。家族ではない第三者と関わることによって、協調性を学んでいったのかもしれない。


　昔、手を焼いていたいたずら好きな性格も、徐々に変わっていっている。



「デートになんか行かせないぞ、メアリ。今日はととと一緒にいなさい」


「えー、やだよ」


　メアリの体を抱きしめるルーシュは、しゅんと寂しそうな表情を浮かべた。


「子どもはどんどん成長していくな」



　数年後には、メアリも立派な女性になって巣立っていくのだろう。寂しい気もするが、大人となったメアリも見てみたい。きっと聡明で美しい女性に成長するに違いない。



「お前のお姉さんは、ひどいな。よりにもよって両親の結婚記念日に、他の男の所に行ってしまうなんて」



　ルーシュはノアの横に座り、そっとノアのお腹を撫でた。



「まだ聞こえてないよ」



　ノアはルーシュの肩に頭を置いて微笑む。



　ノアのお腹には新しい命が宿っていた。妊娠五カ月を迎え、少しお腹がふっつくらとしてきたが、予定日はまだ六カ月も先である。



「早く生まれてきてねー。赤ちゃん」



　メアリはノアの膝の前に座り、ノアのお腹を撫でた。



　こうして何気ない日常を、家族と笑いあって過ごせることがきっと一番幸せなのだ。多分これからも、色々と問題は起こるだろう。

　もしかすると、どうしようもない悲しみや苦しみを味わう日が来るかもしれない。それでも、この家族さえいてくれれば、どんな逆境にも立ち向かえる気がした。




　ノア、俺今すごく幸せだよ。




　
　アキがふとノアの墓に視線を向けると、セルと仲睦まじく寄り添って微笑んでいるノアが見えた気がした。