転生した先では、僕の結婚式が行われていました。

第2章

第40話

　ノアが精霊の森から姿を消した数時間後、リーヌは馬を全力で走らせルーシュの元へと戻った。


「ルーシュ様！」

「帰ったか」

　
　ルーシュは丁度、メアリと共に夕食をとっているところだった。

　きっと、ノアの帰りを今か今かと待ち侘びていたのだろう。表情がいつもより柔らかく、期待に満ちた眼差しをしている。


「も、申し訳ありません。ノア様を見失いました……」



　そんな表情から一変したルーシュを見て、リーヌはごくりとつばを飲み込む。事の詳細を詳しく話すようにと言われ、リーヌは洗いざらいルーシュに伝えた。


「それで……、ノア様がいなくなってから暫く捜索を続けていると、ノア様を見かけたというノワールの国民がいまして、詳しく話を聞いたところ、大柄な男にノア様が担がれて行くのを見たと……。その男は、ブロン国の紋章が入ったバッグを持っていたそうです」



「‥‥‥すぐに、ブロン国へと向かおう」


　リーヌの話を聞き終えたルーシュは立ち上がり、上着を羽織りだした。


「今からですか？！　ブロン国へは馬を全力で飛ばしても半日はかかりますよ！」



「当たり前だ、妻が行方不明だと言うのにじっとなどしてられるか」



　驚くリーヌに対して、ルーシュは当然だと言い張るように告げる。


「わ、分かりました。馬を準備してきます」


　リーヌは急いで部屋から出て行き、ルーシュもせかせかと準備を始めた。


「とと……？」


　その様子を、メアリは一人椅子に座って不安げに見つめていた。


「かか帰ってこないの？」
「安心しろ。私が絶対に見つけてくる」


　ルーシュはメアリの頭をそっと撫でて、微笑んだ。


「すまんが、メアリを頼む」


メアリを使用人へと預け、ルーシュは部屋を飛び出した。