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第2章
第35話
しおりを挟む時間は流れ、週末。とうとうこの日がやってきた。
「あれ、かかどこか行くの?」
よそ行きの格好をしているノアに、メアリが不思議そうに尋ねてくる。
「ああ。俺、今日は一日家を空けるから。メアリの大好きなルーシュと過ごせるぞ」
「え、とと一日家にいてくれるの?」
「ああ」
「やった! おままごとしてくれる?」
「いいぞ」
メアリは嬉しそうに顔をほころばせ、ルーシュに抱き着いた。
(俺の時より、数倍嬉しそうだな……)
若干、寂しさを感じるが、今日は存分に羽を伸ばす日なのだ。暫く、家族の事を考えて悩むのはやめよう。
「じゃあ、夕方には帰るから。メアリもいい子にしてるんだぞ」
「うん。かかいってらっしゃい」
メアリはよほどルーシュと過ごせることがうれしいのか、満面の笑みを浮かべて、ひらひらと手を振っている。
「ノア、くれぐれも気をつけて」
「うん。行ってきます」
ルーシュとメアリに別れを告げて、ノアは馬車に乗り込み「精霊の森」へと向かった。
ノアは、ノワール国を出るのはこれが初めての事だった。ノワールを出ると、暫くは、田畑や小さな集落があり、北上するにあたって段々と、空気が乾いていき砂漠が見えてきた。
「ノア様、精霊の森へはあと少しなので、ここからは歩いて向かいましょう」
砂漠の上を馬車で走ることはできない。付き人のリーヌが先導し、数人の護衛をつれて、ノアは徒歩で砂漠の上を歩いた。じりじりと太陽が照り、むわっとした空気に包まれる。
ノワールの夏の何倍も熱く、額から汗が流れ落ちる。服を脱ぎ捨ててやりたいところだが、皮膚をやけどしてしまう可能性があるので、完全防備でいなければいけない。
(なんか、来るとこ間違えたかな……)
せっかくルーシュがくれたリラックス休暇なのに、こんなに辛い思いをしていては休暇の意味がない。少し後悔を抱きながら、それでも一生懸命歩いていると、前方に緑が見えてきた。
「ああ、ノア様。あれですよ」
「本当にオアシスだな……」
四方八方砂漠で囲まれている中に、何故かポツンと存在しているオアシス。喉も乾き、この暑さにやられているノアにとっては精霊の森が光り輝いて見えた。
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