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第1章
第9話
しおりを挟む翌日、ノアは自分の首元に違和感を覚え目覚めた。
首が締まるほどの苦しさがあるわけではないが、ずっと首元を誰かに触られている感じがするのだ。
(なんだ……)
首元に手を持っていくと、何か硬い感触の物が付けられている。不思議に思いながら鏡の前に立ったノアは己の姿を見て絶句した。
首元に銀色に光る首輪のようなものが付けられている。見たところ鉄製で、つなぎ目はノアが見る限り見つからない。
(なんだよこれ……)
外そうといくら引っ張っても外れる気配がない。ノアは、ふつふつと心の底から怒りが湧いてきた。こんなことをするのは一人しか考えられない。視線を巡らせると、ベランダで朝日を浴びながら優雅に読書している男が一人。
「おい! これなんだよっ」
「なにって、噛みつき防止用の首輪に決まっている」
さも当たり前の様に言ってくるルーシュに苛立ちを覚えたノアは、ルーシュが読んでいる本を取り上げた。
「はあ? どういうことだ! というか今すぐ外せ! 不愉快だっ」
噛みつく勢いのノアに、ルーシュは耳を塞いでため息をついた。
「何をそんなにカリカリしているのだ? この部屋から出るという事は、他のアルファとも接触するということ。どこの馬の骨かも分からないアルファにうなじを噛まれでもしたらどうするのだ。ちなみにそれは、お前のために用意した発信機付きの特注タイプだからな」
(発信機って、なんだよそれ。それに、うなじを噛まれる……?)
「そ、そんなマニアックな行為、誰もしねーよ!」
ノアが反論すると、ルーシュは眉間に手を当ててため息をついた。
「お前は本当にオメガという自覚がないんだな」
(また、オメガって……。一体何のことなんだ?)
この世界に来て頻繁に耳にする「オメガ」という単語。ノアにはその意味が良く分からないが、どうやらかなり重要なことならしい。
「聞こうと思ってたんだけど、そのオメガって言うのは一体……」
「朝食をお持ちしました」
ノアの言葉は、ドアを開けて入ってきたメイドによって遮られた。湯気が立ち上る料理が手早く机の上に並べられていく。
「さっさと朝食を済ませよう。今日は孤児院へお前を連れていく」
「孤児院?」
「昨日言っていた、子供と関われる場所だ」
ルーシュは悠然と席につき、ノアを見た。
「食べないのか?」
「……た、食べるよ」
昨日の約束を憶えてくれていたことに驚きつつ、ノアは椅子に腰を下ろした。
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