公爵様が信じるのは奴隷だけ

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屋敷の門の前で結界魔法を唱える。

屋敷の留守を任せる人間がいないため、イザベル以外侵入できないように念入りに唱えておいた。

詠唱が終わり、ふっと一息つく。

「…さて、行くか」


そして、イザベルは馬車へと乗り込む。
ラウルは運転席に、リアムとルディがイザベルと同じ馬車の個室の中へと乗り込み、街へと向かった。




「これから私たちは商館に参るが、その前にルディには、こちらを渡しておく」

そう言ってイザベルはいくらか金の入った袋をルディに差しだす。

「市で何か良い食材があればこれで購入しなさい」


ルディが受けとった袋はそれなりに重みがあった。

一般的な主人であれば奴隷に金を預けることはほとんどないが、イザベルが今まで仕えてきた主人たちと異なることは3人全員が既に確信している。


「…ご主人様、ありがとうございます」


ルディは素直に頷いた。






――――――――――――――――――――――――







ルディとは奴隷商館の前で別れ、イザベル、ラウル、リアムの3人は商館の中へと足を踏み入れた。




「これはこれは!いらっしゃいませ」

以前訪ねた時と同様に若い男性が出迎えた。

イザベルの姿を目に留めると笑みを更に深くし、今回はすぐに個室へと通された。


少し個室の中で待っていると、商館の主人であるパブロが入ってくる。
椅子に腰かけるイザベルと、その後ろに立つ奴隷2人に目を向けた。


「公爵様、本日は再びお越しいただき、ありがとうございます。先日お買いあげいただいた3名はお気に召していただけましたでしょうか?」

相変わらず掴みどころのない笑みを顔に貼り付けている男だった。


「ああ、3人ともよくやってくれている。そして今日は新たに奴隷を買い足したいと思ってきた」

イザベルの言葉にパブロは笑みを深める。

「それは、それはありがとうございます。今回はどのような奴隷をお探しでしょうか?」

「今回も屋敷の手入れができる者、屋敷の警備を任せられるようなものが良いな」


「なるほど、承知いたしました。今回はどういたしましょう?直接数ある奴隷を見ることもできますが、こちらで何名かお勧めを見繕ってそこから選ぶことも可能でございます」

イザベルは、パブロの言葉に少し考えるが実際この3人を購入したきっかけもパブロの勧めがあったこともあり、そちらに任せることにした。

「…そうだな。そうしてもらおう」



「公爵様、ありがとうございます。それではこちらに連れてまいりますので、少々お時間いただきますようお願いいたします」



イザベルの同意に、パブロは表情を変えずに微笑んだまま頷いた。
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