勇者の不可分

たりきん

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夏目 晴斗1話 大変なことになってしまった

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最近SATとかSITみたいな新しい警察の組織ができたらしい、特殊な力が使える人達とかなんとか
スキルとか魔法とか、実際に使えたら便利そうなものを本当に使えるようになったらどうなるだろうか?日常生活に取り込もうと思うと、案外使えないかもしれない。そんなことを考えながらも、子供の頃から将来の夢を抱いたことのない夏目 晴斗(なつめ はると)はそんなことはすぐに忘れいつもの朝が始まる。

ジリリリリリリッ! 朝6時30分。
けたたましい目覚まし時計の音が部屋中に響き渡る。「あぁ、ねむ……」と、まだ重たい瞼を開けながらベッドから起き上がる。
朝のルーティンは決まっている。テレビを観ながらヨーグルトを食べ、寝癖を直すために頭だけシャワーで流し、軽くシャンプーして髪を乾かし、ササッとセット。そして、服を着替えて家を出る。――そんなはずだった。

「あだ!」
「あーもう!!最悪だ!!!」

足の小指をぶつけた拍子にヨーグルトをこぼしてしまった、片づけるのに時間を取られて時間が無くなってしまった。

「クソッ!!時間ねーし!!」

だが、今日は何かが違う。もちろんヨーグルトをこぼしたからでは無い、何か違和感が身体の中を駆け巡る。「んん?」頭に浮かんだ言葉を口にしながら、扉を開けた瞬間に思わず呟いた。

「フォールド……ゲート?」

見慣れた扉を開けると何か奇妙な感覚が彼を包み込んだ。驚いたことに、目の前に広がっていたのは、いつも利用している24時間70円の格安駐輪場だった。何が起こったのか、自分でも理解できない。呆然としながらも、頭をフル回転させて状況を把握しようとする。

「瞬間移動?いや、さすがにそれはないな……。ここまで来た記憶がないとか……いや、そんなはずない。自転車は……無いな」

ふとスマホを見ると、驚くべきことに7時17分になっていた。

「家を出たのは確か15分くらいだったよな……?」

頭の片隅で考えつつも、現実離れした状況に混乱しながらも、ある考えが浮かんだ。
試してみるのは馬鹿らしいと思いつつ、恥ずかしさを振り切って「フォールドゲート」と呟くと、目の前の空間が歪み始めた。人ひとりが通れる扉程度の歪んだ空間のようなものが現れたのだ。

「こんな死にかた嫌だぞ…」
「大丈夫……だよな?」

恐る恐る背負っているリュックを半分ほどその歪んだ空間に入れてみる。すると、その先は闇に消えていき断面がはっきりと見える状態だ。リュックを戻すと特に問題は無い。

「お、おぉ……大丈夫そうだな」

決意を固めた晴斗は、心臓が跳ねるのを感じながら、ついにその空間に足を踏み入れた。目の前に広がったのは、家賃5万円の安アパート、自分の部屋だ。晴斗は目を見開き、驚きで言葉を失った。

「お、おぉぉぉ!おいおいおい!マジか!すげぇ!」

叫び声を上げると同時に、興奮と驚きが一気に押し寄せてきた。

「ワープ!?瞬間移動!?できちゃったじゃん!!これ、職場にも直で行けんのか!?フォールドゲー……いや、待てよ、職場のどこに出るんだ?」

急に冷静さを取り戻し、よく考えてみると、こんなことをしているところを誰かに見られたら色々と面倒だ。しかも、移動先に人がいるかどうかも確認できない。晴斗は頭を抱えた。

「これもしかしてあれかテレビで言ってた特殊能力……スキルじゃなくて……アビリティだったか?いや名前なんてどうでもいいか」
「とりあえず仕事が終わってから色々試すか……」

彼は都内の大学施設で24時間の警備業務をしている。サボり方も熟知しているため、勤務の長さはあまり苦にならない。しかし今日はいつもと違う。誰もが欲しがるような力を手に入れてしまったのだ。早くその詳細を確かめたくて仕方がない。

「でも、こんなことバレずにどこで確かめればいいんだ……」

晴斗は自問自答しながら、次に取るべき行動を慎重に考えていた。そしてこれをキッカケに晴斗の人生は大きく変わることになる。
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