愛され末っ子

記憶がなくなる前の話

20話

理玖斗サイド

ピピッと会議の休憩時間に耳元の通信機に着信があった。

昨日からつけ始めたこの通信機。

清水たち、従者にこの通信機を任せてもいいのだけれど家族からの連絡はなるべく自分自身で受け取りたい。

「もしもし？？藍羅、どうしたんだ？」

「今日の夜8時、集合ね。」

端的に発せられたその言葉にヒヤッとした。

普段は温厚な性格の藍羅だが、真剣な時は人が変わる。

怒ったら怖くなるみたいな感じだ。

この調子だと無理矢理にでも開けて急いで帰らないとな、、、。

無理難題を押し付けて胃を痛める清水の姿が浮かぶがここは犠牲になってもらい、どうやって今日の埋め合わせをするのかを考える。

休憩時間なのにウンウン唸っていたから清水が感づいたのかウゲッ:(；ﾞﾟ'ωﾟ'):という顔をしている。

許せ、清水。

俺はまだ命が惜しい。


尊い命を犠牲にしてでも今日の会議？審議には絶対出たい。

琉架やもちろん、理斗のためにも。

今日のしわ寄せが来るのは嫌だが今日は緊急の状態ではなく安心してゆっくり家に帰れるのが久しくてつい顔がほころんでしまう。


俺が顔を綻ばせたのと同時にそんなに騒がしくなかった会議室が一気にざわざわし始めた。

中には「しっ社長が、、あんな天使のような笑みを、、、！！」

「たまにご子息を連れて来られるから親バカなのは知ってたけど現に目をするとすごいな、、、。」


とか聞こえる。


失礼な。
これでも父親だぞ。

周りの社員たちの動揺なんてつゆ知らず、俺は今日の夜について考えを巡らせていた。