Heavens Gate

酸性元素

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決戦編

それでも

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「さて……世界の終末に立ち会う感想はどうだい?ケイン氏。」
風が吹き荒れる瓦礫の上、クレアはケインに問う。
「さあな、どうだかわからねえ。たのしーよーなくるしーよーな……お前はどうだ?」
ケインは聞き返す。しかし、なかなか返答がない。
「別に、どうと言うことはないさ。何も感想はない。」
散々時間が経って搾り出された答えはがこれだった。
ケインはため息をつく。
「ま、踏ん切りがついたよ。一緒にいるうちに俺らに気持ちが傾いたとか、そう言うこともねえのな?」
「無いね。それは言える。私は……ね。この長い戦いの中で、私なりの生き方が欲しかったんだよ。偽って偽って……その繰り返し。だけど見つからない。見つかるはずが無かった。本物の私なんて、この世のどこにもいないのだから。」
「本物のお前はお前が決めろ。他人になんぞ頼むんじゃねえ。だから俺が……気づかせてやる。」
ケインは満面の笑みで言い放った。
「クックック……何を言い出すかと思えば……。やはり君は最初からここに来る運命だったんだ。誰よりもエゴイストで、誰よりも強い。物語で言えば主人公だ。どうせ私を倒して終わるんだろうね。」
「倒して終わると決まったわけじゃない。だったらなんでお前は戦う?」
「クソッタレな人生に意味を持たせるため。計画の時間稼ぎが、私なりの生きがいになって欲しいと願ったため。ただそれだけの理由さ。」
「俺は、さ。お前との殺し合いも楽しい。そんな奴さ。だけどな、お前と話してるこの時間の方がよっぽど楽しいよ。」
「そうか……だったら君の全てを否定しよう。君が楽しんでいれば絶望を望み、絶望を望めば希望を語ろう。何故なら私は君の敵だ。君の敵である以上、君を阻まなければならないのだから。」
「そうかよ、だったら俺は正義の味方か?ばーか、お前自分で言ってただろ。俺は正義の味方なんかじゃねえ、正義な自分の味方だ。」
「ならば見せてみろ!正義のお前を!!」
「当たり前だろ敵役ぅ!!」
両者は急速に距離を縮め、互いの拳を顔面にめり込ませる。
そこから先手を打ったのはクレア。顔面にめり込んだ拳から手を離し、その手に握っていた爆弾を爆発させた。しかし、ケインは既に最強の存在。その場から一切動くことなく、それを破壊して見せる。
「君なら……受け止められるだろう?」
クレアは大きく飛び上がると、あたり一面に弾を発射する。
視界いっぱいに埋まるそれは、1発1発が超常魔法の100倍の威力をしている。ケインはその場に立ったまま黒い穴を発生させると、続々とそれを飲み込んでいく。
「ぜぁぁぁぁぁ!」
その隙を狙い、ケインの懐に潜り込んだクレアは、目一杯に剣を振るった。それはあっさりとケインの刀に受け止められる。しかし、一度や二度の剣戟では彼女は止まらない。
毎秒30万回にも及ぶ斬撃の嵐を、ケインにぶつける。
彼は余裕の表情で、それを弾いていく。
だが、斬撃が本命ではない。至近距離にまで迫ったクレアは、彼の腹部に銃口を押し当て、一斉に解き放った。
その砲撃は、成層圏を突破し、果てにある惑星を削り取った。
「………全く、腹の立つ。」
クレアは舌打ちする。これは他の攻撃を受けても、ケインは無傷だった。発射された砲撃の跡は、彼の周りにだけついていない。
「お前は生き方が欲しいと言ったな、クレア。
お前を敵としてじゃねえ、1人の人間として俺は倒す。」
ケインはジリジリと、彼女に歩みを進める。
「人間、か。それも悪くないだろう。しかし、人として生きるには私は遅すぎる。人の心をとっくに失っている。」
「失っている?生きる理由を欲するお前そのものが人間じゃないか。」
「!」
クレアは顔を顰める。生きる理由を欲するのが人間。何を言っているんだ、こいつは。
「人は皆、何にでも理由を作る。理由をつくるから争うし、理由を作るから手を取り合える。美しくも醜い部分さ。
俺はそんな人間が、そしてそんな俺が好きだ。だから救う。そう決めた。お前はどうだ、クレア。お前は、人間になりたかったんじゃないのか?」
彼女は下を向く。
「今まで何をみても何も感じなかった私が、人間になりたい?馬鹿を言うな。私は人造人間だ!そこになんの理由も葛藤もない!」
「だったら何で……怒ってんだよお前は。怒るのは否定したいから。否定したいのは理由があるから。お前のその感情が!否定が!お前そのものじゃないか。」
「黙れ……!君が私の何をみてきた!」
「見てきたさ、お前と言う人間を。」
真顔でケインは言い放つ。それを言われてしまえば、もう…………後は無我夢中殺すしかない。
クレアは、魔力を解放する。
「………」
ケインは、その凄まじい魔力量を見ても、真顔を崩さない。
黒い魔力を身に包んだ悪魔が空に浮かびか上がった。
「見ろ!これが私の姿だ!悪魔.アバドン………。ただの醜い化け物だ!!人間なんかじゃ……」
「それでもお前は、人間だよ、クレア。」
「っ……!黙れええええええ!」
クレアは一斉に魔力を解き放つ。周囲に浮かぶ、眷属の悪魔数千体。それが一斉にケインに襲いかかった。
「お前は……俺が斬る!!」
ケインは魔力を解放した。宇宙から取り出される無限の魔力。その小さな体から放たれたそれは、一瞬にしてクレアの魔力を上回った。
「これほどの魔力……その体でどうして保っていられる!!」
クレアは驚愕した。どこまで、強くなったと言うのだ。
「行くぞ。」
ケインは上に飛び、次々と眷属の悪魔を斬っていく。
一体一体がシャーロットに匹敵する魔力を持つにも関わらず、全て一撃にて消し去される。もはや神の領域にまでケインは達していた。
「おおおおおおお!」
クレアの右手が、地上を巻き込んで共に切り落とされる。
「こ……のおおおお!」
クレア自身、どうしてここまで感情的になっているのかわからなかった。気づけば、彼に反撃を繰り出していた。
ケインは、クレアから放たれた砲撃を、宇宙を展開して相殺した。
「な……?!そのような使い方が…」
「宇宙を広げるエネルギー……舐めんなよ?
………骸と鼓動.神罰の時.儚きに散れ。」
ケインは詠唱を開始した。
「くっ………おおおおおお!」
クレアは、最大限に魔力を展開する。
しかし、もう遅い。相殺し切るだけの力は残されていない。
君臨せし神々の怒号オリンポス!」
ケインの刀の先から、斬撃が放たれた。それは宇宙空間を一撃にて破壊し、その空間を捻じ曲げる。
2人は元の時空へと戻された、
1人は着地し、1人は落下。瀕死のクレアの前に、ケインは立つ。
「よお、気分はどうだい?」
「最高だよ、本当に。」
しぶがれた声で、クレアは答える。彼女はそのまま言葉を続けた。
「認めるよ…私…は……人間になりたかった。ずっと不思議だったんだ。人の死一つ一つに…どうして……心を痛めるんだろうって。それは……人だから…なんだね?」
「そうだよ。どことも知らねえクズのために人はどこまでも残酷になれるし、どことも知らねえ他人のために、人は涙を流せる。」
「そうか………とても………良い生き物だ…。
ま……応援してるよ………。またあったら……仲間に入れてくれるかい?」
彼女の問いに、ケインは迷うことなく答える。
「当たり前だ。」
クレアはニコリと笑うと、消えていった。

「………」
ケインは何も言わずに、その場を去る。
「所長………満足して死んだんだな。」
彼が駆けつけた場にシャーロットはいない。修道服が1着あるだけだった。
ケインはそれを手に取ると、腰に巻きつけた。
「じゃ……みんなの力で、だ。」
ケインは銃を手に取り、照準を定める。
レドが残した銃には、彼の魔力がまだ残されている。
全てを崩壊させる彼の魔能力なら、この強固な壁にも穴が開けられるだろう。
花織の左目で、壁を見る。何にでも干渉できるこの瞳ならば、中に入ることができるだろう。
クレアの作った銃、レドの魔力、花織の眼、そしてシャーロットの服。全てを持ってこれにぶつける。
発射された砲撃は、壁を貫いた。
「……行くか。」
ケインは穴の中に入る、
その中は、真っ白な空間だった。振り返ると、彼の後ろにあった穴がない。
「ここは天界と直で繋がっている。君の眼がなければ死んでいたね。」
低い声が彼の耳に届く。
見ると、40代ほどの男が、椅子に座っていた。
ニコラ.フラメル。今回の黒幕だろう。
「この計画……Heavens Gate計画の邪魔はさせんよ。」
「するさ、俺は正義な俺なんだから。」
冷静にケインは答える。
「そうか……ならば、ここで死ぬといい。」
フラメルは、椅子に座ったまま、大量の人造人間を出す。
億、兆、京………とてつもない魔力を持った者たちが、信じられないほどの量にまで広がっていく。
「いくら君といえど、1人では片付くまい?せいぜい時間を稼がせてもらうよ。あと30分といったところか。」
「1人、か。」
ケインがポツリと呟いた一言に、フラメルは眉を顰める。
「なんだね?1人ではないと?」
「ああ、俺は1人じゃねえ。なんでかって?俺は1人が大嫌いだからさ!」
「知ってるよ、そんな事。」
突然、彼の肩を何者かがポンと叩く。
「シャーロット……?!どうして……」
フラメルは驚愕した。
「所長だけじゃねーよ。」
「先輩、久しぶりです。」
彼の隣にレドが現れる。
「ケインさん、力を貸しましょう。」
上から飛び込んできた花織が着地した。
「……や、さっきぶりだね。」
クレアは若干気まずそうに顔を出す。

「ふぅ……一通り片付いたね。」
デボラは汗を拭った。
すると、自身の体に起きたとある変化に気がつく、
「……なんだ?体が…」
ドレイクは自身の身体中を見渡す。その場にいる全員の体が光っているのだ。
「大将!死ぬのか俺!」
クロロは慌てる様子を見せる。
「ばか言わないの、死ぬわけないじゃん。」
冷静にシルビアは返す。
「それはどうして?」
ギルゼウスの問いに、シルビアはため息混じりに言う。
「だって……あいつが呼んでるじゃん。」
一同はその場から消えた。

「はーい、炊き出しっすよー。」
アイリスにて、炊き出しを運んでいたセシルは、突如その場から消える。

「え?!ちょっと先輩これどういう……」
「よく分からないけど……悪い感じじゃないみたいだな。
行こうか。」
「……ええ。」
ヘルガとノーマンは手を繋いだ。

「なんだ、何が起きている。………そうか、特異点をここに介入させて、天界と現実世界から魂を引き摺り出したのか!」
フラメルはケインを睨みつける。
「そうカッカすんなって……じゃ、行くぞ!」
「くっ……」
フラメルは、人造人間の群れの奥へと身を潜める。
「作戦を告げる!ケイン.クロシキのために道を作れ!!
かつて戦いあったものたちでも、死者であっても、今は手を取り合え!」
メリッサは一同に告げる。
「行きましょう、先輩。」
そう言うとレドは、前へと歩みを進める。
ケイン達は、一斉に飛び出していった。
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