地獄の道の罪人ども

天上編

反乱軍

　玉座にて、1人の男が座っていた。

「へぇ……侵入者が来たんだ……じゃあ多分アテナだね。」

　その男の周囲に、天使含めた神々は跪いた。そんな彼らに向けて、男は足を組んだまま命令を下す。

「まあ良いよ、探さなくて。せいぜい迎え撃とうじゃないか。」

　ニヤリと男は笑うと、自身の後方にいる老人の方を向いた。

「ねぇ、ゼウス？君はどう思う？自分の娘のコト。」

　ゼウスと呼ばれた老人は、表情を真顔のまま一切崩さずに、

「あの娘は賢い子です……苦戦させられますよ。」

「いいじゃない、そう言うの。分からせてやるんだ、この世はすべて僕の思い通りになると。」

　ハハハハハ、と男は高らかに笑う。その笑い声は、その空間の果てまで響き続けていた。

　………………………………………

　カンダタ達は、地面の中に空いた穴を転がる。視界がグルグルと回転し、周囲の景色を認識することができない。

「うおおおおおなんだなんだ……！？」

　そして、謎の空間に一同は落下した。最初に地面に激突した納言の上に、次々とカンダタ達は折り重なっていく。ぐぇ、と言う声を漏らし、納言は動かなくなった。

「痛ぇ……ここは何処だ？」

　カンダタは、周囲の景色を見渡す。そこは、一面に草木が咲いた庭だった。日光がそこら中から漏れ出し、どこからか鳥の囀《さえず》りが聞こえる。地下の空間に、こんなものがあったと言うのか。いや、そもそも俺たちをここに引き入れたのはどこのどいつだ？そんなカンダタの疑問は、すぐに払拭される事になる。彼らの前に、突然1人の男、いや女が現れたのだ。

「みなさん、ごきげんよう。私は四大天使の一角、ウリエルでございます。」

　バサ、という音と共に、ウリエルと名乗ったものは背中から羽を生やす。その中性的な顔立ちは、彼と言って良いのか彼女と言って良いのかわからない。

「ああ、ちなみにそこの方のような特別な例を除いて、天使に基本的に性別はございません。」

　こちらの心を読んだように、ウリエルはカンダタに向かって言う。そこの方、と言うのはマカの事だろう。ウリエル……彼と呼ぶことにするが彼は、額の方に視線を移すと

「あなたがこの組織を率いている方ですね？どうぞ、こちらに。」

　と庭の奥へと手招きした。どうする、と一同は目配せし合う。

「ここは、行くべき。助けてくれたのは、事実。」

　馬頭はそう言うと、ウリエルの後を追いかける。それに同調するように、一同は彼女を追いかけた。

「これは……！」

　額は、そこに広がる空間に驚愕した。土でできた壁、広がる住宅地……そして、500人を超えるであろう行き交う人々。これは、まさか。

「もしや君たち、所謂反乱軍って奴かい？」

　額は落ち着いた口調で声を漏らす。それが組織されていると言う確信はない。だがこれはどう見てもそういう組織に見えた。ウリエルは彼らの方を振り返ると、

「その通り、我々はオリンポスの反乱軍。ようこそ、御一行。」

　と深々と頭を下げた。