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終わりし世界
コーダの手記
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そして、本は語りかけた。脳裏に本の記憶が蘇る。そして、脳裏に映像と共に誰かが話し出した。
私は、あの日こうなることを全く予想してなかった。どうしてこうなった?私は、もうどうする事もできないのかそう全てに絶望した。時もまた、残酷で時と共に我々の輝ける遺産も壊した。そうだ。全てはここから始まった。始まりは、或る男が起こした事件。或る男は、唐突に姿を現した。そして、男は沢山の人を無差別に殺した。
合計、死傷者は、150人。
事件としては、類にみない数の多さで、歴史上でも悲惨な事件として当時はどの局でもニュースや特集で取り上げたくらいだ。
日本を飛び越え、世界にその事件は発信された。問題はそこではなかった。実は、この事件はかなり不可解な事件としても有名でもあった。警察内部からの内部告発で現行犯として逮捕された男がいたのに、すぐに釈放されていた事が発覚した事だ。
内部告発したのは検挙率が高かった優秀な公務員、いや、こう言うべきだな。園部捜査一課長が内部告発者だったのだ。彼が内部告発に踏み切ったのは、或る男を再逮捕する為だった。だが、その行為は思いの外警察にとって信用を失うきっかけとなってしまった。しかし、そんな事で信用を失うなんてこと、警察に限ってあるわけがないという慢心がまだその頃はあった。当然だ。優秀で頭のキレる園部捜査一課長が内部告発したことがマスコミ達に知られ、報道されてしまったのだから。本来、内部告発自体は上層部達は黙認していたがあくまでそれは一個人公務員の一人がと言う匿名での内部告発を黙認していたと言う事だった。
また、内部告発して泳がせる必要があったのは、実はこの事件現行犯逮捕であったが、段々調べていくうちに沢山の謎にぶち当たり、逮捕できるだけの十分な証拠や動機、人間関係も揃っていなかったからだった。問題は内部告発者が誰なのかが明るみにされてしまった事だった。当然、非難の嵐で殺到した。それがほとぼりさめるであろうと思った矢先の事だ突然中曽根渉警視総監が自宅で怪死した事件が起きた。突然の事だった。
まだ、連続無差別事件も内部告発の事も冷め切ってもなかった。そして、なぜかそれはきっかけに過ぎなかった。次は外務省の浜辺雄一大使など内閣府の長田春樹内閣総理大臣と次々に怪死したのだ。事件と言う形ではなく、全員が事故死や自殺。だが、トップばかりがこんなに死ぬとなると公安は黙ってるわけもなく、慎重に動いた。私はその時知り合いの一人が自殺をした。公安の人だった。こんだけ慎重に動いて得た情報は、支離滅裂な情報ばかり。信憑性に欠けるものばかりだった。宮城裕貴。
その名前だけが手がかりだった。この名前の情報を手に入れたのもかなり苦労した。多くの人を犠牲にした上でやっと手に入った情報だった。しかし、問題は山積みだった。
何せ、その名前だけで奴の職業も不明だったからだ。住所も全部でたらめだった。まるで、雲隠れしながら我々を嘲笑ってる様に宮城裕貴の足取りが掴めなかった。そんな時だ。奴の職業がやっとわかった。最大手のIT会社勤務。25歳だという事だ。
だが、問題は彼のそれまでの経歴が不明だと言う事。本来、戸籍があり元本が保管されてるのだが彼に関する戸籍情報が一切不明だったのだ。当然、両親のことも。出身地や出身学校も全く不明。これでは、見つけて逮捕しても状況証拠を揃えても、その気になれば確実に逃れようと思って仕舞えばまた釈放を余儀なくされる。そんな時、最初の事件とされた無差別殺人事件の写真に写った宮城裕貴と思われる男にへばりつく謎の影が写っていると話題になった。
この辺りから、かなりオカルトじみた話になっていった。オカルト系YouTuberにとっての格好のネタになった。そして、しまいには世界が終わるとまで考察するYouTuberも出てくる始末。しかし、まさかこの時ほんとにそうなるなんて誰が予想出来ただろうか。宮城裕貴と思われる男の情報は得られないまま、類似事件がアメリカ合衆国、フランス、イギリス、中国、各国で起き、そして世界的な問題へとなっていった。私は彼の消息を追って、色んな国へ行った。彼の起こした事件により綻びゆく国を見てきた。彼を恐れ、クーデター起こすものが現れたり、彼への復讐心でテロを起こす人達も現れた。世界は稀にみない大混乱へと向かっていった。
殺されるのを恐れ、逃げようと試みた各国の大臣や政治家、そして、大統領。皆、結局死んだ。もちろん次期の候補もいたがまるでさせるかと言わんばかりに候補者達も死んでいった。結局誰も、トップに立とうと思う人は出てこずこのままでは人間の時代は終わってしまうような不安感に襲われた。その不安感をよそに残酷にも現実は人間達を蝕んでいった。だが、私はやっとの思いでKGBのスパイと繋がる事が出来た。しかし、連絡取り合い、待ち合わせ場所で待機してた時だ。男の発狂と共にビルから落ちて目の前に落下した。もはや、そんな事慣れっこだった。私は、耳を当てて死にゆくそのスパイの声を聞いた。
すぐそこにいる。早く、それだけ言って絶命した。指を指したその先に路地裏があって、そこから逃げてく男がいたのを見かけ、追いかけた。
絶対に逃すものか。私は、その使命感で追いかけた。どんだけ、人を殺せば気が済むんだ。次第に、私の中に憎悪と殺意が芽生えてきた。殺してきた感情だった。だが、もう止めようがなかった。
銃を構え撃った。しかし、男の体に直撃したのにめり込んですり抜けた。と、万が一に備えて呼んでおいたアメリカ空軍の友達が軍隊を連れてやってきた。
そして、囲んだ。もう宮城裕貴も逃げ道はなかったはずだった。だが、そううまくはいかなかった。男は、フードを外し姿を現した。日本人だ。やはり、宮城裕貴。しかし、宮城裕貴はまるでこの状況を変えれるかのようにほくそ笑んでいた。宮城裕貴は、ただこう言った。「世界は終わりゆく。先祖達が犯した罪を悔いるがいい。」と、言った。この状況で言った発言に警戒をした。と、見えない何かが、次々に人を殺していく。宮城裕貴は何もしてない様子。軍人達、皆お母さんとか、おばあちゃんとか呟いて今行くね。と言って、自殺し始めたのだ。連鎖のように。友人もまた、キャスと呟いて涙を流し銃口を押し当て自殺した。
それで、私は察した。私のアメリカ空軍の友達が最後に言ったキャス、それはキャサリン。彼の娘の名前だった。怖かったのは、そのキャサリンは既に病気によって死んでいた事。そう。おそらく、宮城裕貴は死者を操れる。私もヤキが回ったようだ。まさか、私がこんな事言うとは。そして、宮城裕貴はいつのまにか私の目の前に来ていた。目を離してたわけではない。突然、目の前にいたのだ。宮城裕貴の分身?宮城裕貴が沢山私を囲んでいた。そして、まるでテレビのノイズが走るのと同じ事が目の前で起きた。宮城裕貴の体が歪んだのだ。
そして、響き渡った断末魔の男や女の声が、とても気味が悪い現象だった。気を失う前に、宮城裕貴の声ではない者の声で、ダメだ。殺すな。そいつは使える。その声が聞こえた。意識が戻ると、私は路地裏のゴミ捨て場にいた。起きて、道に出ると目の前ですごい強い光が覆った。ハッと意識を取り戻した時、私は緑豊かな丘らしき場所にいた。私はしばらく、丘を彷徨った。その先に集落があるのを見た。情報を得ようと試みたが、見た事ない人のような人ではないものが警戒しながらこちらを見ている。私はあの光で死んだのか。多分死んだのだろう。これが死後の世界かと。
なんか、切ない気分になった。これまで耐えてきたものがその瞬間爆発した。泣きながら、草をむしり取り、悔しくて枯れるほど泣いた。だが、集落の一人がカタコトの言葉でこう言った。
貴方は日本人ですね。別の世界からの転生者。ライセルより、話は聞いております。と、言ったのだ。
何がなんだか訳がわからなかった。話を聞いて、頭がパンクしそうになった。意味が分からなかった。理解できなかったのだ。アトランティスやら王族やら訳のわからない事ばかり言ってた。だから、私は困った。それに、まるでこの感じアニメで良く見る設定。そういや、転スラや盾の成り上がりなども見てたな。私はそうふけっていた。やはり、死後の世界なのだろう。そう思った。だが、目の前にいる詳しいそれは、貴方は死んでませんよ。確かに、私の話はあまりに現実的ではない。それは、貴方がこの世界の人ではないから。だけど、それが私達の常識です。だから、旅をしなさい。貴方が信じる道を進めば良いと、色々荷物を用意してくれた。どうやら、車はなく、馬がいた。
交通手段は馬か。そう思ったが、何より色々手配してくれたこの村の人達に感謝をして、私は旅をした。まずは、アヴァロンという国へ、用意してくれていた物の中にご飯もあり、それを食べて旅をした。普通に美味かった。
石に当たってこけた時も普通に痛かった。どうやら、ほんとに夢ではないようだ。アヴァロンにたどり着くと、そこにはマーリンと呼ばれる賢王が治めている国のようでそれはまるで中世ヨーロッパと酷似していた。そこに、でかい門があった。そして、言葉を失った。まるで、巨人が通るための門のように大きかった。そして、その入り口には門兵が複数いた。怪しい人だと思われ、門兵に捕まった。何語話してるのか全くわからない。必死にジェスチャーで訴えたが、ますます怪しまれてしまったようだった。荷物を奪われて、牢屋に入れられてしまった。
どうにか誤解を解きたかったがどうすることもできず、牢屋の中で寝ていた。もしかしたら、元いた場所に戻れるんじゃないかそんな淡い期待を持って寝た。だが、起こされた。衛兵が、柵を金属棒で鳴らして起こした。と、やってきた豪華な宝飾を纏ったとても若い王様。やせ細ってはいるが、貫禄のある方だった。グレートブリテンの様な雰囲気を感じる王は世はマーリン。この国の王だ。どうやら、ライセルがお主をこの世界へ導いたのだな。日本人よ。大変な思いをしたのじゃろうな。話で聞いておる。お主の様な転生者を見るのは初めてだ。済まないことをした。出してやれ。と牢屋から出して貰えた。
来賓用の客室に誘導され、私の部屋として使うよう言われた。ありがたく使わせてもらうことにした。色々、事の経緯をマーリンに話した。マーリンは、なるほど。と考え込んだ様子。そして、提案された。それなら、来賓用の客室を私の拠点にしながら、旅も続けて欲しい。そして、調べて分かった事を日記に記録として残して欲しい。そしたら、その日記をこの世界に広めようでは無いか。そしたら、何か知っている人がいるかもしれん。そう提案したのだ。それは、願ったり叶ったりだった。ただ、マーリンにとってどんなメリットがあるのだろう。私は、その代わりがあるって事ですよね?なんでしょうか?と聞くと、マーリンはいやいや、疑う気持ちも分かるが、私はライセルからある警告を受けている。近いうちにこの世界もまた終わりを迎えると。ライセルは、予言の神様であられるサリバンから聞いてるから確かな予言のはずだ。サリバンは、ミヤギユウキと言う男がその世界を狙っているというらしいのだ。そのバックには、得体の知れない者がいるらしいのだ。
私はサリバンからある話を聞いた。ライセルは、かつて、二つの世界を行き来していた魔王カースという奴の魂が今もどこかで息を潜めてると怯えている。
それもそのはず魔王カースはそもそもライセルとは実の兄弟。ライセルにとっては、兄なのだ。元々は、肉体があったらしいが滅ぼされたと聞く。その原因の一つがライセルの裏切りだったらしいのだ。ライセルはその頃まだ子供であり神様の候補として特訓生だったのだ。特訓生であったライセルは兄であった魔王カース、いや、神託のカルセルと言われた当時の主神の右腕であったカルセル。彼は、誰もが憧れる存在だった。見た目の良さも、頭脳の良さも、天使達の間ではそれこそアイドルに近い存在だったのだ。にも関わらず、彼は謙虚で決して自惚れないところもまた好かれていた。当然よく思わない神達もいた。
何故なら、当時の主神が何かあると必ず彼を呼んでいたからだ。彼はいろんな神々の無茶な要求をやり遂げてしまうところがあった。それが、また他の神達から良く思われなかった。そんな時、誰かが言い出した。
カルセルは完璧すぎる。そのうち、主神の座も彼ならやってのけるだろう。とか、あの完璧さは偽りだ。カルセルがそろそろ主神に牙を剥くだろう。
などと、カルセルの陰謀をほのめかす言葉が飛び交うようになったらしいのだ。そして、いつしか言われる様になった。カルセルは主神の命を狙ってると。当然そんなこと狙ってはなかった。主神もまた彼を疑わなかった。だが、誰かが吹き込んでからそれは始まった。彼を不安という名の影が蝕んで行った。次第に彼は周りにいるもの全てが敵に思えてきたのだ。その不安は、ついに牙を向いた。彼は最初にこの噂を流した神の1人、モルグを血祭りにあげた。更に、その行為は多くの神、天使に恐怖を与えた。これでもかと、神様をつぎつぎに殺していった。そこに終止符を与えたのは他でもないまだ神候補生だったライセル。ライセルは血を分けた兄弟として、主神から言い渡された。力を貰う代わりにカルセルの暴走を止めよ。と。彼は、苦渋の決断を迫られた。主も、残酷よ。ライセルとカルセルは血を分けた兄弟というだけではなかった。カルセルとライセルは父は同じでも、腹違いの兄弟。それも、ライセルの母は殺害され、父親であった宇宙を司る神ウーラノスは残酷にも悲しい境遇にいた産まれたばかりの自分の息子を悲しみ、苦しみ、そしてあろう事か、すててしまった。そんなライセルを見兼ねたのはウーラノスのもう1人の息子、カルセルだった。カルセルは、まだ幼い弟を育てた。だが、この時もカルセルはまだその子が自分の弟とは知らなかった。知ったのは、弟が成人した時のこと。
成人した日、弟の記憶が戻ったのだ。母の死、父の消えゆく姿、その話を聞き自分の弟と知り、彼はますますライセルを溺愛したのだ。そんな弟に兄の暴走を止めよなんて、主も酷いことをしたもんだ。彼は何も語らんよ。この話は。だって、苦渋の決断を迫られ、弟を溺愛する兄を止めたのだから。それからだ。ライセルは、名誉ある力を授かり転生を司る神となってから、彼は罪悪感からカルセルの影に怯える毎日を過ごすようになった。それが、今や怯えるを超えて兄のカルセルが復讐に来るのではないかと恐怖してる。
そして、ライセルはどういう訳かあるニホンジンを恐れてる。ミヤギユウキと言う男だ。彼は、何回もこの世界と別の世界を行き来できる。そして、彼の背後にいる得体の知れない存在、肉体のない魔王カース。ライセルはおそれてるのだ。魔王カースの事を。
無理もない。魔王カースはあらゆる物を内側から壊す禍々しい力を持つ。その魔王カースの力に触れた人間は、あらゆる歴史に災いをもたらす。アドルフ・ヒトラーという男もまた魔王カースの瘴気に触れ狂わされた。彼は次第に世界を巻き込む戦争の切り札に成り果てたのが証拠だ。魔王カースは昔と違って復活も時間の問題とされてる。防ぐことが出来るのは、光の加護より受けし失われし大国の王族の者が再び王座に就けば可能性が浮上してくる。問題は、その王様が神託を受け勇者に託す事。その勇者はかの昔オーロラという召喚士が召喚したのを最後に途絶えた。だから、現実としてそれは不可能に近い。それに、今や純粋なアトランティス人はいないに等しい。存命してるアトランティス人の殆どは別の種族と交わり、それでは意味を持たない。オマケに王家の者でなければならない。ますます不可能だ。奇跡でも起きなければな。更に言えば、呪いだ。アトランティス人が原初より受けている呪いは多くの人を死へと招く。もし、アトランティスが滅びゆく姿を語ろうものなら、聞いた人も死ぬと聞く。
都市伝説の類だとは思うが、もしほんとにそうなら納得いく事がある。そうだ。既に王位についていてもおかしくない。だが、ついていないということは、その話を信じてるからだろう。あるいは、事を慎重に行動してるかだがな。だが、時間がもうない。悠長にしてると、この世界も滅ぶことになる。そうだ。この世界は持って、80年しか持たないだろう。私の見立てでは、80年後、予測のつかない事態を招くということ。それは、確定だ。
私は、サリバンからそう聞いた、
そして、響き渡る声は消えた。
ギルスタッドは、驚きを隠せなかった。
ライセルにそんな過去があったこともだが、何より80年後にはということに、だって、まさしく今がその80年後。脳に過ぎったマーリンの姿はまだ、24歳。そして、今は104歳。まずい。と焦りを隠せなかったのだ。しかし、この焦りが後に大きな災いとなる。
私は、あの日こうなることを全く予想してなかった。どうしてこうなった?私は、もうどうする事もできないのかそう全てに絶望した。時もまた、残酷で時と共に我々の輝ける遺産も壊した。そうだ。全てはここから始まった。始まりは、或る男が起こした事件。或る男は、唐突に姿を現した。そして、男は沢山の人を無差別に殺した。
合計、死傷者は、150人。
事件としては、類にみない数の多さで、歴史上でも悲惨な事件として当時はどの局でもニュースや特集で取り上げたくらいだ。
日本を飛び越え、世界にその事件は発信された。問題はそこではなかった。実は、この事件はかなり不可解な事件としても有名でもあった。警察内部からの内部告発で現行犯として逮捕された男がいたのに、すぐに釈放されていた事が発覚した事だ。
内部告発したのは検挙率が高かった優秀な公務員、いや、こう言うべきだな。園部捜査一課長が内部告発者だったのだ。彼が内部告発に踏み切ったのは、或る男を再逮捕する為だった。だが、その行為は思いの外警察にとって信用を失うきっかけとなってしまった。しかし、そんな事で信用を失うなんてこと、警察に限ってあるわけがないという慢心がまだその頃はあった。当然だ。優秀で頭のキレる園部捜査一課長が内部告発したことがマスコミ達に知られ、報道されてしまったのだから。本来、内部告発自体は上層部達は黙認していたがあくまでそれは一個人公務員の一人がと言う匿名での内部告発を黙認していたと言う事だった。
また、内部告発して泳がせる必要があったのは、実はこの事件現行犯逮捕であったが、段々調べていくうちに沢山の謎にぶち当たり、逮捕できるだけの十分な証拠や動機、人間関係も揃っていなかったからだった。問題は内部告発者が誰なのかが明るみにされてしまった事だった。当然、非難の嵐で殺到した。それがほとぼりさめるであろうと思った矢先の事だ突然中曽根渉警視総監が自宅で怪死した事件が起きた。突然の事だった。
まだ、連続無差別事件も内部告発の事も冷め切ってもなかった。そして、なぜかそれはきっかけに過ぎなかった。次は外務省の浜辺雄一大使など内閣府の長田春樹内閣総理大臣と次々に怪死したのだ。事件と言う形ではなく、全員が事故死や自殺。だが、トップばかりがこんなに死ぬとなると公安は黙ってるわけもなく、慎重に動いた。私はその時知り合いの一人が自殺をした。公安の人だった。こんだけ慎重に動いて得た情報は、支離滅裂な情報ばかり。信憑性に欠けるものばかりだった。宮城裕貴。
その名前だけが手がかりだった。この名前の情報を手に入れたのもかなり苦労した。多くの人を犠牲にした上でやっと手に入った情報だった。しかし、問題は山積みだった。
何せ、その名前だけで奴の職業も不明だったからだ。住所も全部でたらめだった。まるで、雲隠れしながら我々を嘲笑ってる様に宮城裕貴の足取りが掴めなかった。そんな時だ。奴の職業がやっとわかった。最大手のIT会社勤務。25歳だという事だ。
だが、問題は彼のそれまでの経歴が不明だと言う事。本来、戸籍があり元本が保管されてるのだが彼に関する戸籍情報が一切不明だったのだ。当然、両親のことも。出身地や出身学校も全く不明。これでは、見つけて逮捕しても状況証拠を揃えても、その気になれば確実に逃れようと思って仕舞えばまた釈放を余儀なくされる。そんな時、最初の事件とされた無差別殺人事件の写真に写った宮城裕貴と思われる男にへばりつく謎の影が写っていると話題になった。
この辺りから、かなりオカルトじみた話になっていった。オカルト系YouTuberにとっての格好のネタになった。そして、しまいには世界が終わるとまで考察するYouTuberも出てくる始末。しかし、まさかこの時ほんとにそうなるなんて誰が予想出来ただろうか。宮城裕貴と思われる男の情報は得られないまま、類似事件がアメリカ合衆国、フランス、イギリス、中国、各国で起き、そして世界的な問題へとなっていった。私は彼の消息を追って、色んな国へ行った。彼の起こした事件により綻びゆく国を見てきた。彼を恐れ、クーデター起こすものが現れたり、彼への復讐心でテロを起こす人達も現れた。世界は稀にみない大混乱へと向かっていった。
殺されるのを恐れ、逃げようと試みた各国の大臣や政治家、そして、大統領。皆、結局死んだ。もちろん次期の候補もいたがまるでさせるかと言わんばかりに候補者達も死んでいった。結局誰も、トップに立とうと思う人は出てこずこのままでは人間の時代は終わってしまうような不安感に襲われた。その不安感をよそに残酷にも現実は人間達を蝕んでいった。だが、私はやっとの思いでKGBのスパイと繋がる事が出来た。しかし、連絡取り合い、待ち合わせ場所で待機してた時だ。男の発狂と共にビルから落ちて目の前に落下した。もはや、そんな事慣れっこだった。私は、耳を当てて死にゆくそのスパイの声を聞いた。
すぐそこにいる。早く、それだけ言って絶命した。指を指したその先に路地裏があって、そこから逃げてく男がいたのを見かけ、追いかけた。
絶対に逃すものか。私は、その使命感で追いかけた。どんだけ、人を殺せば気が済むんだ。次第に、私の中に憎悪と殺意が芽生えてきた。殺してきた感情だった。だが、もう止めようがなかった。
銃を構え撃った。しかし、男の体に直撃したのにめり込んですり抜けた。と、万が一に備えて呼んでおいたアメリカ空軍の友達が軍隊を連れてやってきた。
そして、囲んだ。もう宮城裕貴も逃げ道はなかったはずだった。だが、そううまくはいかなかった。男は、フードを外し姿を現した。日本人だ。やはり、宮城裕貴。しかし、宮城裕貴はまるでこの状況を変えれるかのようにほくそ笑んでいた。宮城裕貴は、ただこう言った。「世界は終わりゆく。先祖達が犯した罪を悔いるがいい。」と、言った。この状況で言った発言に警戒をした。と、見えない何かが、次々に人を殺していく。宮城裕貴は何もしてない様子。軍人達、皆お母さんとか、おばあちゃんとか呟いて今行くね。と言って、自殺し始めたのだ。連鎖のように。友人もまた、キャスと呟いて涙を流し銃口を押し当て自殺した。
それで、私は察した。私のアメリカ空軍の友達が最後に言ったキャス、それはキャサリン。彼の娘の名前だった。怖かったのは、そのキャサリンは既に病気によって死んでいた事。そう。おそらく、宮城裕貴は死者を操れる。私もヤキが回ったようだ。まさか、私がこんな事言うとは。そして、宮城裕貴はいつのまにか私の目の前に来ていた。目を離してたわけではない。突然、目の前にいたのだ。宮城裕貴の分身?宮城裕貴が沢山私を囲んでいた。そして、まるでテレビのノイズが走るのと同じ事が目の前で起きた。宮城裕貴の体が歪んだのだ。
そして、響き渡った断末魔の男や女の声が、とても気味が悪い現象だった。気を失う前に、宮城裕貴の声ではない者の声で、ダメだ。殺すな。そいつは使える。その声が聞こえた。意識が戻ると、私は路地裏のゴミ捨て場にいた。起きて、道に出ると目の前ですごい強い光が覆った。ハッと意識を取り戻した時、私は緑豊かな丘らしき場所にいた。私はしばらく、丘を彷徨った。その先に集落があるのを見た。情報を得ようと試みたが、見た事ない人のような人ではないものが警戒しながらこちらを見ている。私はあの光で死んだのか。多分死んだのだろう。これが死後の世界かと。
なんか、切ない気分になった。これまで耐えてきたものがその瞬間爆発した。泣きながら、草をむしり取り、悔しくて枯れるほど泣いた。だが、集落の一人がカタコトの言葉でこう言った。
貴方は日本人ですね。別の世界からの転生者。ライセルより、話は聞いております。と、言ったのだ。
何がなんだか訳がわからなかった。話を聞いて、頭がパンクしそうになった。意味が分からなかった。理解できなかったのだ。アトランティスやら王族やら訳のわからない事ばかり言ってた。だから、私は困った。それに、まるでこの感じアニメで良く見る設定。そういや、転スラや盾の成り上がりなども見てたな。私はそうふけっていた。やはり、死後の世界なのだろう。そう思った。だが、目の前にいる詳しいそれは、貴方は死んでませんよ。確かに、私の話はあまりに現実的ではない。それは、貴方がこの世界の人ではないから。だけど、それが私達の常識です。だから、旅をしなさい。貴方が信じる道を進めば良いと、色々荷物を用意してくれた。どうやら、車はなく、馬がいた。
交通手段は馬か。そう思ったが、何より色々手配してくれたこの村の人達に感謝をして、私は旅をした。まずは、アヴァロンという国へ、用意してくれていた物の中にご飯もあり、それを食べて旅をした。普通に美味かった。
石に当たってこけた時も普通に痛かった。どうやら、ほんとに夢ではないようだ。アヴァロンにたどり着くと、そこにはマーリンと呼ばれる賢王が治めている国のようでそれはまるで中世ヨーロッパと酷似していた。そこに、でかい門があった。そして、言葉を失った。まるで、巨人が通るための門のように大きかった。そして、その入り口には門兵が複数いた。怪しい人だと思われ、門兵に捕まった。何語話してるのか全くわからない。必死にジェスチャーで訴えたが、ますます怪しまれてしまったようだった。荷物を奪われて、牢屋に入れられてしまった。
どうにか誤解を解きたかったがどうすることもできず、牢屋の中で寝ていた。もしかしたら、元いた場所に戻れるんじゃないかそんな淡い期待を持って寝た。だが、起こされた。衛兵が、柵を金属棒で鳴らして起こした。と、やってきた豪華な宝飾を纏ったとても若い王様。やせ細ってはいるが、貫禄のある方だった。グレートブリテンの様な雰囲気を感じる王は世はマーリン。この国の王だ。どうやら、ライセルがお主をこの世界へ導いたのだな。日本人よ。大変な思いをしたのじゃろうな。話で聞いておる。お主の様な転生者を見るのは初めてだ。済まないことをした。出してやれ。と牢屋から出して貰えた。
来賓用の客室に誘導され、私の部屋として使うよう言われた。ありがたく使わせてもらうことにした。色々、事の経緯をマーリンに話した。マーリンは、なるほど。と考え込んだ様子。そして、提案された。それなら、来賓用の客室を私の拠点にしながら、旅も続けて欲しい。そして、調べて分かった事を日記に記録として残して欲しい。そしたら、その日記をこの世界に広めようでは無いか。そしたら、何か知っている人がいるかもしれん。そう提案したのだ。それは、願ったり叶ったりだった。ただ、マーリンにとってどんなメリットがあるのだろう。私は、その代わりがあるって事ですよね?なんでしょうか?と聞くと、マーリンはいやいや、疑う気持ちも分かるが、私はライセルからある警告を受けている。近いうちにこの世界もまた終わりを迎えると。ライセルは、予言の神様であられるサリバンから聞いてるから確かな予言のはずだ。サリバンは、ミヤギユウキと言う男がその世界を狙っているというらしいのだ。そのバックには、得体の知れない者がいるらしいのだ。
私はサリバンからある話を聞いた。ライセルは、かつて、二つの世界を行き来していた魔王カースという奴の魂が今もどこかで息を潜めてると怯えている。
それもそのはず魔王カースはそもそもライセルとは実の兄弟。ライセルにとっては、兄なのだ。元々は、肉体があったらしいが滅ぼされたと聞く。その原因の一つがライセルの裏切りだったらしいのだ。ライセルはその頃まだ子供であり神様の候補として特訓生だったのだ。特訓生であったライセルは兄であった魔王カース、いや、神託のカルセルと言われた当時の主神の右腕であったカルセル。彼は、誰もが憧れる存在だった。見た目の良さも、頭脳の良さも、天使達の間ではそれこそアイドルに近い存在だったのだ。にも関わらず、彼は謙虚で決して自惚れないところもまた好かれていた。当然よく思わない神達もいた。
何故なら、当時の主神が何かあると必ず彼を呼んでいたからだ。彼はいろんな神々の無茶な要求をやり遂げてしまうところがあった。それが、また他の神達から良く思われなかった。そんな時、誰かが言い出した。
カルセルは完璧すぎる。そのうち、主神の座も彼ならやってのけるだろう。とか、あの完璧さは偽りだ。カルセルがそろそろ主神に牙を剥くだろう。
などと、カルセルの陰謀をほのめかす言葉が飛び交うようになったらしいのだ。そして、いつしか言われる様になった。カルセルは主神の命を狙ってると。当然そんなこと狙ってはなかった。主神もまた彼を疑わなかった。だが、誰かが吹き込んでからそれは始まった。彼を不安という名の影が蝕んで行った。次第に彼は周りにいるもの全てが敵に思えてきたのだ。その不安は、ついに牙を向いた。彼は最初にこの噂を流した神の1人、モルグを血祭りにあげた。更に、その行為は多くの神、天使に恐怖を与えた。これでもかと、神様をつぎつぎに殺していった。そこに終止符を与えたのは他でもないまだ神候補生だったライセル。ライセルは血を分けた兄弟として、主神から言い渡された。力を貰う代わりにカルセルの暴走を止めよ。と。彼は、苦渋の決断を迫られた。主も、残酷よ。ライセルとカルセルは血を分けた兄弟というだけではなかった。カルセルとライセルは父は同じでも、腹違いの兄弟。それも、ライセルの母は殺害され、父親であった宇宙を司る神ウーラノスは残酷にも悲しい境遇にいた産まれたばかりの自分の息子を悲しみ、苦しみ、そしてあろう事か、すててしまった。そんなライセルを見兼ねたのはウーラノスのもう1人の息子、カルセルだった。カルセルは、まだ幼い弟を育てた。だが、この時もカルセルはまだその子が自分の弟とは知らなかった。知ったのは、弟が成人した時のこと。
成人した日、弟の記憶が戻ったのだ。母の死、父の消えゆく姿、その話を聞き自分の弟と知り、彼はますますライセルを溺愛したのだ。そんな弟に兄の暴走を止めよなんて、主も酷いことをしたもんだ。彼は何も語らんよ。この話は。だって、苦渋の決断を迫られ、弟を溺愛する兄を止めたのだから。それからだ。ライセルは、名誉ある力を授かり転生を司る神となってから、彼は罪悪感からカルセルの影に怯える毎日を過ごすようになった。それが、今や怯えるを超えて兄のカルセルが復讐に来るのではないかと恐怖してる。
そして、ライセルはどういう訳かあるニホンジンを恐れてる。ミヤギユウキと言う男だ。彼は、何回もこの世界と別の世界を行き来できる。そして、彼の背後にいる得体の知れない存在、肉体のない魔王カース。ライセルはおそれてるのだ。魔王カースの事を。
無理もない。魔王カースはあらゆる物を内側から壊す禍々しい力を持つ。その魔王カースの力に触れた人間は、あらゆる歴史に災いをもたらす。アドルフ・ヒトラーという男もまた魔王カースの瘴気に触れ狂わされた。彼は次第に世界を巻き込む戦争の切り札に成り果てたのが証拠だ。魔王カースは昔と違って復活も時間の問題とされてる。防ぐことが出来るのは、光の加護より受けし失われし大国の王族の者が再び王座に就けば可能性が浮上してくる。問題は、その王様が神託を受け勇者に託す事。その勇者はかの昔オーロラという召喚士が召喚したのを最後に途絶えた。だから、現実としてそれは不可能に近い。それに、今や純粋なアトランティス人はいないに等しい。存命してるアトランティス人の殆どは別の種族と交わり、それでは意味を持たない。オマケに王家の者でなければならない。ますます不可能だ。奇跡でも起きなければな。更に言えば、呪いだ。アトランティス人が原初より受けている呪いは多くの人を死へと招く。もし、アトランティスが滅びゆく姿を語ろうものなら、聞いた人も死ぬと聞く。
都市伝説の類だとは思うが、もしほんとにそうなら納得いく事がある。そうだ。既に王位についていてもおかしくない。だが、ついていないということは、その話を信じてるからだろう。あるいは、事を慎重に行動してるかだがな。だが、時間がもうない。悠長にしてると、この世界も滅ぶことになる。そうだ。この世界は持って、80年しか持たないだろう。私の見立てでは、80年後、予測のつかない事態を招くということ。それは、確定だ。
私は、サリバンからそう聞いた、
そして、響き渡る声は消えた。
ギルスタッドは、驚きを隠せなかった。
ライセルにそんな過去があったこともだが、何より80年後にはということに、だって、まさしく今がその80年後。脳に過ぎったマーリンの姿はまだ、24歳。そして、今は104歳。まずい。と焦りを隠せなかったのだ。しかし、この焦りが後に大きな災いとなる。
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