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本編
見たら分かんだろ!
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ドラゴンが甘えるように鳴いて、俺から離れていく。
そして驚いたことに。
ピョコピョコと大きな怪物の元へと走っていった。
「あ、危な......! く、なさそうだな......?」
ドラゴンの顔に、怪物の顔がゆっくりと近づく。
鼻先で優しく小さな体を撫でるのを見てると、なんとなく寝る前の母さんを思い出した。
目を丸くしている俺に、足元から再び怒鳴り声が飛んでくる。
「ドラゴンの子どもに触るなんて、どういう教育受けてんだテメェは! 常識ねぇのか!!」
「親子ってことか!?」
「見たら分かんだろ!!」
いつの間にか俺の近くに移動してきていた犬は、牙を剥き出しにして、全身の毛を逆立てている。
それにしたって、言ってることが無茶すぎる。
「そんなの分かるわけ……、あ……」
反論しかけて、俺は言葉を止めた。
俺は改めて、目の前の怪物を観察してみる。
固そうな鱗に覆われた漆黒の体、蝙蝠のような光沢のある羽根。
雷みたいに曲がったツノは、先っぽが赤くて根元が黒いグラデーション。
そして深紅のキラキラとした瞳。
命からがら逃げていたから気がつかなった。
どう見ても、あの小さいドラゴンとそっくりだ。
成長したら、そのままの姿になることだろう。
「子どもを連れ去られたと思ってテメェを追いかけてたんだよ......って」
犬が何かガミガミと言ってきていたが、俺はスルーしてドラゴンの親子の方へと走った。
親ドラゴンにビシッと人差し指を突きつけてやる。といっても、怖いから2メートルくらい離れてるけど、ご愛敬だ。
「お前なー! こいつ高いとこから降りられなくなってたぞ! 気をつけてやれよ!」
子どものドラゴンが助けを求めてるみたいだったから、俺は助けようとしただけだ。
あんなに恐ろしい勢いで追いかけられる筋合いはない。
でも、ドラゴンが何か反応をする前に、俺は強く尻もちをついた。
突然の衝撃に混乱していると、腹のゴムが食い込んでくる。
犬がパジャマのズボンの尻あたりに噛みついて、無理やり引っ張っているのだ。
「何すんだよ!」
ズルズルと後ろに引きずられて尻が摩擦される。
地味に痛い。
文句の声を上げると、その百倍の剣幕で怒鳴り返された。
「テメェ近づくなっつってんだろ! それは高いところに子どもを隠してたんだっての!」
目からうろこだ。
「そうだったのか、なるほどー!」
野生動物が、まだ弱い子どもを分かりにくいところに隠す話を図鑑で読んだことがある気がする。
この黒いドラゴンは、餌をとりに行ったり、天敵と戦ったりとかで離れる必要があったんだろう。
ドラゴンに天敵なんているのかは知らないけれど。
とにかく納得した俺はパチンと両手のひらを合わせて、もう襲ってくる様子もないドラゴンの親子に頭を下げた。
「俺が悪かった!ごめん!」
すると。
「キュー!」
挨拶するみたいに、小さいドラゴンは羽を広げて鳴いた。
なんだか楽しそうに弾んだ声に感じるのは、俺の気のせいではないと思う。
再び犬に引き摺られながらゆっくりと離れていく俺の方を、親ドラゴンも落ち着いた様子で見ていた。
そして驚いたことに。
ピョコピョコと大きな怪物の元へと走っていった。
「あ、危な......! く、なさそうだな......?」
ドラゴンの顔に、怪物の顔がゆっくりと近づく。
鼻先で優しく小さな体を撫でるのを見てると、なんとなく寝る前の母さんを思い出した。
目を丸くしている俺に、足元から再び怒鳴り声が飛んでくる。
「ドラゴンの子どもに触るなんて、どういう教育受けてんだテメェは! 常識ねぇのか!!」
「親子ってことか!?」
「見たら分かんだろ!!」
いつの間にか俺の近くに移動してきていた犬は、牙を剥き出しにして、全身の毛を逆立てている。
それにしたって、言ってることが無茶すぎる。
「そんなの分かるわけ……、あ……」
反論しかけて、俺は言葉を止めた。
俺は改めて、目の前の怪物を観察してみる。
固そうな鱗に覆われた漆黒の体、蝙蝠のような光沢のある羽根。
雷みたいに曲がったツノは、先っぽが赤くて根元が黒いグラデーション。
そして深紅のキラキラとした瞳。
命からがら逃げていたから気がつかなった。
どう見ても、あの小さいドラゴンとそっくりだ。
成長したら、そのままの姿になることだろう。
「子どもを連れ去られたと思ってテメェを追いかけてたんだよ......って」
犬が何かガミガミと言ってきていたが、俺はスルーしてドラゴンの親子の方へと走った。
親ドラゴンにビシッと人差し指を突きつけてやる。といっても、怖いから2メートルくらい離れてるけど、ご愛敬だ。
「お前なー! こいつ高いとこから降りられなくなってたぞ! 気をつけてやれよ!」
子どものドラゴンが助けを求めてるみたいだったから、俺は助けようとしただけだ。
あんなに恐ろしい勢いで追いかけられる筋合いはない。
でも、ドラゴンが何か反応をする前に、俺は強く尻もちをついた。
突然の衝撃に混乱していると、腹のゴムが食い込んでくる。
犬がパジャマのズボンの尻あたりに噛みついて、無理やり引っ張っているのだ。
「何すんだよ!」
ズルズルと後ろに引きずられて尻が摩擦される。
地味に痛い。
文句の声を上げると、その百倍の剣幕で怒鳴り返された。
「テメェ近づくなっつってんだろ! それは高いところに子どもを隠してたんだっての!」
目からうろこだ。
「そうだったのか、なるほどー!」
野生動物が、まだ弱い子どもを分かりにくいところに隠す話を図鑑で読んだことがある気がする。
この黒いドラゴンは、餌をとりに行ったり、天敵と戦ったりとかで離れる必要があったんだろう。
ドラゴンに天敵なんているのかは知らないけれど。
とにかく納得した俺はパチンと両手のひらを合わせて、もう襲ってくる様子もないドラゴンの親子に頭を下げた。
「俺が悪かった!ごめん!」
すると。
「キュー!」
挨拶するみたいに、小さいドラゴンは羽を広げて鳴いた。
なんだか楽しそうに弾んだ声に感じるのは、俺の気のせいではないと思う。
再び犬に引き摺られながらゆっくりと離れていく俺の方を、親ドラゴンも落ち着いた様子で見ていた。
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