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横山健二①
13:なんだって~?
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「94番の札をお持ちの方は3番の診察室へお入りください。」
今日も病院の中は慌しく、整形外科も患者さんが多かった。
心なしか普段は土曜日にはあまり見ない年配の方が多かった。
健二は診察室の引き戸のドアを軽くノックし数秒待ってみた。
が、やはり今日もドアがスライドすることはなさそうだった。
「お願いします・・・」
自分でスライドさせながら診察室に入った。
「こんにちは。・・・なんか疲れてそうね?」
がっかりしている健二の顔を見るなり、女医さんが言った。
「えぇ・・・まぁ。」
と言いながら女医さんの後ろに立っている看護婦さんを見て、また少しため息をついた。
勿論、気付かれないようにだ。
「だいぶリハビリの様子も良さそうだけど、出来れば激しい運動はもう少し我慢したほうが良いと思うわね。」
「そうですか・・・」
「今無理をしてもね。」
「はい・・・」
「もう大きな大会も終わったのでしょう?」
「はい・・・でも、屋内なので冬にもあるんですよ。」
「そう・・・」
女医さんはカルテとレントゲンを見ながら話している。
でも健二は今日も心ここにあらず状態だった。
あの体育館以来、このみがこの病院にいないため会えないでいるのだ。
勿論連絡先も分からないまま。
女医さんは更にレントゲンを眺めながら、ちらっと健二を見た。
よほどかわいそうに思ったのだろう、
「ただ・・・今日のレントゲンの様子では・・・う~ん・・・・・そうねぇ・・・・・そろそろ部活動に顔を出すくらいなら・・・良いとも思うわ。」
「そうなんですか!」
健二は思いがけない言葉に、ちょっと戸惑いながらも女医さんを一気に見つめて言った。
「やっぱり辛かったのね。」
女医さんはにっこり笑って言った。
(違うんです・・・)
「若いから治りも早いけど、急激に動いてはだめよ。・・・あくまでもリハビリ程度でね。」
「はい。」
(え~と・・・・・何か折角だから・・・・・聞いちゃえ!!)
ちょっとした気分の高揚に便乗して、聞いてみる事にした。
「あの・・・・・」
「何でしょう?」
女医さんは次の言葉を待ったが、何故か健二は俯いて一人でぶつぶつ呟いている。
「??」
(とは言っても・・・やっぱりおかしいよなぁ?・・・・・)
「??」
(ええ~い!!)
「あの~?」
「はい?」
「とりあえず、わかりました。」
「そ、そう・・・良かったわ。」
少し構えていた女医さんの気がほぐれたのを見計らって、
「あっ、そういえば。」
何故か棒読みの台詞みたいな話方になりながら、
「最近、このみさんはお手伝いに来ないんですか?」
「あぁ~・・・・このみね。・・・・・あの子は・・・」
女医さんは健二のカルテをファイルに戻しながら後ろを向いて、それを看護婦に渡した。
「ど、どうかしたんですか?」
何かあったのかと健二は思ってしまった。
すると振り返った瞬間に少し笑いながら言った。
「何だか、気になる相手に会いたくて書店でバイトを始めたのよ!!」
「はっ?」
(な、なに~!!)
放心状態の健二をそっちのけで女医さんは話した。
「全く若いって良いわね。
私も思えばガンガン行くタイプだけど、このみもとはねぇ・・・
とは言っても、何だか女子高の先輩の書店で、ほら、メガマートの所にある書店よ。
父親がこの病院以外でバイトなんか駄目だって息巻いていたけど、可愛い子には色々経験も大切よね。
それで、とりあえず私が後押しして働かせてみることにしたの。
あ、そうそう・・・・しばらく前までは健二君のことやたら聞いてきたことがあったから気があるかと思ってたんだけど・・・どうやら違ったのかしらねぇ。」
「はぁ・・・」
途中から健二はボーっとしたまま立ち上がっていた。
「じゃあ、ありがとうございました。」
軽くお辞儀をして立ち去ろうとする健二に、
「あっ、これ、受付に出してね。」
と女医さんは会計用のファイルを渡した。
診察室を出た健二は、部活に顔を出せる喜びと、このみに好きな人が出来たようだという悲しみで胸の中はぐちゃぐちゃだった。
今日も病院の中は慌しく、整形外科も患者さんが多かった。
心なしか普段は土曜日にはあまり見ない年配の方が多かった。
健二は診察室の引き戸のドアを軽くノックし数秒待ってみた。
が、やはり今日もドアがスライドすることはなさそうだった。
「お願いします・・・」
自分でスライドさせながら診察室に入った。
「こんにちは。・・・なんか疲れてそうね?」
がっかりしている健二の顔を見るなり、女医さんが言った。
「えぇ・・・まぁ。」
と言いながら女医さんの後ろに立っている看護婦さんを見て、また少しため息をついた。
勿論、気付かれないようにだ。
「だいぶリハビリの様子も良さそうだけど、出来れば激しい運動はもう少し我慢したほうが良いと思うわね。」
「そうですか・・・」
「今無理をしてもね。」
「はい・・・」
「もう大きな大会も終わったのでしょう?」
「はい・・・でも、屋内なので冬にもあるんですよ。」
「そう・・・」
女医さんはカルテとレントゲンを見ながら話している。
でも健二は今日も心ここにあらず状態だった。
あの体育館以来、このみがこの病院にいないため会えないでいるのだ。
勿論連絡先も分からないまま。
女医さんは更にレントゲンを眺めながら、ちらっと健二を見た。
よほどかわいそうに思ったのだろう、
「ただ・・・今日のレントゲンの様子では・・・う~ん・・・・・そうねぇ・・・・・そろそろ部活動に顔を出すくらいなら・・・良いとも思うわ。」
「そうなんですか!」
健二は思いがけない言葉に、ちょっと戸惑いながらも女医さんを一気に見つめて言った。
「やっぱり辛かったのね。」
女医さんはにっこり笑って言った。
(違うんです・・・)
「若いから治りも早いけど、急激に動いてはだめよ。・・・あくまでもリハビリ程度でね。」
「はい。」
(え~と・・・・・何か折角だから・・・・・聞いちゃえ!!)
ちょっとした気分の高揚に便乗して、聞いてみる事にした。
「あの・・・・・」
「何でしょう?」
女医さんは次の言葉を待ったが、何故か健二は俯いて一人でぶつぶつ呟いている。
「??」
(とは言っても・・・やっぱりおかしいよなぁ?・・・・・)
「??」
(ええ~い!!)
「あの~?」
「はい?」
「とりあえず、わかりました。」
「そ、そう・・・良かったわ。」
少し構えていた女医さんの気がほぐれたのを見計らって、
「あっ、そういえば。」
何故か棒読みの台詞みたいな話方になりながら、
「最近、このみさんはお手伝いに来ないんですか?」
「あぁ~・・・・このみね。・・・・・あの子は・・・」
女医さんは健二のカルテをファイルに戻しながら後ろを向いて、それを看護婦に渡した。
「ど、どうかしたんですか?」
何かあったのかと健二は思ってしまった。
すると振り返った瞬間に少し笑いながら言った。
「何だか、気になる相手に会いたくて書店でバイトを始めたのよ!!」
「はっ?」
(な、なに~!!)
放心状態の健二をそっちのけで女医さんは話した。
「全く若いって良いわね。
私も思えばガンガン行くタイプだけど、このみもとはねぇ・・・
とは言っても、何だか女子高の先輩の書店で、ほら、メガマートの所にある書店よ。
父親がこの病院以外でバイトなんか駄目だって息巻いていたけど、可愛い子には色々経験も大切よね。
それで、とりあえず私が後押しして働かせてみることにしたの。
あ、そうそう・・・・しばらく前までは健二君のことやたら聞いてきたことがあったから気があるかと思ってたんだけど・・・どうやら違ったのかしらねぇ。」
「はぁ・・・」
途中から健二はボーっとしたまま立ち上がっていた。
「じゃあ、ありがとうございました。」
軽くお辞儀をして立ち去ろうとする健二に、
「あっ、これ、受付に出してね。」
と女医さんは会計用のファイルを渡した。
診察室を出た健二は、部活に顔を出せる喜びと、このみに好きな人が出来たようだという悲しみで胸の中はぐちゃぐちゃだった。
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