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横山健二①
11:大会日
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(あれ?・・・来れなくなったのかな?)
総合体育館にかかっている大時計は10時15分になっていた。
(まさか・・・・・もっと早くに来て僕が居なかったから帰っちゃったのかな?)
そうは言っても健二は9時前からここに立っていた。
開会式も終わり早速第一試合が始まるアナウンスが聞こえてきた。
今日は団体戦のみで、明日からペア・個人戦だ。
どちらかと言えば明日からの方が応援のし甲斐があるのだが、正直健二の気持ちとしてはまともに試合を見られる心境ではなった。
(いかに、印象良く楽しい話題を振れるかのみ!!)
夕べネットで調べた『女の子と仲良くなれる会話法』や『スマートな会話で素敵なあの子をGET!!』なる文献を隅々まで読み倒した結果、4時間ほどしか寝られなかったが頭の中は冴えていた。
(自分の事も多少入れつつも、基本は聞き上手になって色々話をしてもらおう!!)
「ねぇねぇ、あそこに座っている男の子、割とカッコよくない?」
「え?どこ・・・・・ん・・・・・あの、なんかニヤニヤしてる子?」
「あ・・・うん・・・・・なんか違った。・・・・・早く行こ!」
っていう感じで健二の前を数人の女の子達が通っていく中、
「ごめんね!待った?」
ちょっと息を切らせた感じでこのみが駆け寄ってきた。
「あっ、おはよう!!・・・全然待ってないよ!」
「本当に?・・・・ハァハァ・・・・・ごめんね・・・・・駐車場が混んでたの・・・」
「車で来たの?」
「うん・・・ハァハァ・・・・・」
健二はキョロキョロとしながら、
「お、お父さんか誰か?」
「ハァハァ・・・・・いえ・・・・・運転手・・・」
(運転手!!・・・あ、そうか・・・・・お嬢様なんだよな・・・)
「一緒じゃないの?」
「えぇ・・・お昼に迎えに戻ってくるみたいだから。」
「そっか。」
(お昼までか・・・・・まぁ、今日は連絡先さえ聞ければいいか!!)
「じゃあ、中に入ろうか?」
「うん。」
このみもちょっと息が落ち着いてきたようなので健二はそう言って立ち上がった。
「この辺がいいんじゃないかな?」
「こんな遠くでいいの?」
「あんまり近くにいるとみんな気が散るだろうし・・・」
「そう・・・」
健二はあえて3階席の中段で、しかもAコート側を選んだ。
国立高校の試合はCコートだということは調査済みで。
(まずは褒めるんだっけ・・・・・褒める・・・・・)
早速健二はマニュアル通り、待ち合わせにやってきた女の子の攻略から入ろうと思った。
(褒める、褒める・・・・・私服も可愛いし、髪型も・・・フフ)
「な~に?・・・・・なんかおかしい?」
このみが怪訝そうな顔で健二を見ながら言った。
「いや、ごめんなさい・・・・・その・・・・・・・・・・」
「何?」
「し、し、しほくがきゃわれ・・・・」
(いかんいかん、何をてんぱっているんだ!!)
このみが少し覗き込むものだから、鼓動が物凄い速さで鳴り出した。
一旦落ち着いて深呼吸をしてから、
「このみさんって、私服が可愛いんですね。」
と笑顔を作って言った。
「それって・・・・・ナース姿が似合わないって事?」
「えっ?」
思っていた返事じゃなくて健二は又戸惑ってしまった。
「いえ、そうじゃなくて、僕が言いたいのは、そのフリフリが・・・」
「年甲斐もなく少女っぽいって言いたいのかしら!」
このみはぷいっと会場のほうに目を向けてしまった。
(あれ~??言い方がおかしかったのか??)
「そうじゃなくて・・・」
「それより、横山さんのチームメイトはどちらに?」
「えっ・・・・・あ~、えっと・・・・・」
わざとキョロキョロして見せてから、
「あ~、あそこかな?・・・・・一番向こう端。」
「そうなの。・・・・・じゃあ、あっちの方へ行く?」
確かに会場は満員って訳ではないので今からでもCコート側には容易に座れそうだった。
「いや、本当にみんなの気が散るといけないから、ここでいいよ。」
「そう・・・・・」
このみは少し何かを考えているようだ。
(やばいなぁ・・・失敗しちゃったよ・・・・・)
健二も挽回するために何か話題を、と考えたが、褒める作業は2回続けてはいけない、という教訓を思い出した。
(え~、とにかく次のステップとしては・・・・・・そうだ!!)
「今日は天気が良くて良かったね!」
「えっ・・・・・そうね・・・・・雨よりはいいよね。」
そっけなく帰ってきた。
(体育館だからあんまり関係なかったか・・・・・)
「ねぇねぇ、もう試合始まってるの?」
Aコートでは試合前のウォーミングアップが始まっていた。
「いや、試合前の準備運動みたいなものだよ。」
「そうなんだ。」
このみは少し前のめりして見ている。
「スポーツ好きなの?」
「いえ、するのは勿論、見るのも苦手。」
(えっ!!じゃあ・・・・・)
「あっ、でもね・・・・・リハビリの時に横山さんがバドミントンのこと色々教えてくれたから、最初に知識があって見るなら楽しいんじゃないかと思って。」
「そう・・・・・ありがとう。」
さらっと言葉が出た。
「いやですわ、お礼なんて・・・・・それより、今日はもっと教えてね!」
「はい!!」
健二は余計な事は考えないできちんと説明にまわろう、と決心した。
(ここで親しくなれれば、又次があるさ!!)
そんなことも考えながら、Aコート第1試合を楽しく解説した。
バドミントンの話であれば健二もテンパることもなく、しかも途中で軽いジョークも交えながら会話が出来た。
このみも楽しそうだ。
そして、Aコートの第1試合が終わると、
「じゃあ私、お花摘みに行ってきますわ。」
「あ、う。うん。」
(そんな表現する子って本当にいたんだ!!)
改めてお嬢様を認識する健二であった。
総合体育館にかかっている大時計は10時15分になっていた。
(まさか・・・・・もっと早くに来て僕が居なかったから帰っちゃったのかな?)
そうは言っても健二は9時前からここに立っていた。
開会式も終わり早速第一試合が始まるアナウンスが聞こえてきた。
今日は団体戦のみで、明日からペア・個人戦だ。
どちらかと言えば明日からの方が応援のし甲斐があるのだが、正直健二の気持ちとしてはまともに試合を見られる心境ではなった。
(いかに、印象良く楽しい話題を振れるかのみ!!)
夕べネットで調べた『女の子と仲良くなれる会話法』や『スマートな会話で素敵なあの子をGET!!』なる文献を隅々まで読み倒した結果、4時間ほどしか寝られなかったが頭の中は冴えていた。
(自分の事も多少入れつつも、基本は聞き上手になって色々話をしてもらおう!!)
「ねぇねぇ、あそこに座っている男の子、割とカッコよくない?」
「え?どこ・・・・・ん・・・・・あの、なんかニヤニヤしてる子?」
「あ・・・うん・・・・・なんか違った。・・・・・早く行こ!」
っていう感じで健二の前を数人の女の子達が通っていく中、
「ごめんね!待った?」
ちょっと息を切らせた感じでこのみが駆け寄ってきた。
「あっ、おはよう!!・・・全然待ってないよ!」
「本当に?・・・・ハァハァ・・・・・ごめんね・・・・・駐車場が混んでたの・・・」
「車で来たの?」
「うん・・・ハァハァ・・・・・」
健二はキョロキョロとしながら、
「お、お父さんか誰か?」
「ハァハァ・・・・・いえ・・・・・運転手・・・」
(運転手!!・・・あ、そうか・・・・・お嬢様なんだよな・・・)
「一緒じゃないの?」
「えぇ・・・お昼に迎えに戻ってくるみたいだから。」
「そっか。」
(お昼までか・・・・・まぁ、今日は連絡先さえ聞ければいいか!!)
「じゃあ、中に入ろうか?」
「うん。」
このみもちょっと息が落ち着いてきたようなので健二はそう言って立ち上がった。
「この辺がいいんじゃないかな?」
「こんな遠くでいいの?」
「あんまり近くにいるとみんな気が散るだろうし・・・」
「そう・・・」
健二はあえて3階席の中段で、しかもAコート側を選んだ。
国立高校の試合はCコートだということは調査済みで。
(まずは褒めるんだっけ・・・・・褒める・・・・・)
早速健二はマニュアル通り、待ち合わせにやってきた女の子の攻略から入ろうと思った。
(褒める、褒める・・・・・私服も可愛いし、髪型も・・・フフ)
「な~に?・・・・・なんかおかしい?」
このみが怪訝そうな顔で健二を見ながら言った。
「いや、ごめんなさい・・・・・その・・・・・・・・・・」
「何?」
「し、し、しほくがきゃわれ・・・・」
(いかんいかん、何をてんぱっているんだ!!)
このみが少し覗き込むものだから、鼓動が物凄い速さで鳴り出した。
一旦落ち着いて深呼吸をしてから、
「このみさんって、私服が可愛いんですね。」
と笑顔を作って言った。
「それって・・・・・ナース姿が似合わないって事?」
「えっ?」
思っていた返事じゃなくて健二は又戸惑ってしまった。
「いえ、そうじゃなくて、僕が言いたいのは、そのフリフリが・・・」
「年甲斐もなく少女っぽいって言いたいのかしら!」
このみはぷいっと会場のほうに目を向けてしまった。
(あれ~??言い方がおかしかったのか??)
「そうじゃなくて・・・」
「それより、横山さんのチームメイトはどちらに?」
「えっ・・・・・あ~、えっと・・・・・」
わざとキョロキョロして見せてから、
「あ~、あそこかな?・・・・・一番向こう端。」
「そうなの。・・・・・じゃあ、あっちの方へ行く?」
確かに会場は満員って訳ではないので今からでもCコート側には容易に座れそうだった。
「いや、本当にみんなの気が散るといけないから、ここでいいよ。」
「そう・・・・・」
このみは少し何かを考えているようだ。
(やばいなぁ・・・失敗しちゃったよ・・・・・)
健二も挽回するために何か話題を、と考えたが、褒める作業は2回続けてはいけない、という教訓を思い出した。
(え~、とにかく次のステップとしては・・・・・・そうだ!!)
「今日は天気が良くて良かったね!」
「えっ・・・・・そうね・・・・・雨よりはいいよね。」
そっけなく帰ってきた。
(体育館だからあんまり関係なかったか・・・・・)
「ねぇねぇ、もう試合始まってるの?」
Aコートでは試合前のウォーミングアップが始まっていた。
「いや、試合前の準備運動みたいなものだよ。」
「そうなんだ。」
このみは少し前のめりして見ている。
「スポーツ好きなの?」
「いえ、するのは勿論、見るのも苦手。」
(えっ!!じゃあ・・・・・)
「あっ、でもね・・・・・リハビリの時に横山さんがバドミントンのこと色々教えてくれたから、最初に知識があって見るなら楽しいんじゃないかと思って。」
「そう・・・・・ありがとう。」
さらっと言葉が出た。
「いやですわ、お礼なんて・・・・・それより、今日はもっと教えてね!」
「はい!!」
健二は余計な事は考えないできちんと説明にまわろう、と決心した。
(ここで親しくなれれば、又次があるさ!!)
そんなことも考えながら、Aコート第1試合を楽しく解説した。
バドミントンの話であれば健二もテンパることもなく、しかも途中で軽いジョークも交えながら会話が出来た。
このみも楽しそうだ。
そして、Aコートの第1試合が終わると、
「じゃあ私、お花摘みに行ってきますわ。」
「あ、う。うん。」
(そんな表現する子って本当にいたんだ!!)
改めてお嬢様を認識する健二であった。
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