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横山健二①
1:スマッシュ
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「ナイスコー!!」
「いいぞ~!一本!!」
部員達の厚い声援が続く中、健二と勝は目を合わせた。
サービス件は依然、健二が握っていた。
21-19、18-21と互いに1マッチずつ取り、ファイナルマッチも17-14と優勢だった。
すでにこれまでの組は負けており、この横山健二・田口勝ペアに期待がかかっていた。
たかが練習試合といえど全敗するのは悔しい部員達は必死になってこの二人を応援していた。
1年生マネージャーの紫吹楓も、胸のところで両手をぎゅっと握り締め健二を見つめている。
(先輩・・・頑張って!!頑張って!!)
心の中で何度も叫んでいるが、声には出来ない。
「一本!!もう一本!!」
部長の掛け声の後、体育館はシーンとなった。
健二は、
「はいっ!!」
と大きく声を出しサーブを打った。
すぐさま勝も、
「いっぽん!!」
と叫んだ。
相手は東村山高校で何度もダブルス優勝を決めている酒井・吉村だ。
彼らも2年生コンビだが中学時代からすでにペアを組んでいたようで、昔から名前は知られていた。
健二たちの通うここ国立高校は文武両道を謳う名門の進学校である。
主だった校則は無く自由主義だが、生徒全員必ず部活に参加となっている。
中学時代は勉学に励み部活をしていなかった健二も、昔母親がバドミントンをやっていて子供の頃にみんなでやったことがあるから、程度の気持ちで入部したのだった。
国立高校バドミントン部も、これまでに名高い大会に出場できた事は無いようだったのでそれほど厳しいものでもないだろうと高をくくったのである。
が、昨年から顧問となった香先生にそのセンスを見抜かれ、特別メニューを課せられ続けた。
それもいつしか、元々これと決めたら一直線タイプの健二と今でもママさんバドミントン部で活躍していた母との楽しい特訓へと変わっていった。
そのおかげもあり2年生になった健二はもはや国立バド部の実質的なエースと成長していた。
その力を本人にも周りにも気付かせるために香が組んだカードなのだ。
実際、東村山高校バドミントン部の部員達も酒井・吉村ペアが大会では無名校の相手に1マッチ取られるなんて事は見た事が無かった。
格下の奴等に負けてなるものかと油断せずにがんがんストレートで勝ってきた中訪れた、余裕で見ていられる最後の試合なはずだった。
20-17でラリーが続く中、
(今日は勝の左右の揺さ振りが切れてる)
健二はショートサービスライン奥でシャトルを読み続けた。
(浮かさせてしまえば・・・・・健二のスマッシュは返せないだろう)
勝は何とかネット際に浮かせようとバックバウンダリーラインぎりぎりの左右にロブを打ち込んだ。
シュバッ!!
シュバッ!!
と音が響く中、勝は左端からネット際左にドロップを落とす。
健二も少し左に寄る。
これを読んでいたように酒井が先回りし右側奥へとドリブンクリアを入れる。
(やばい!読まれてた!)
勝は反応できない。
誰もが無理だと思ったシャトルの軌道に健二は斜め後ろに軽くジャンプをしてスマッシュした。
カーン!!
甲高いシャトル音とともに右サイドラインぎりぎりに入る。
一瞬静まり返った館内がどよめいた。
「ナイッショー!!」
「ナイッショー!!」
「すげ~!!どんだけ飛んだ~!!」
「健二先輩、かっこい~!!」
相手ペアも何だそりゃと言わんばかりに不快そうに健二を見つめた。
この試合始まる前までは冷静沈着に指導していた相手の顧問も思いっきりソワソワしていた。
香先生は相手顧問と目を合わせた瞬間、握った右手を大きく上げ人差し指を伸ばした。
後で知った話ではこの二人はこの練習試合でその夜の呑み代を賭けていたらしい。
勿論、バド無名校の国立高校に対しては、
「もし一勝でもあげることが出来たら負けでいいわ!!」
と言って来たらしい。
昔から因縁の相手であるらしい相手顧問に勝った香は、
「よし、横山と田口を胴上げだ~!!」
と叫び、体育館内はしばしお祭り状態であった。
ただ健二は2マッチ目から感じていた右肘の痛みを気にしていた。
「いいぞ~!一本!!」
部員達の厚い声援が続く中、健二と勝は目を合わせた。
サービス件は依然、健二が握っていた。
21-19、18-21と互いに1マッチずつ取り、ファイナルマッチも17-14と優勢だった。
すでにこれまでの組は負けており、この横山健二・田口勝ペアに期待がかかっていた。
たかが練習試合といえど全敗するのは悔しい部員達は必死になってこの二人を応援していた。
1年生マネージャーの紫吹楓も、胸のところで両手をぎゅっと握り締め健二を見つめている。
(先輩・・・頑張って!!頑張って!!)
心の中で何度も叫んでいるが、声には出来ない。
「一本!!もう一本!!」
部長の掛け声の後、体育館はシーンとなった。
健二は、
「はいっ!!」
と大きく声を出しサーブを打った。
すぐさま勝も、
「いっぽん!!」
と叫んだ。
相手は東村山高校で何度もダブルス優勝を決めている酒井・吉村だ。
彼らも2年生コンビだが中学時代からすでにペアを組んでいたようで、昔から名前は知られていた。
健二たちの通うここ国立高校は文武両道を謳う名門の進学校である。
主だった校則は無く自由主義だが、生徒全員必ず部活に参加となっている。
中学時代は勉学に励み部活をしていなかった健二も、昔母親がバドミントンをやっていて子供の頃にみんなでやったことがあるから、程度の気持ちで入部したのだった。
国立高校バドミントン部も、これまでに名高い大会に出場できた事は無いようだったのでそれほど厳しいものでもないだろうと高をくくったのである。
が、昨年から顧問となった香先生にそのセンスを見抜かれ、特別メニューを課せられ続けた。
それもいつしか、元々これと決めたら一直線タイプの健二と今でもママさんバドミントン部で活躍していた母との楽しい特訓へと変わっていった。
そのおかげもあり2年生になった健二はもはや国立バド部の実質的なエースと成長していた。
その力を本人にも周りにも気付かせるために香が組んだカードなのだ。
実際、東村山高校バドミントン部の部員達も酒井・吉村ペアが大会では無名校の相手に1マッチ取られるなんて事は見た事が無かった。
格下の奴等に負けてなるものかと油断せずにがんがんストレートで勝ってきた中訪れた、余裕で見ていられる最後の試合なはずだった。
20-17でラリーが続く中、
(今日は勝の左右の揺さ振りが切れてる)
健二はショートサービスライン奥でシャトルを読み続けた。
(浮かさせてしまえば・・・・・健二のスマッシュは返せないだろう)
勝は何とかネット際に浮かせようとバックバウンダリーラインぎりぎりの左右にロブを打ち込んだ。
シュバッ!!
シュバッ!!
と音が響く中、勝は左端からネット際左にドロップを落とす。
健二も少し左に寄る。
これを読んでいたように酒井が先回りし右側奥へとドリブンクリアを入れる。
(やばい!読まれてた!)
勝は反応できない。
誰もが無理だと思ったシャトルの軌道に健二は斜め後ろに軽くジャンプをしてスマッシュした。
カーン!!
甲高いシャトル音とともに右サイドラインぎりぎりに入る。
一瞬静まり返った館内がどよめいた。
「ナイッショー!!」
「ナイッショー!!」
「すげ~!!どんだけ飛んだ~!!」
「健二先輩、かっこい~!!」
相手ペアも何だそりゃと言わんばかりに不快そうに健二を見つめた。
この試合始まる前までは冷静沈着に指導していた相手の顧問も思いっきりソワソワしていた。
香先生は相手顧問と目を合わせた瞬間、握った右手を大きく上げ人差し指を伸ばした。
後で知った話ではこの二人はこの練習試合でその夜の呑み代を賭けていたらしい。
勿論、バド無名校の国立高校に対しては、
「もし一勝でもあげることが出来たら負けでいいわ!!」
と言って来たらしい。
昔から因縁の相手であるらしい相手顧問に勝った香は、
「よし、横山と田口を胴上げだ~!!」
と叫び、体育館内はしばしお祭り状態であった。
ただ健二は2マッチ目から感じていた右肘の痛みを気にしていた。
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