恋模様

naomikoryo

文字の大きさ
上 下
106 / 120
横山健二①

1:スマッシュ

しおりを挟む
「ナイスコー!!」
「いいぞ~!一本!!」

部員達の厚い声援が続く中、健二と勝は目を合わせた。
サービス件は依然、健二が握っていた。
21-19、18-21と互いに1マッチずつ取り、ファイナルマッチも17-14と優勢だった。
すでにこれまでの組は負けており、この横山健二・田口勝ペアに期待がかかっていた。
たかが練習試合といえど全敗するのは悔しい部員達は必死になってこの二人を応援していた。
1年生マネージャーの紫吹楓も、胸のところで両手をぎゅっと握り締め健二を見つめている。
(先輩・・・頑張って!!頑張って!!)
心の中で何度も叫んでいるが、声には出来ない。

「一本!!もう一本!!」
部長の掛け声の後、体育館はシーンとなった。
健二は、
「はいっ!!」
と大きく声を出しサーブを打った。
すぐさま勝も、
「いっぽん!!」
と叫んだ。

相手は東村山高校で何度もダブルス優勝を決めている酒井・吉村だ。
彼らも2年生コンビだが中学時代からすでにペアを組んでいたようで、昔から名前は知られていた。
健二たちの通うここ国立高校は文武両道を謳う名門の進学校である。
主だった校則は無く自由主義だが、生徒全員必ず部活に参加となっている。
中学時代は勉学に励み部活をしていなかった健二も、昔母親がバドミントンをやっていて子供の頃にみんなでやったことがあるから、程度の気持ちで入部したのだった。
国立高校バドミントン部も、これまでに名高い大会に出場できた事は無いようだったのでそれほど厳しいものでもないだろうと高をくくったのである。
が、昨年から顧問となった香先生にそのセンスを見抜かれ、特別メニューを課せられ続けた。
それもいつしか、元々これと決めたら一直線タイプの健二と今でもママさんバドミントン部で活躍していた母との楽しい特訓へと変わっていった。
そのおかげもあり2年生になった健二はもはや国立バド部の実質的なエースと成長していた。
その力を本人にも周りにも気付かせるために香が組んだカードなのだ。
実際、東村山高校バドミントン部の部員達も酒井・吉村ペアが大会では無名校の相手に1マッチ取られるなんて事は見た事が無かった。
格下の奴等に負けてなるものかと油断せずにがんがんストレートで勝ってきた中訪れた、余裕で見ていられる最後の試合なはずだった。

20-17でラリーが続く中、
(今日は勝の左右の揺さ振りが切れてる)
健二はショートサービスライン奥でシャトルを読み続けた。
(浮かさせてしまえば・・・・・健二のスマッシュは返せないだろう)
勝は何とかネット際に浮かせようとバックバウンダリーラインぎりぎりの左右にロブを打ち込んだ。
シュバッ!!
シュバッ!!
と音が響く中、勝は左端からネット際左にドロップを落とす。
健二も少し左に寄る。
これを読んでいたように酒井が先回りし右側奥へとドリブンクリアを入れる。
(やばい!読まれてた!)
勝は反応できない。
誰もが無理だと思ったシャトルの軌道に健二は斜め後ろに軽くジャンプをしてスマッシュした。
カーン!!
甲高いシャトル音とともに右サイドラインぎりぎりに入る。
一瞬静まり返った館内がどよめいた。

「ナイッショー!!」
「ナイッショー!!」
「すげ~!!どんだけ飛んだ~!!」
「健二先輩、かっこい~!!」
相手ペアも何だそりゃと言わんばかりに不快そうに健二を見つめた。
この試合始まる前までは冷静沈着に指導していた相手の顧問も思いっきりソワソワしていた。
香先生は相手顧問と目を合わせた瞬間、握った右手を大きく上げ人差し指を伸ばした。
後で知った話ではこの二人はこの練習試合でその夜の呑み代を賭けていたらしい。
勿論、バド無名校の国立高校に対しては、
「もし一勝でもあげることが出来たら負けでいいわ!!」
と言って来たらしい。
昔から因縁の相手であるらしい相手顧問に勝った香は、
「よし、横山と田口を胴上げだ~!!」
と叫び、体育館内はしばしお祭り状態であった。

ただ健二は2マッチ目から感じていた右肘の痛みを気にしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...