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三上良子②
3:電車にて
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電車に揺られながら良子は落ち着きなく窓の外を眺めていた。
(早く駅に着かないかな~)
都心から国立方面への電車は朝でこそラッシュで混んでいるが、夕方はかなりすいていた。
どちらかと言えば7時過ぎてからが混んでくる感じで、明らかにサラリーマンが多かった。
国立市内には中高一貫の市立が2つあり、1つは良子らも通っていた女子高だ。
更に中学校、小学校も多くあり子供たちが電車で学校に通う姿はあまりなかった。
良子が座っている電車内の横長シートも、というか、この車両自体にも10人足らずしかいなかった。
まだ夕方5時前だというのにだ。
「ピロリロリ~ン♪・・・・・・・・・・・・・・あと5分ほどで国立に到着します。お忘れ物の無いように注意してください。」
まるで特急電車のようなアナウンスが毎度のように流れてきた。
(いよいよだわ!!)
良子は焦る気持ちを抑え瞼を閉じた。
**********************************************************************************
書店の中の景色が良子の頭の中に映し出された。
レジに立っている陽子に向かって、矢崎が何か一生懸命話しているようだ。
「今日のお昼頃、良子さんの学校まで説得しに行っててきましたよ。」
「そ、そう・・・・・・・どうだった?」
「ちょっと、たまたま知り合いがいたので照れくさくてうまくは言えませんでしたが、気持ちは通じたと思います。」
「そうなの・・・・・・来るって言ってた?」
「えぇ、夕方早速来てくれるって言ってました。」
「そう。・・・・・・まぁ、来てくれれば何かとやってもらいたいことはあるからいいんだけど・・・・・」
「そうですね!!僕も何でもフォローできますし。」
「矢崎君は今日はこのままレジをしてもらえば大丈夫よ。」
矢崎が陽子の両肩に手を当て、
「そういうわけにはいきません!!」
「えっ??」
「良子さんの一番重要な役割は認識されています?」
「あ、え、え~と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただの本好き?」
「違いま~す!!何といってもあの麗しい容姿で男性客を呼び寄せること!そして、一度来たからには、もう毎日でも通ってしまうように虜にすることです!!」
「ス、ストーカーみたいね・・・・」
肩の手を軽くほどきながら陽子が言った。
「ですから、その護衛としての役目が僕にかかっているのです!」
「そう・・・・・・・大変ね・・・・・・」
ちょっとあきれた感じで店内を見回しながら陽子がつぶやくと、
「いえ、これも運命というやつです。」
天井を見ながら矢崎が言い、祈るように両手を胸で合わせ、
「いや、キューピッドに矢を打たれてしまったのかな、僕は・・・・・・」
目をつぶりながら言った。
「ほら、お客さんよ。」
小さい声で言いながら、
「ありがとうございます。」
とお客さんに言いながらカウンターに置かれた本をバーコードで読み始めた。
相変わらず微動だにしない矢崎を横目で見てため息をつきながら、
「良子が来たら余計仕事にならないんじゃないかしら・・・・・・」
と呟くのだった。
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(早く駅に着かないかな~)
都心から国立方面への電車は朝でこそラッシュで混んでいるが、夕方はかなりすいていた。
どちらかと言えば7時過ぎてからが混んでくる感じで、明らかにサラリーマンが多かった。
国立市内には中高一貫の市立が2つあり、1つは良子らも通っていた女子高だ。
更に中学校、小学校も多くあり子供たちが電車で学校に通う姿はあまりなかった。
良子が座っている電車内の横長シートも、というか、この車両自体にも10人足らずしかいなかった。
まだ夕方5時前だというのにだ。
「ピロリロリ~ン♪・・・・・・・・・・・・・・あと5分ほどで国立に到着します。お忘れ物の無いように注意してください。」
まるで特急電車のようなアナウンスが毎度のように流れてきた。
(いよいよだわ!!)
良子は焦る気持ちを抑え瞼を閉じた。
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書店の中の景色が良子の頭の中に映し出された。
レジに立っている陽子に向かって、矢崎が何か一生懸命話しているようだ。
「今日のお昼頃、良子さんの学校まで説得しに行っててきましたよ。」
「そ、そう・・・・・・・どうだった?」
「ちょっと、たまたま知り合いがいたので照れくさくてうまくは言えませんでしたが、気持ちは通じたと思います。」
「そうなの・・・・・・来るって言ってた?」
「えぇ、夕方早速来てくれるって言ってました。」
「そう。・・・・・・まぁ、来てくれれば何かとやってもらいたいことはあるからいいんだけど・・・・・」
「そうですね!!僕も何でもフォローできますし。」
「矢崎君は今日はこのままレジをしてもらえば大丈夫よ。」
矢崎が陽子の両肩に手を当て、
「そういうわけにはいきません!!」
「えっ??」
「良子さんの一番重要な役割は認識されています?」
「あ、え、え~と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただの本好き?」
「違いま~す!!何といってもあの麗しい容姿で男性客を呼び寄せること!そして、一度来たからには、もう毎日でも通ってしまうように虜にすることです!!」
「ス、ストーカーみたいね・・・・」
肩の手を軽くほどきながら陽子が言った。
「ですから、その護衛としての役目が僕にかかっているのです!」
「そう・・・・・・・大変ね・・・・・・」
ちょっとあきれた感じで店内を見回しながら陽子がつぶやくと、
「いえ、これも運命というやつです。」
天井を見ながら矢崎が言い、祈るように両手を胸で合わせ、
「いや、キューピッドに矢を打たれてしまったのかな、僕は・・・・・・」
目をつぶりながら言った。
「ほら、お客さんよ。」
小さい声で言いながら、
「ありがとうございます。」
とお客さんに言いながらカウンターに置かれた本をバーコードで読み始めた。
相変わらず微動だにしない矢崎を横目で見てため息をつきながら、
「良子が来たら余計仕事にならないんじゃないかしら・・・・・・」
と呟くのだった。
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