4 / 17
4.島
しおりを挟む
悠太がしばらく聞いていてわかったことは、どうやらこの祠の奥には雨の精霊様がいるようで、それは女性であるということ。
(声は若そうだが、精霊様なのだから年齢は二百歳ぐらいだろう)
と悠太は思った。
でも役場長さんの話し方だと、ものすごく気を使っているようではなく、それよりもかなり親しみがこもっていた。
役場長さんが申し訳なさそうに話している内容からは、毎年この島祭りの三日間は精霊様がこの奥に閉じ籠っていることで、島は快晴になり最終日の花火が可能になるようだ。
(そうなると、普段はどこにいるんだろう?)
そうは言っても、精霊様の御蔭でこの島は成り立っているという事らしい。
前に誰かに聞いた話だと、この島の財政は特別な雨から作られる浄化水にあるという。
この国のあらゆる所の飲料水はこの浄化水様様なのだ。
又、【精霊の結界】と呼ばれるこの島を中心とした範囲は、台風や雪なども精霊の降らせる柔らかい静かな雨に勝てないそうだ。
そんなわけで、結界内の海はとても穏やかで、雨粒で海水面が見えにくいらしく魚も大量に取れるようだ。
海苔は駄目なようだが、牡蠣の養殖には適しており、真珠も大層上質なものが出来るらしい。
一年中大した寒暖差も無いためとても過ごしやすいのだが、一番のデメリットはやはり湿気のようだ。
どこの家にも必ず大きな乾燥機があり、役場の隣には大きなコインランドリー施設が存在している。
畑や田んぼは雨ばかりでは作物は育たない為見かけず、木々の間に平たい工場のようなものが点々と存在している。
それらは、もやしやキノコ類の栽培や発酵食品が主となっている。
悠太もその一つの施設へ勤めている会社の指示で長期出張で来ているのだ。
でも、それらを相殺しても余りある恩恵を島の住民たちは精霊様に感じているようだ。
ただ、その割に島の住民が少ないのは、言い伝えで精霊様が加護できる島の住民数が限られているからと言われている。
その為、役場の住民管理や船場での人の往来管理は厳重に行っているのだそうだ。
「じゃあ、そろそろわしは帰るけど、明日は何を持ってこーか?」
そんな声が聞こえてきたので悠太は慌てて祠から離れて、来た道とは違う方向の木の後ろに隠れた。
「食材は十分ありますので大丈夫です。」
「そうかい?」
「はい。・・・・・・その・・・」
「あーわかっちょる。くれぐれもあの子には言わんとくから。」
「・・・お願いします。」
小雪が淋しそうにそう言った顔を見て、役場長は少し不憫に思いながら祠を後にした。
(声は若そうだが、精霊様なのだから年齢は二百歳ぐらいだろう)
と悠太は思った。
でも役場長さんの話し方だと、ものすごく気を使っているようではなく、それよりもかなり親しみがこもっていた。
役場長さんが申し訳なさそうに話している内容からは、毎年この島祭りの三日間は精霊様がこの奥に閉じ籠っていることで、島は快晴になり最終日の花火が可能になるようだ。
(そうなると、普段はどこにいるんだろう?)
そうは言っても、精霊様の御蔭でこの島は成り立っているという事らしい。
前に誰かに聞いた話だと、この島の財政は特別な雨から作られる浄化水にあるという。
この国のあらゆる所の飲料水はこの浄化水様様なのだ。
又、【精霊の結界】と呼ばれるこの島を中心とした範囲は、台風や雪なども精霊の降らせる柔らかい静かな雨に勝てないそうだ。
そんなわけで、結界内の海はとても穏やかで、雨粒で海水面が見えにくいらしく魚も大量に取れるようだ。
海苔は駄目なようだが、牡蠣の養殖には適しており、真珠も大層上質なものが出来るらしい。
一年中大した寒暖差も無いためとても過ごしやすいのだが、一番のデメリットはやはり湿気のようだ。
どこの家にも必ず大きな乾燥機があり、役場の隣には大きなコインランドリー施設が存在している。
畑や田んぼは雨ばかりでは作物は育たない為見かけず、木々の間に平たい工場のようなものが点々と存在している。
それらは、もやしやキノコ類の栽培や発酵食品が主となっている。
悠太もその一つの施設へ勤めている会社の指示で長期出張で来ているのだ。
でも、それらを相殺しても余りある恩恵を島の住民たちは精霊様に感じているようだ。
ただ、その割に島の住民が少ないのは、言い伝えで精霊様が加護できる島の住民数が限られているからと言われている。
その為、役場の住民管理や船場での人の往来管理は厳重に行っているのだそうだ。
「じゃあ、そろそろわしは帰るけど、明日は何を持ってこーか?」
そんな声が聞こえてきたので悠太は慌てて祠から離れて、来た道とは違う方向の木の後ろに隠れた。
「食材は十分ありますので大丈夫です。」
「そうかい?」
「はい。・・・・・・その・・・」
「あーわかっちょる。くれぐれもあの子には言わんとくから。」
「・・・お願いします。」
小雪が淋しそうにそう言った顔を見て、役場長は少し不憫に思いながら祠を後にした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
雨の記憶〜CAFE STORY〜
ガジュマル
恋愛
個人経営の喫茶店でアルバイトをする高校生と雨の日だけくる数少ない高校生のお客さん。
ゆっくり静かに縮まる関係を短編小説として繰り広げる。
毎週土日祝日中更新
【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
--
プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる