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1.出会い
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島に住む小雪は、1年中降り続く雨の中で暮らしている雨の精霊だった。
精霊と言っても、身体・精神は人間そのもので、先祖代々その魂を受け継いできた家系なのだ。
ただ、その魂を宿すものは短命で、これまで一番長命だった者でも五十歳は越せなかった。
その代わり、二十歳を超えた頃から老化は止まり、最後まで若いままであった。
又、魂を受け継げるのは女性と定められ、子供を宿す場合は必ず女であることも決まっていた。
彼女の母親が精霊だった時に産まれたのが小雪で、直系であったため母親が亡くなると必然的に小雪に魂が宿った。
それは、まだ小雪が小学三年生の時だったが、その時に初めて精霊の家系であることを知らされ、酷く落ち込んだのだった。
それでも、周りの友達や島の人たちの助けがあり、小雪はゆっくりと精霊であることを自覚したのだ。
だが、成長していくにつれ同年代の友達は島を離れていった。
彼女は高校を卒業すると、島の図書館で司書として働き、雨の音が静寂な図書館を包む中で本と共に人々に知識や癒しを提供していた。
二年程経った頃、島を訪れた悠太という青年との出会いが小雪の心を揺さぶった。
それまで恋をする感情を閉ざしていた小雪だったが、時折図書館近くの商店街で出会う悠太の優しい笑顔に惹かれていった。
悠太もまた、島に住む人々と触れ合い、小雪の存在にも惹かれていった。
いつしか約束することもなく、仕事帰りの小雪を送り届けることが続いて行った。
ある時、悠太は言った。
「この島はどうしていつも雨が降っているのだろう・・・」
小雪は何も言うことはなく、ただじっと空を見つめていた。
半年が経った頃、すっかり悠太と小雪は島の噂となり、みんなが微笑ましく二人を見守っていた。
そうしていると、いつしか悠太の耳に、
「これで次の精霊様も無事産まれなさるなぁ。」
「ほんとに、良い若者が精霊様に見染められたなぁ。」
という言葉が聞こえるようになった。
「精霊様って何ですか?」
興味深く悠太が声を掛けてみると、皆一様に、
「それは私たちからは言えんで・・・」
と言われるばかりだった。
悠太は不思議に思いながらも、それ以上検索することはなかった。
やがて、夏祭りが近づくと、悠太は小雪を誘った。
勿論、告白するためでもあった。
だが、小雪の様子は沈んだ風で、
「その日はどうしても必要な用事でこの島にはいないの・・・」
と悠太に告げた。
「どこに?」
と何度聞いても小雪はただ小さく、
「ごめんなさい・・・」
と呟くだけだった。
その日から、小雪はどことなく悲しげな表情をするようになった。
それでも時折楽しそうにする小雪を見て、悠太は悩んだ。
(小雪さんは僕のことをどう思っているのだろう?)
食事の時も、仕事の時も、一緒にいる時でさえそう考えずにはいられなかった。
でも、そういった話題にしようとすると、途端に小雪の表情が曇り、あからさまに話題を変えられてしまう。
そして、夏祭りの日になった。
精霊と言っても、身体・精神は人間そのもので、先祖代々その魂を受け継いできた家系なのだ。
ただ、その魂を宿すものは短命で、これまで一番長命だった者でも五十歳は越せなかった。
その代わり、二十歳を超えた頃から老化は止まり、最後まで若いままであった。
又、魂を受け継げるのは女性と定められ、子供を宿す場合は必ず女であることも決まっていた。
彼女の母親が精霊だった時に産まれたのが小雪で、直系であったため母親が亡くなると必然的に小雪に魂が宿った。
それは、まだ小雪が小学三年生の時だったが、その時に初めて精霊の家系であることを知らされ、酷く落ち込んだのだった。
それでも、周りの友達や島の人たちの助けがあり、小雪はゆっくりと精霊であることを自覚したのだ。
だが、成長していくにつれ同年代の友達は島を離れていった。
彼女は高校を卒業すると、島の図書館で司書として働き、雨の音が静寂な図書館を包む中で本と共に人々に知識や癒しを提供していた。
二年程経った頃、島を訪れた悠太という青年との出会いが小雪の心を揺さぶった。
それまで恋をする感情を閉ざしていた小雪だったが、時折図書館近くの商店街で出会う悠太の優しい笑顔に惹かれていった。
悠太もまた、島に住む人々と触れ合い、小雪の存在にも惹かれていった。
いつしか約束することもなく、仕事帰りの小雪を送り届けることが続いて行った。
ある時、悠太は言った。
「この島はどうしていつも雨が降っているのだろう・・・」
小雪は何も言うことはなく、ただじっと空を見つめていた。
半年が経った頃、すっかり悠太と小雪は島の噂となり、みんなが微笑ましく二人を見守っていた。
そうしていると、いつしか悠太の耳に、
「これで次の精霊様も無事産まれなさるなぁ。」
「ほんとに、良い若者が精霊様に見染められたなぁ。」
という言葉が聞こえるようになった。
「精霊様って何ですか?」
興味深く悠太が声を掛けてみると、皆一様に、
「それは私たちからは言えんで・・・」
と言われるばかりだった。
悠太は不思議に思いながらも、それ以上検索することはなかった。
やがて、夏祭りが近づくと、悠太は小雪を誘った。
勿論、告白するためでもあった。
だが、小雪の様子は沈んだ風で、
「その日はどうしても必要な用事でこの島にはいないの・・・」
と悠太に告げた。
「どこに?」
と何度聞いても小雪はただ小さく、
「ごめんなさい・・・」
と呟くだけだった。
その日から、小雪はどことなく悲しげな表情をするようになった。
それでも時折楽しそうにする小雪を見て、悠太は悩んだ。
(小雪さんは僕のことをどう思っているのだろう?)
食事の時も、仕事の時も、一緒にいる時でさえそう考えずにはいられなかった。
でも、そういった話題にしようとすると、途端に小雪の表情が曇り、あからさまに話題を変えられてしまう。
そして、夏祭りの日になった。
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