再び君に出会うために

naomikoryo

文字の大きさ
上 下
11 / 69
本編

観覧車で間接キス?

しおりを挟む
遊園地には一応入り口があり、中に入るには入園料が必要だった。
大人は八百円で小中高は五百円でそれ以下は二百円。
これを払ってしまえばあとは園内の乗物は乗り放題という破格のものだった。
そのため、主に子供連れの家族が多く、それも小学生未満が多かった。
ただ、乗物と言ってもそんな訳で小さな子供も安心な程度の物ばかりで、ジェットコースターは工事中の看板がかかってからもうニ年ぐらいにはなる。
観覧車も全長二十五mほどで、ゴンドラ回転の直径としては二十mほどだった。
一週回るのは、かなりゆっくりな設定になっているのでだいたい六、七分ぐらいだ。
ある程度遊び疲れた後やカップルなどには人気だが、今は時間も早いため待ち時間も少なくすんなり乗れた。
流石に最初から隣同士には座らず、自然と向かい合って座った。

「バッグありがとう。」
「あっ・・・・・・あぁ。」
太一はトートバッグを貴子に渡した。
中からごそごそと紙袋を出して中を確認してはしまいして、ようやく少し小さめの紙袋をニつ出した。
「おにぎりだけでいいわよね?」
「そうだな!」
太一はそう言いながらワクワクした様子で両手で両太ももをポンポン叩いた。
「そんな、子供みたいに・・・」
貴子はクスッと笑いながらその紙袋の一つを太一に差し出した。
太一は紙袋を受け取るとすぐに中を覗き込んだ。
「おぉ!!でかいおにぎりが入ってる!!」
そう叫びながら明らかにおにぎりだと言わんばかりの大き目の三角ホイルで包まれた塊を1つ取り出した。

「いただきま~す。」
太一はアルミホイルをぶっきらぼうにむしり取ってかぶりついた。
貴子もまた紙袋の中に手を入れようとしていた。
「おぉ!!鮭だよ!!鮭良いよな!!」
そう言いながらむしゃむしゃと食べてしまった。
「そんなに急がなくても・・・」
貴子がようやく一個目のおにぎりを出すと、太一は既にニ個目にかぶりついていた。
「おぉ、今度は昆布じゃん!!昆布もいいよな!!」
「あんた、何でもいいんじゃない?」
貴子もあむっと小さく食いついた。
「うん、おいしいおいしい!!」
「相変わらず、豪快に食べるのね。」
そう言って三口ほど食べて、貴子はバッグからペットボトルを一つ取り出した。
「あれ?」
「ん、どうした?」
貴子は左手でまだ半分も食べ終わらないおにぎりを持ちながら、右手で更にトートバッグの中をごそごそしている。
「ペットボトル、もう一本あるはずなんだけど・・・・・」
「そう・・・・・」
太一はあまり気にすることもなく、三個目のおにぎりにかぶりついた。
「おぉ~!!最後は、梅ときたよ~!!・・・・・このすっぱさが良いよな~!!!」
そう言いながら梅も丸ごと口に入れてモゴモゴとしながら種だけを紙袋にペッと戻した。
相変わらずの食べっぷりである。

「ごめん・・・・・飲み物一本しかない・・・・・」
貴子がちょっと済まなそうに言うと、
「いいよ、気にするなって!」
「そお?」
貴子はそれが、俺はいらないよ、という意味だろうと思いふたを開けて二口飲んだ。
そして、ふたを閉めようと思ったら、太一がすかさずそのペットボトルを掴んで・・・・・ガブガブと飲んだ。
「えっ?・・・・・・・・・・あんた、それ、か・・・・・・・・かんせつ・・・・・・・・・・・・・」
そして更に貴子にそのペットボトルを渡した。

「あ~ご馳走様~!!!・・・・・まだ食べ物あるの?」
「あ・・・・・え、えぇ・・・・・・・・・・・まだ・・・・食べる?」
「いや、とりあえずはいっかな!」
「そ・・・そお?」
「まぁ、ゆっくり食べなよ!」
「う・・・・・うん。」
貴子は渡されたペットボトルを5秒ほど見つめて、一口飲むとまたあむあむとおにぎりを食べ始めた。
(あらあら~、う・れ・し・そ・う!)

それで丁度一週目が終わるぐらいで、係のお姉さんがゴンドラを掴んで入り口を開けてくれたので太一はすかさず、
「ありがとうございます!でも、僕ら五週ぐらいしますので、その時はお願いします!」
と言い手を降った。
お姉さんは、
「そう。降りる時は合図してね。」
と笑顔で言い、入り口を閉めてくれた。
貴子はもぐもぐと食べながら軽く会釈をした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

処理中です...