白い箱

あとがき

主人公が箱を開けた時に映し出される過去の記憶の中で、最も心に深く刻まれているのは、彼女との約束を破った出来事だ。
彼女は主人公の最も大切な存在で、幼い頃から共に過ごした親友であり、初恋の相手でもあった。
二人はお互いの夢や未来を語り合い、いつか一緒に叶えようと約束した。
しかし、その約束を破った理由は、主人公自身の恐れと不安から来ていた。

大学進学を目前に控えた春、彼女は家族の都合で遠くの町へ引っ越すことになった。
その時、二人は未来のことを真剣に話し合った。
彼女は
「どんな場所でも、どんな道でも、私は君と一緒にいたい」
と言ってくれたが、主人公はその言葉を信じることができなかった。
引っ越し先が遠く、別々の道を歩むことになる現実に恐れを感じ、彼女がどんなに約束しても、離れた後にその関係がどうなるのか不安だった。

彼女との未来を恐れるあまり、主人公は心の中で彼女との関係に疑問を持ち始める。
もっと自由に、自分の人生を生きたいという思いが強くなり、彼女に言わなければならない「別れの言葉」を避けるようになった。
そして、ある日、彼女が大切にしていた「約束の日」に、急に連絡を絶ってしまう。
電話もメッセージも無視し、あえて彼女を遠ざけることで、別れを告げることなく、関係を終わらせた。

その行動が、彼女にとってどれほど辛かったか、主人公はその後何年も気づくことがなかった。
約束を破ったことは、彼女にとって裏切りだったし、主人公自身にとっても一生消えない後悔となった。

箱を開けた時に映し出されたその記憶は、主人公にとって最も痛みを伴うものであり、彼女の笑顔や優しさが心の中で深く残り、今も彼女に対して謝りたいという気持ちを抱え続けていた。