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第5話 常夏の島
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炎はゆらめき人を過去に導く。蓮子は数年務めた大学病院を辞めて、訪問看護の仕事に就いた。重篤な病人の面倒を見ることが、彼女の全てだった。
病はいつ人を襲うか決まっていない。ここに救いの手を差し伸べに来る人々は、宿命なのか運命の悪戯なのかわからない。いくらかの者は死に、またいくらかの者は助かる。生死の境界線はきわどい。理由はどうであれ病人は救わなければいけない。
ここは命を救うという使命を持った者の集う場所だ。彼女も同じ使命を帯びた者のはずだった。
蓮子が担当していた患者は、植物人間でほぼ蘇生の見込みがない百歳を過ぎた老人で、毎日のように心拍数を確認していた。また患者を生かすために点滴による栄養補給をしていた。
「清家さん、村田さんの容体はどう?」
深夜のナースステーションは、看護婦たちのぼやく場所となっている。昼間はとてもじゃないが文句など言う暇はない。
「相変わらずですね」
このときの蓮子は、今後の彼女は笑顔も振り撒かず黙々と作業に打ち込み、生きている実感などなく、作業をこなすだけの機械のようだった。
「そうねえ。でもこれ以上蘇生の見込みないでしょう?」
この人は、竹谷さん。このフロアの看護婦のリーダーで、いわばお局様だった。
「はい。でも本人が生前から延命治療を希望されていたみたいです」
「そうなの? でもどうして?」
「ご家族から聞いた話ですが、長く生きてギネスブックに乗りたいって。ギネスになって俺の名前を残すと強くおっしゃっていたそうです」
その話を聞いて、竹谷さんはポカンとした顔をした。お月様のように真ん丸の顔立ちのあぜんとした姿は何だか面白かった。屈託ない、おおよそ出世とは無縁のこの人がリーダーに選ばれたのは人柄だろう。
「ずいぶんと変わっているわね」
「ええ。ですが本人のご意思ですから。ご家族も可能な限り継続したいそうですし」
「でも何なの? 名前を残すって?」
「さあ」
世の中色々な人がいる。ただ村田さんの場合は、よく分からなかった。裕福な家庭に生まれ、子宝に恵まれて、順風満帆な生活を送ってきた。なのに、名前を残すことに何を執着しているのか。
「本人があれじゃあ名前を残せても意味がないわね。ご家族もそれでいいのかしら? 結構大変よ、彼。お金かかるし」
「そうですね。あ、そろそろ時間なので」
「ええ、お願い」
時刻は深夜三時を回っていた。音もない静寂な闇に蓮子は身を投じる。ナースステーションをひとたび離れると、懐中電灯がなければ真っ暗で先が見えない。蓮子が向かう先は、あらゆる薬が置いてある保管室だった。
この病院は少々セキュリティに抜かりがある。薬の持ち出しの際に、誤った薬を持ち出さないか確認もしない。投薬の薬を間違えてもおかしくない環境だった。ましては、深夜は確認が疎かになりがちで、「魔の時間帯」と言われているぐらいだ。
今回必要なのは、さきほど話していた村田さんに投与する抗凝固薬と栄養剤だった。誤って別の患者に打っては大問題になる。もし事件が起きたら、本人に責任を押し付け、病院側は金を払って丸く収めようとするだろう。
村田さんの部屋は、角部屋にあった。扉を叩いた。誰も応答しないのに。真っ暗な部屋に入るのは恐怖を感じる。もし彼が蘇生していたら、声を上げてしまうだろう。
電気をつける。光が当たり、村田邦彦の素顔が晒された。体は皮と骨だけとなり、花に管が取り付けられている。生ける屍と化した哀れな男がそこに横たわっている。
「村田さん、今からお薬を投与しますね」
返事はない。当然だろう。それでも確認のため、欠かさずやる。これが日課なのだ。
ここでは例外は排除される。身動きが取れないのは、患者たちだけではなく、その世話をする医師や看護婦も同様に違いない。
チューブの中には、残り僅かな栄養剤が入っている。また注射器に目分量の抗凝固薬を入れた。あとは彼の体内に用意した薬剤を投与するだけだ。
同じ行動、また繰り返されるだろう日々。このとき精密機械のように、作業をこなしてナースステーションに戻るだけだ。なのに、この日の蓮子はピタリと注射器を持ったまた硬直していた。何かがあった。これまで考えたこともない志向が彼女の頭に芽生えた。果たしてこの寝たきりの老人に薬剤を投与することが最善なのか。ただおのれの名を残すだけという下らない理由で生き続ける男。哀れな骸として生きながらも、彼は生に執着している。彼一人を生かすために多くの人間が動いている。
もし彼に投与をしなければ、どうなる?
植物人間は、自ら動くことができないから同じ体位で居続けるため、血液が凝結し、血栓ができる。作られた血栓が肺などに運ばれ血管を詰まらせないよう、体を動かすことや、薬を投与する必要がある。だから夜な夜なこうやって薬を打っている。
だが、それらは彼を生かすことを善と定めたうえでの行いだった。彼女の中で、定説は崩れかかっていた。
打てば彼は生きながらえる。打たなければ、すぐには死なない。しかし死のリスクは高まるだろう。彼女の手は止まったままだ。
打つか、打たぬか?
彼は生き続ければ、彼のみが村田邦彦として存在し続ける。もし死ねば、多くの人々を村田邦彦の呪縛から解放されるのではないか?
『一粒の麦、地に落ちて死なねば、ただ一つにてあらん。死ねば多くの実を結ぶべし』
あの言葉か。母の口癖。彼女の頭にある言葉がよぎる。
なあに、それと幼かった時分に、蓮子は母に聞いた。当時は変な言葉で難しそうで理解できなかった。ただ印象的なので覚えている。毎日漁に出かけるパパは、過酷な海で命を晒しながら多くの人に食べ物を届けているの、彼みたいにならなくていいけど、誰かのためになるようになりなさいと、蓮子は言われたのを思い出した。
地に落ちた種は死なないと、それだけの存在だ。しかし死ねば多くの実を生かす。イエスの言葉。
昔の記憶に沈んだ言葉が蘇った時、彼女の心は固まった。
村田邦彦、生きた骸。
名前はただの記号。彼らは時に番号で呼ばれている。この男は死んで大勢を生かすべきだ。決してちっぽけな名前を残すために生きるべきではない。骸は何も語らない。言葉を持たぬ者は死んでいると同義だ。
彼女は注射器を打つ。目分量の八分目辺りまで。しっかりと正確に。寸分の誤りのない量を投薬した。定期的に彼の体内に打つべき量を減らし、彼の体内に血栓ができるのは時間の問題だった。日に日に育った血栓はやがて毛細血管から大動脈に達し、適した場所で血流を留めた。村田邦彦が死んだのは、蓮子が薬の目分量を減らしてから数か月のことだ。
誰も彼が意図的にこの世から去ったとは思わない。事務的に片付けられ、彼の遺体は火葬場に送られた。空っぽになった病室にはまた新たな病人が彼の代わりに横たわっていた。
また同じことが繰り返される。これが永遠と続くと蓮子は感じていた。命を延命しようというむなしき足掻きは、生きた骸を無尽蔵に作り出す。でも蓮子が同じように足掻きを断っても、また新たな村田邦彦がそこに居座る。この病院という箱庭は、生に縛られる者たちに素晴らしき最期を与えるのにはふさわしい場所ではない。そのときには、蓮子は辞表を提出していた。看護の仕事はいくらでもある。
この世界には、まだ自分の役目を果たす場と人が大勢いる可能性にかけてみたのだ。
「それが初めての狩りなの?」
「狩り?」
「君が、誰かを殺めた初めての出来事なの?」
「殺したなんて、彼は死ぬときがきたのよ」
「でも君が意図して薬の量を減らした。そうだろ?」
「あっけないわ。彼は、死んで大勢を救ったの。彼を生かすのに費用がかかる。彼の世話をするのに多くの人がいる。一粒の実、死ねば多くの実を結ぶ。意味がよくわかったわ」
「そうだろうか?」
新出は、幾分小さくなった炎を見てつぶやいた。
「本当にそうなのかな?」
彼の言葉に蓮子は興味がなさそうに一目だけ彼を見て、立ち上がり屋敷に向かった。すっかり夜になった。新出はかがり火を消して、蓮子の後を追った。
病はいつ人を襲うか決まっていない。ここに救いの手を差し伸べに来る人々は、宿命なのか運命の悪戯なのかわからない。いくらかの者は死に、またいくらかの者は助かる。生死の境界線はきわどい。理由はどうであれ病人は救わなければいけない。
ここは命を救うという使命を持った者の集う場所だ。彼女も同じ使命を帯びた者のはずだった。
蓮子が担当していた患者は、植物人間でほぼ蘇生の見込みがない百歳を過ぎた老人で、毎日のように心拍数を確認していた。また患者を生かすために点滴による栄養補給をしていた。
「清家さん、村田さんの容体はどう?」
深夜のナースステーションは、看護婦たちのぼやく場所となっている。昼間はとてもじゃないが文句など言う暇はない。
「相変わらずですね」
このときの蓮子は、今後の彼女は笑顔も振り撒かず黙々と作業に打ち込み、生きている実感などなく、作業をこなすだけの機械のようだった。
「そうねえ。でもこれ以上蘇生の見込みないでしょう?」
この人は、竹谷さん。このフロアの看護婦のリーダーで、いわばお局様だった。
「はい。でも本人が生前から延命治療を希望されていたみたいです」
「そうなの? でもどうして?」
「ご家族から聞いた話ですが、長く生きてギネスブックに乗りたいって。ギネスになって俺の名前を残すと強くおっしゃっていたそうです」
その話を聞いて、竹谷さんはポカンとした顔をした。お月様のように真ん丸の顔立ちのあぜんとした姿は何だか面白かった。屈託ない、おおよそ出世とは無縁のこの人がリーダーに選ばれたのは人柄だろう。
「ずいぶんと変わっているわね」
「ええ。ですが本人のご意思ですから。ご家族も可能な限り継続したいそうですし」
「でも何なの? 名前を残すって?」
「さあ」
世の中色々な人がいる。ただ村田さんの場合は、よく分からなかった。裕福な家庭に生まれ、子宝に恵まれて、順風満帆な生活を送ってきた。なのに、名前を残すことに何を執着しているのか。
「本人があれじゃあ名前を残せても意味がないわね。ご家族もそれでいいのかしら? 結構大変よ、彼。お金かかるし」
「そうですね。あ、そろそろ時間なので」
「ええ、お願い」
時刻は深夜三時を回っていた。音もない静寂な闇に蓮子は身を投じる。ナースステーションをひとたび離れると、懐中電灯がなければ真っ暗で先が見えない。蓮子が向かう先は、あらゆる薬が置いてある保管室だった。
この病院は少々セキュリティに抜かりがある。薬の持ち出しの際に、誤った薬を持ち出さないか確認もしない。投薬の薬を間違えてもおかしくない環境だった。ましては、深夜は確認が疎かになりがちで、「魔の時間帯」と言われているぐらいだ。
今回必要なのは、さきほど話していた村田さんに投与する抗凝固薬と栄養剤だった。誤って別の患者に打っては大問題になる。もし事件が起きたら、本人に責任を押し付け、病院側は金を払って丸く収めようとするだろう。
村田さんの部屋は、角部屋にあった。扉を叩いた。誰も応答しないのに。真っ暗な部屋に入るのは恐怖を感じる。もし彼が蘇生していたら、声を上げてしまうだろう。
電気をつける。光が当たり、村田邦彦の素顔が晒された。体は皮と骨だけとなり、花に管が取り付けられている。生ける屍と化した哀れな男がそこに横たわっている。
「村田さん、今からお薬を投与しますね」
返事はない。当然だろう。それでも確認のため、欠かさずやる。これが日課なのだ。
ここでは例外は排除される。身動きが取れないのは、患者たちだけではなく、その世話をする医師や看護婦も同様に違いない。
チューブの中には、残り僅かな栄養剤が入っている。また注射器に目分量の抗凝固薬を入れた。あとは彼の体内に用意した薬剤を投与するだけだ。
同じ行動、また繰り返されるだろう日々。このとき精密機械のように、作業をこなしてナースステーションに戻るだけだ。なのに、この日の蓮子はピタリと注射器を持ったまた硬直していた。何かがあった。これまで考えたこともない志向が彼女の頭に芽生えた。果たしてこの寝たきりの老人に薬剤を投与することが最善なのか。ただおのれの名を残すだけという下らない理由で生き続ける男。哀れな骸として生きながらも、彼は生に執着している。彼一人を生かすために多くの人間が動いている。
もし彼に投与をしなければ、どうなる?
植物人間は、自ら動くことができないから同じ体位で居続けるため、血液が凝結し、血栓ができる。作られた血栓が肺などに運ばれ血管を詰まらせないよう、体を動かすことや、薬を投与する必要がある。だから夜な夜なこうやって薬を打っている。
だが、それらは彼を生かすことを善と定めたうえでの行いだった。彼女の中で、定説は崩れかかっていた。
打てば彼は生きながらえる。打たなければ、すぐには死なない。しかし死のリスクは高まるだろう。彼女の手は止まったままだ。
打つか、打たぬか?
彼は生き続ければ、彼のみが村田邦彦として存在し続ける。もし死ねば、多くの人々を村田邦彦の呪縛から解放されるのではないか?
『一粒の麦、地に落ちて死なねば、ただ一つにてあらん。死ねば多くの実を結ぶべし』
あの言葉か。母の口癖。彼女の頭にある言葉がよぎる。
なあに、それと幼かった時分に、蓮子は母に聞いた。当時は変な言葉で難しそうで理解できなかった。ただ印象的なので覚えている。毎日漁に出かけるパパは、過酷な海で命を晒しながら多くの人に食べ物を届けているの、彼みたいにならなくていいけど、誰かのためになるようになりなさいと、蓮子は言われたのを思い出した。
地に落ちた種は死なないと、それだけの存在だ。しかし死ねば多くの実を生かす。イエスの言葉。
昔の記憶に沈んだ言葉が蘇った時、彼女の心は固まった。
村田邦彦、生きた骸。
名前はただの記号。彼らは時に番号で呼ばれている。この男は死んで大勢を生かすべきだ。決してちっぽけな名前を残すために生きるべきではない。骸は何も語らない。言葉を持たぬ者は死んでいると同義だ。
彼女は注射器を打つ。目分量の八分目辺りまで。しっかりと正確に。寸分の誤りのない量を投薬した。定期的に彼の体内に打つべき量を減らし、彼の体内に血栓ができるのは時間の問題だった。日に日に育った血栓はやがて毛細血管から大動脈に達し、適した場所で血流を留めた。村田邦彦が死んだのは、蓮子が薬の目分量を減らしてから数か月のことだ。
誰も彼が意図的にこの世から去ったとは思わない。事務的に片付けられ、彼の遺体は火葬場に送られた。空っぽになった病室にはまた新たな病人が彼の代わりに横たわっていた。
また同じことが繰り返される。これが永遠と続くと蓮子は感じていた。命を延命しようというむなしき足掻きは、生きた骸を無尽蔵に作り出す。でも蓮子が同じように足掻きを断っても、また新たな村田邦彦がそこに居座る。この病院という箱庭は、生に縛られる者たちに素晴らしき最期を与えるのにはふさわしい場所ではない。そのときには、蓮子は辞表を提出していた。看護の仕事はいくらでもある。
この世界には、まだ自分の役目を果たす場と人が大勢いる可能性にかけてみたのだ。
「それが初めての狩りなの?」
「狩り?」
「君が、誰かを殺めた初めての出来事なの?」
「殺したなんて、彼は死ぬときがきたのよ」
「でも君が意図して薬の量を減らした。そうだろ?」
「あっけないわ。彼は、死んで大勢を救ったの。彼を生かすのに費用がかかる。彼の世話をするのに多くの人がいる。一粒の実、死ねば多くの実を結ぶ。意味がよくわかったわ」
「そうだろうか?」
新出は、幾分小さくなった炎を見てつぶやいた。
「本当にそうなのかな?」
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