54 / 156
第4章 さまよう聖女
6
しおりを挟む
今が何時で、昼なのが夜なのか……自分は今囚われている。むっとするような暑さによって、汗が吹きこぼれ、べた付くような肌の感触が、自分を憂鬱にさせている。
何もしたくない。どうでもよかった。
キイと部屋の戸が開いた。触れば火傷する取手が、なぜか彼女は平気に開けられる。
かつて数少ない臣下だった女。
「お休みでしたか?」
今では、しつこいほど絡んでくるのだ。
「出ていって……」
「ぜひやっていただきたい――」
「いやです」
「では仕方ありませんわ」
祥子は、すっと腰に巻いた木の杖を取り出し、一振りした。すると寝台に横になっていた希和子の身体は、本人の意志に反し立ち上がり、部屋にあった椅子に座らせ、机に向かわせた。
「なんてことを……」
彼女は、魔法をかけた。主に力を行使し、服従させるのは礼法に反することだ。
「ご安心を、悪しき類の魔力は行使しておりませんのよ」
「こんな侮辱は初めてです」
「ご無礼を。どうかお許しを」
「なんですか?」
目の前に置かれた白い用紙とペン。
「ぜひ、両殿下からお願いしたき儀があるとのこと。まずは文面をお読みくださいまし」
用紙に書かれた文言は一つ一つをとっても、あまりにも納得できないことだった。承服することなど不可能だ。
「これは――」
希和子の驚愕に満ちた顔を、祥子は鮮やかに笑う。
「このようなもの、とても――」
希和子は祥子に顔を向ける、しかし強制的に魔法により机に修正され、加えてペンを無たされる。
「さあ陛下、こちらにご自身の御署名を」
「書きたくありません。要りません。片付けなさい!」
あらん限りの力で、悪しき力から逃れようとした。しかし無駄な徒労に終わる。
「さあ、さあ」
祥子はそっと懐中時計を取り出し、希和子の目の前で左右に一定のふり幅で揺れ動した。
「おかしな術をかけないで」
希和子の瞳は、かつて祥子が献上した懐中時計から背けようと必死になる。
「抗おうとするから苦しいのです。もうあなた様に課せられた一切を放棄し、楽におなり下さい」
何もしたくない。どうでもよかった。
キイと部屋の戸が開いた。触れば火傷する取手が、なぜか彼女は平気に開けられる。
かつて数少ない臣下だった女。
「お休みでしたか?」
今では、しつこいほど絡んでくるのだ。
「出ていって……」
「ぜひやっていただきたい――」
「いやです」
「では仕方ありませんわ」
祥子は、すっと腰に巻いた木の杖を取り出し、一振りした。すると寝台に横になっていた希和子の身体は、本人の意志に反し立ち上がり、部屋にあった椅子に座らせ、机に向かわせた。
「なんてことを……」
彼女は、魔法をかけた。主に力を行使し、服従させるのは礼法に反することだ。
「ご安心を、悪しき類の魔力は行使しておりませんのよ」
「こんな侮辱は初めてです」
「ご無礼を。どうかお許しを」
「なんですか?」
目の前に置かれた白い用紙とペン。
「ぜひ、両殿下からお願いしたき儀があるとのこと。まずは文面をお読みくださいまし」
用紙に書かれた文言は一つ一つをとっても、あまりにも納得できないことだった。承服することなど不可能だ。
「これは――」
希和子の驚愕に満ちた顔を、祥子は鮮やかに笑う。
「このようなもの、とても――」
希和子は祥子に顔を向ける、しかし強制的に魔法により机に修正され、加えてペンを無たされる。
「さあ陛下、こちらにご自身の御署名を」
「書きたくありません。要りません。片付けなさい!」
あらん限りの力で、悪しき力から逃れようとした。しかし無駄な徒労に終わる。
「さあ、さあ」
祥子はそっと懐中時計を取り出し、希和子の目の前で左右に一定のふり幅で揺れ動した。
「おかしな術をかけないで」
希和子の瞳は、かつて祥子が献上した懐中時計から背けようと必死になる。
「抗おうとするから苦しいのです。もうあなた様に課せられた一切を放棄し、楽におなり下さい」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
戦国陰陽師2 〜自称・安倍晴明の子孫は、ぶっちゃけ長生きするよりまず美味しいご飯が食べたいんですが〜
水城真以
ファンタジー
「神様って、割とひどい。」
第六天魔王・織田信長の専属陰陽師として仕えることになった明晴。毎日美味しいご飯を屋根の下で食べられることに幸せを感じていた明晴だったが、ある日信長から「蓮見家の一の姫のもとに行け」と出張命令が下る。
蓮見家の一の姫──初音の異母姉・菫姫が何者かに狙われていると知った明晴と初音は、紅葉とともに彼女の警護につくことに。
菫姫が狙われる理由は、どうやら菫姫の母・長瀬の方の実家にあるようで……。
はたして明晴は菫姫を守ることができるのか!?
龍騎士イリス☆ユグドラシルの霊樹の下で
ウッド
ファンタジー
霊樹ユグドラシルの根っこにあるウッドエルフの集落に住む少女イリス。
入ったらダメと言われたら入り、登ったらダメと言われたら登る。
ええい!小娘!ダメだっちゅーとろーが!
だからターザンごっこすんなぁーーー!!
こんな破天荒娘の教育係になった私、緑の大精霊シルフェリア。
寿命を迎える前に何とかせにゃならん!
果たして暴走小娘イリスを教育する事が出来るのか?!
そんな私の奮闘記です。
しかし途中からあんまし出てこなくなっちゃう・・・
おい作者よ裏で話し合おうじゃないか・・・
・・・つーかタイトル何とかならんかったんかい!
ボッチな俺は自宅に出来たダンジョン攻略に励む
佐原
ファンタジー
ボッチの高校生佐藤颯太は庭の草刈りをしようと思い、倉庫に鎌を取りに行くと倉庫は洞窟みたいなっていた。
その洞窟にはファンタジーのようなゴブリンやスライムが居て主人公は自身が強くなって行くことでボッチを卒業する日が来る?
それから世界中でダンジョンが出現し主人公を取り巻く環境も変わっていく。
斬られ役、異世界を征く!!
通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
剣の腕を見込まれ、復活した古の魔王を討伐する為に勇者として異世界に召喚された男、唐観武光(からみたけみつ)……
しかし、武光は勇者でも何でもない、斬られてばかりの時代劇俳優だった!!
とんだ勘違いで異世界に召喚された男は、果たして元の世界に帰る事が出来るのか!?
愛と!! 友情と!! 笑いで綴る!! 7000万パワーすっとこファンタジー、今ここに開幕ッッッ!!
王女様は聖女様?いいえ、実は女神です(こっそり)~転生王女は可愛いもふもふと愛するドラゴンを守るため最強の仲間と一緒に冒険の旅に出る~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる