孤島に浮かぶ真実

戸笠耕一

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第二部

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 翌週の火曜日。私はこの日、遅めに学校に到着した。珍しくちょっぴりと寝坊をしてしまった。教室に入ると、一か所に固まっている集団を見かける。

 ほぼクラスの全員が集まっていて、何やかんやとざわついていた。聞こえてきたのは「マジ?」だの「死んだ?」だの「罰が当たった」だの、妙にキツイ言葉ばかりで、心に引っかかる。

「明美~」

 彩月の声がしそっちを向くと手招きをしていたので、それに応じる。

「なあに?」

 私は呼ばれた訳を聞いた。

「これこれ、これ見てよ」彼女は手に持った新聞を引っ下げて、話題になっている箇所を指し示した。見出しは次のように書いてある。

【スピードの出しすぎか バイク無残】

 本文は「六月十八日、午後七時過ぎ、東京都面影村の高林航さんが乗っていたバイクを電柱に激突し投げ出され、テトラポッドに頭をぶつけ死亡した。暗がりで人気の少ない箇所ということもあり、発見が遅れたとみられる。発見者は近くに住む(以下略)」と記される。大体の内容を読んだので、私は読むのを途中でやめた。

 これは地元の新聞に違いない、「面影日報」と書いてある。けどバイク事故などよくあることじゃないかと思い、この騒ぎは何かと不思議に感じた。

 でもここは人口三千人ほどの小さな島だ。事故の一つでも、輪ができるんだと考えを修正した。

「バイク事故?」

「そう、五人でダーツ行っていた時に絡んできた不良の一人が事故って死んだのよ」

 不良と聞いて真っ先に思い出すのは、喫茶店でのダーツだ。

「あーあ、済々した。迷惑な輩はとっとと死んで正解」

「まあ飛ばしすぎだろ?」

「あの不良連中、全員死なないかな?」

「ホントねー事故死しろよ」

 集団に薄暗い呪いの言葉が響いていた。ただ一人、勉だけが違う反応を示す。

「うーん……」彼の顔は険しく表情が暗い。

「ヨリ、どうしたん?」堀田君が気になって話しかける。

「いや、航がバイクの飛ばしすぎで死ぬかな」

「ふうん」

「あんたが、あいつの心配なんかしたって仕方ないじゃない。天罰よ、死んで当然よ」彩月がぴしゃりと言い、頭をかきむしる勉をたしなめる。「あいつ」の言葉の響きが侮蔑  と嫌悪に満ちていたのは確かだった。

「まあな」

 勉の顔から二つの気持ちが私には読み取れた。一つは、最もだという顔。そしてもう一つは、疑惑にあふれた顔だ。私は後者の方を知りたいと思った。
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