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プロローグ
10 招かれざる者
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小さな砦の屋上に丸机を置き、いくつもの銀河が浮かぶ程の壮大な満天の星の下で食事を終えた吾郎は、火のような温かい光を放つLEDランタンの元で、のんびりと明日の魔物狩りの為の準備をしていた。
時折、少し肌寒い夜の風が吹きぬけて、吾郎の髪の毛を揺らしていく。
丸机の上にはエアガン、マガジン、BB弾袋などが無造作に置かれていた。
吾郎はネット通販で買った「アーモンド入りチョコ」(200金貨)を食べながら、マガジンにBB弾をBBローダーで押し込んでいく。
「…………」
吾郎は無言でマガジンを装着していないエアガンを手に持つと、スライドをカシャリと引いて軽く構えながらトリガーを引く。
装弾はされていないので、カチと乾いた音が鳴るだけだった。
吾郎は構えるのをやめて、エアガンを手元に引き寄せると、精神を集中させて「強化鍛冶師(インフレスト)」の力をエアガンに注ぎ込んでいく。
「(あの大黒蟻を一撃で殺せるように威力は今よりも更に10倍へ、威力に相応しい見た目として銃身(バレル)を少し伸ばして、エアコッキングの空気吸入圧縮量を増大化と、排出量の調整、これでスライド1回で10発は射撃できるだろう)」
吾郎はロングバレル化したエアガンの銃口を、荒野の果ての暗闇に向けて構える。
「……」
吾郎はアーモンド入りチョコを箱から指で摘んで口に放り込むと、マガジンを取って席を立った。
屋上を守るための防壁の側まで近寄ると、吾郎はエアガンにマガジンを装着してから、銃口を荒野の暗闇の果てに向かって構えると、そのまま引き金を引く。
威力を更に上げたせいか「――ズバンッ!!」と、今までとは違う重たい射撃音が辺りに響き渡った。
続いて吾郎は、トリガーを連続で引きしぼる。
ロングバレルから凄まじい勢いで飛び出し続けるBB弾。
予定通り合計10発を射撃した所で、トリガーを引いても弾が出なくなる。
吾郎はスライドを引いて空気を送り込むと、また射撃を始めた。
暗闇の荒野の中に乾いた射撃音が響き続ける。
「……よし、いけそうだな」
吾郎はエアガンからマガジンを抜き出すと、ゆっくりとした足取りで丸机に戻り椅子に座る。
弾が減ったマガジンにBBローダーで給弾しながら、またチョコを頬張る。
「ま、これなら大黒蟻をも一撃で仕留められるし、それなりに連射も可能だから、群れで出てきても大丈夫だろう。ただ、威力が完全にぶっ飛んだ領域に入り始めたから、ますます注意して扱わないとな……」
吾郎はエアガンのセーフティーのロックをかけるのは当然として、ワンクッションを置く為に、基本はマガジンも外しておくことにした。
「即応性は落ちるけども、暴発でケガをするのは避けたいからな」
吾郎はマガジンなどをダンプポーチに収納し、エアガンも右足のホルスターに戻した。
「さて、あとはのんびりするか……」
吾郎は椅子に座りながら腕を伸ばして背伸びをすると、ふいに背後の方の砦の下から「ガサゴソ」という物音が聞こえた気がした。
「……」
吾郎はまだまだ異世界に来たばかりなせいか、その違和感に対して「いやいや……まさかね」という元の世界の日本人らしい平和ボケな考えをよぎらせてしまうのだが、そこを何とか捻じ伏せて断ち切る。
「――くっ!」
吾郎は間抜け面から即座に表情を引き締めると、すぐさまに椅子から立ち上がりながらも、右手は右足のホルスターからエアガンを取り、左手はダンプポーチからマガジンを取ってエアガンに装着するや、背後に振り返えり終えた時には、既にエアガンの銃口は不審な音がした方角に向けて構え終えていた。
「……」
LEDランタンの明かりは屋上を囲む防御壁にまでは届いているのだが、その向こうは深い深い暗闇である。
吾郎は静かにセーフティーロックを外してスライドを1回引いた。
「……」
しばらく、不審な音がした方角の暗闇に向かって銃口を構えてみるが特に何の変化も無かった。
吾郎は右手でエアガンを構えながら、左手で丸机の上に置いておいたLED懐中電灯を手に取ると、そのまま明かりをつける。
強化済みのLED懐中電灯は防御壁の向こう側の暗闇の荒野を、強烈なレーザービームで切り裂くかのように照らし出すが、そこには何も存在はしなかった。
ただし、吾郎がLED懐中電灯を点けた瞬間、砦の下側から「ザワザワ」と何とも不気味なざわめきが微かに聞こえてきたのだった。
吾郎の背筋に悪寒が走る。
「(おいおい、やはり砦の下に何かがいるぞ……)」
吾郎は不気味な音がする方向に銃口を向けつつ、そのまま屋上の階段に後退して屋上の鉄扉を閉めると、鉄の貫抜を乗せて扉を施錠した。
「とてもではないが、この暗闇の中で屋上の端から覗き込みに行く、などというホラー映画ではお決まりのパターンは、俺には無理だ」
吾郎は、まずは砦内という安全地帯に避難してから、どうするかを考えてみた。
砦の3階は、明かりがないので真っ暗闇であったが、小窓からは星明かりが微妙に差し込んでいた。
「あの小窓から覗いてみるか」
吾郎が小窓に近づくと、その小窓は大きな窓枠に鉄板がはめ込まれており、その真ん中に小さめの四角い穴が開いているという感じの小窓だった。
吾郎はその真ん中の小窓から外を覗いてみるが、角度が浅いせいで遠方は確認できても砦の真下までは確認できなかった。
「無理か。しかし、この鉄板は開かないのかな……」
吾郎は無造作に鉄板を押し込むと、鉄板は上側に押し上がっていく形の「突き上げ窓」だった。
「お、開くぞ」
吾郎は鉄窓を押し込んで開き、鉄窓の端に付けられている鉄棒を引いてつっかえ棒とすると、鉄窓が閉じずに開きっぱなしとなった。
吾郎は、窓から砦の下を覗き込むようにしながらLED懐中電灯も差し向けると、そこには何かの大きな塊があった。
「――!?」
一瞬、何が砦の下にいるのかを認識できなかった吾郎だったが、それがすぐに人の集団なのではと脳が理解し始めた。
「……人間?」
100名近くはいそうな人の集団らしき者達は、吾郎のLED懐中電灯が眩しいのか、一様に目の辺りを手で覆っている。
ただ、同時にその鮮烈な明かりが恐ろしいのか、集団のざわめきはより一層大きくなった。
吾郎は慌ててLED懐中電灯の明かりを弱めると、人間らしき集団が手で隠していた顔を露わにし始める。
その顔と姿をあらためて確認した吾郎は息を呑んだ。
日焼けをしたかのような健康的な褐色肌。
LED懐中電灯に照らされて、美しく反射する金と銀の中間色なプラチナブロンドの髪。
さっと軽く流し見しただけでもその集団の殆どは女性らしく、一様にビキニな服装なので肌はほぼ露出しており、誰も彼も豊満な胸が零れ落ちそうなほどであった。
更に最も特徴的なのが、集団の者達の耳であった。
ファンタジーではお馴染みの長細いトンガリ耳である。
「……まさか、ダークエルフなのか?」
そう、その特徴はまさにダークエルフそのものな集団が砦の下で身を寄せ合うように固まっていたのだ。
しかも、さすがはダークエルフの女性といった所なのか、軽く見ただけでも、その誰もがスタイル抜群の女性であり、下手をすれば100人以上かと思わる全員が、美女クラスの可能性すら出てきていた。
しかし、吾郎にとってはそんなことよりも、得体のしれない集団が押し寄せて来たことの方が大問題だった。
「……おいおい、なんだかとんでもなく面倒な厄介事が押し寄せてきたみたいだ」
吾郎は眼下の状況に思わず一人愚痴る。
吾郎の不安など知る由もないダークエルフの女性達は、吾郎が覗きこむ窓を不安そうな表情で見上げているのだった。
時折、少し肌寒い夜の風が吹きぬけて、吾郎の髪の毛を揺らしていく。
丸机の上にはエアガン、マガジン、BB弾袋などが無造作に置かれていた。
吾郎はネット通販で買った「アーモンド入りチョコ」(200金貨)を食べながら、マガジンにBB弾をBBローダーで押し込んでいく。
「…………」
吾郎は無言でマガジンを装着していないエアガンを手に持つと、スライドをカシャリと引いて軽く構えながらトリガーを引く。
装弾はされていないので、カチと乾いた音が鳴るだけだった。
吾郎は構えるのをやめて、エアガンを手元に引き寄せると、精神を集中させて「強化鍛冶師(インフレスト)」の力をエアガンに注ぎ込んでいく。
「(あの大黒蟻を一撃で殺せるように威力は今よりも更に10倍へ、威力に相応しい見た目として銃身(バレル)を少し伸ばして、エアコッキングの空気吸入圧縮量を増大化と、排出量の調整、これでスライド1回で10発は射撃できるだろう)」
吾郎はロングバレル化したエアガンの銃口を、荒野の果ての暗闇に向けて構える。
「……」
吾郎はアーモンド入りチョコを箱から指で摘んで口に放り込むと、マガジンを取って席を立った。
屋上を守るための防壁の側まで近寄ると、吾郎はエアガンにマガジンを装着してから、銃口を荒野の暗闇の果てに向かって構えると、そのまま引き金を引く。
威力を更に上げたせいか「――ズバンッ!!」と、今までとは違う重たい射撃音が辺りに響き渡った。
続いて吾郎は、トリガーを連続で引きしぼる。
ロングバレルから凄まじい勢いで飛び出し続けるBB弾。
予定通り合計10発を射撃した所で、トリガーを引いても弾が出なくなる。
吾郎はスライドを引いて空気を送り込むと、また射撃を始めた。
暗闇の荒野の中に乾いた射撃音が響き続ける。
「……よし、いけそうだな」
吾郎はエアガンからマガジンを抜き出すと、ゆっくりとした足取りで丸机に戻り椅子に座る。
弾が減ったマガジンにBBローダーで給弾しながら、またチョコを頬張る。
「ま、これなら大黒蟻をも一撃で仕留められるし、それなりに連射も可能だから、群れで出てきても大丈夫だろう。ただ、威力が完全にぶっ飛んだ領域に入り始めたから、ますます注意して扱わないとな……」
吾郎はエアガンのセーフティーのロックをかけるのは当然として、ワンクッションを置く為に、基本はマガジンも外しておくことにした。
「即応性は落ちるけども、暴発でケガをするのは避けたいからな」
吾郎はマガジンなどをダンプポーチに収納し、エアガンも右足のホルスターに戻した。
「さて、あとはのんびりするか……」
吾郎は椅子に座りながら腕を伸ばして背伸びをすると、ふいに背後の方の砦の下から「ガサゴソ」という物音が聞こえた気がした。
「……」
吾郎はまだまだ異世界に来たばかりなせいか、その違和感に対して「いやいや……まさかね」という元の世界の日本人らしい平和ボケな考えをよぎらせてしまうのだが、そこを何とか捻じ伏せて断ち切る。
「――くっ!」
吾郎は間抜け面から即座に表情を引き締めると、すぐさまに椅子から立ち上がりながらも、右手は右足のホルスターからエアガンを取り、左手はダンプポーチからマガジンを取ってエアガンに装着するや、背後に振り返えり終えた時には、既にエアガンの銃口は不審な音がした方角に向けて構え終えていた。
「……」
LEDランタンの明かりは屋上を囲む防御壁にまでは届いているのだが、その向こうは深い深い暗闇である。
吾郎は静かにセーフティーロックを外してスライドを1回引いた。
「……」
しばらく、不審な音がした方角の暗闇に向かって銃口を構えてみるが特に何の変化も無かった。
吾郎は右手でエアガンを構えながら、左手で丸机の上に置いておいたLED懐中電灯を手に取ると、そのまま明かりをつける。
強化済みのLED懐中電灯は防御壁の向こう側の暗闇の荒野を、強烈なレーザービームで切り裂くかのように照らし出すが、そこには何も存在はしなかった。
ただし、吾郎がLED懐中電灯を点けた瞬間、砦の下側から「ザワザワ」と何とも不気味なざわめきが微かに聞こえてきたのだった。
吾郎の背筋に悪寒が走る。
「(おいおい、やはり砦の下に何かがいるぞ……)」
吾郎は不気味な音がする方向に銃口を向けつつ、そのまま屋上の階段に後退して屋上の鉄扉を閉めると、鉄の貫抜を乗せて扉を施錠した。
「とてもではないが、この暗闇の中で屋上の端から覗き込みに行く、などというホラー映画ではお決まりのパターンは、俺には無理だ」
吾郎は、まずは砦内という安全地帯に避難してから、どうするかを考えてみた。
砦の3階は、明かりがないので真っ暗闇であったが、小窓からは星明かりが微妙に差し込んでいた。
「あの小窓から覗いてみるか」
吾郎が小窓に近づくと、その小窓は大きな窓枠に鉄板がはめ込まれており、その真ん中に小さめの四角い穴が開いているという感じの小窓だった。
吾郎はその真ん中の小窓から外を覗いてみるが、角度が浅いせいで遠方は確認できても砦の真下までは確認できなかった。
「無理か。しかし、この鉄板は開かないのかな……」
吾郎は無造作に鉄板を押し込むと、鉄板は上側に押し上がっていく形の「突き上げ窓」だった。
「お、開くぞ」
吾郎は鉄窓を押し込んで開き、鉄窓の端に付けられている鉄棒を引いてつっかえ棒とすると、鉄窓が閉じずに開きっぱなしとなった。
吾郎は、窓から砦の下を覗き込むようにしながらLED懐中電灯も差し向けると、そこには何かの大きな塊があった。
「――!?」
一瞬、何が砦の下にいるのかを認識できなかった吾郎だったが、それがすぐに人の集団なのではと脳が理解し始めた。
「……人間?」
100名近くはいそうな人の集団らしき者達は、吾郎のLED懐中電灯が眩しいのか、一様に目の辺りを手で覆っている。
ただ、同時にその鮮烈な明かりが恐ろしいのか、集団のざわめきはより一層大きくなった。
吾郎は慌ててLED懐中電灯の明かりを弱めると、人間らしき集団が手で隠していた顔を露わにし始める。
その顔と姿をあらためて確認した吾郎は息を呑んだ。
日焼けをしたかのような健康的な褐色肌。
LED懐中電灯に照らされて、美しく反射する金と銀の中間色なプラチナブロンドの髪。
さっと軽く流し見しただけでもその集団の殆どは女性らしく、一様にビキニな服装なので肌はほぼ露出しており、誰も彼も豊満な胸が零れ落ちそうなほどであった。
更に最も特徴的なのが、集団の者達の耳であった。
ファンタジーではお馴染みの長細いトンガリ耳である。
「……まさか、ダークエルフなのか?」
そう、その特徴はまさにダークエルフそのものな集団が砦の下で身を寄せ合うように固まっていたのだ。
しかも、さすがはダークエルフの女性といった所なのか、軽く見ただけでも、その誰もがスタイル抜群の女性であり、下手をすれば100人以上かと思わる全員が、美女クラスの可能性すら出てきていた。
しかし、吾郎にとってはそんなことよりも、得体のしれない集団が押し寄せて来たことの方が大問題だった。
「……おいおい、なんだかとんでもなく面倒な厄介事が押し寄せてきたみたいだ」
吾郎は眼下の状況に思わず一人愚痴る。
吾郎の不安など知る由もないダークエルフの女性達は、吾郎が覗きこむ窓を不安そうな表情で見上げているのだった。
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