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第4章 後来編
そんな46話 「希望を追う者」
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最近、足しげく通っている場所がある。
そう、ハンナベルの街はずれだ。
この街は私と相性が悪いのか、毎回ひどい目に遭う。
しかし、その都度、仮面の紳士が助けにきてくれる。
彼はあくまで私の事を知らない振りをしているけど、何度も助けられているうちに、少しの雑談を交わす程度には仲良くなっていた。
しかし自分で探しても、仮面の紳士は決して見つからない。
だから、仕方なく、こうして通うのだ。
毎日、毎日。
仕方なく、ね。
いい加減エグザスやローウェルには呆れられてしまっているが、ウスシィだけはニコニコと送り出してくれた。
くぅ、やっぱり女の気持ちは女にしかわからないものなのね。
「占い師さん…どこにいるのかしら」
占い師は大体同じ場所で遭遇する。
店を構えている事は稀で、探しても見つからない時すらある。
基本的には偶然出会うのを待つか、向こうから声をかけてくれる事を待ち、こうしてフラフラしていなければならない。
困った事に、最近私が占い師と会っている事が知られてしまっているらしい。
占い師とはめったに会えない。
だが、そんな占い師と頻繁に会っている者がいる、と。
背後に気を配ってみれば、消しているようで消せていない足音が3人分。
今日も誰かが私の後をつけているようだ。
路地からさらに細い通路に入り込む。
人一人が通るのが精いっぱいのこの狭さなら、尾行は出来ないはず。
逆に前から人が来たら困るけど…。
「こちらへ…」
注意していなければ聞き逃しそうな細い声が聞こえた。
横にはどこかの建物の裏口が見える。
「…ここ?」
だが、裏口の扉は開かない。
悩んでいると、背後からガタガタという音が聞こえた。
振り向いてみれば、うずたかく積まれた箱が奇妙な動きを見せて、道を作っているではないか。
かがんでようやく入れそうな小さな穴が姿を見せ、私を誘っている。
「こちらへ…」
今度ははっきりと聞こえた。
占い師の声だ。
服が汚れるのも構わず、穴へと入る。
穴の中は、地下洞窟になっていたが、どうやら屋内につながっているようだ。
地下洞窟を歩いていると、周りの土壁が何だか懐かしく感じた。
私、なんだか洞窟と縁があるみたい。
洞窟の奥にある梯子を伝い、屋内へ出た。
薄暗い屋内には、規則正しく並んだろうそく。
その周辺に見える紫色の魔法陣。
陣の先を見ると、店構えをしている占い師の姿があった。
「やっと見つけたわ、ダラーブ」
「ふっふっふ、ようこそ。お嬢さん…」
占い師の名はダラーブといった。
元々は北方で修行していた僧侶らしいが、ある時、人の魔力の流れから未来が視えるようになったのだとか。
結果、ダラーブは占い師になったはいいが、人心を惑わせた罪として祖国を追い出され、あちこちの街に滞在しては占いを行っているらしい。
「いつも大変ね。どうぞ」
懐からパンとワインを取り出し、ダラーブに渡す。
「お嬢さん、いつも持ってきてくれなくていいんじゃがの」
「お礼の気持ちなの。受け取って欲しいわ」
「…では、ありがたく」
ダラーブは祈りを捧げた後、パンを頬張った。
お金を持っていくと「修行中の身ですので」と断られるものの、物品なら受け取っても良いらしく、最近はこうして食べ物を持参している。
ダラーブは老人のようではあるが、性別は不明。
いつも黒いローブを羽織っており、フードを目深にかぶっている。
ちらりと見える目じりには、深いしわが刻まれており、確かに老人であるように見える。
「お嬢さん、今日もかい…?」
「もちろん。
バートフの…、仮面の紳士と会う方法を教えて」
「…うむ」
ダラーブは私の胸の辺りをじっと見つめる。
これが男性だったらと思うと少々の気持ち悪さを覚えるが、仮面の紳士と会うためなら仕方がない。
ダラーブは性別不明だし、良しとしよう。
「見えるぞ…。
ここだ、この場所に彼は現れる」
「えっ、ここ?」
こんな隠れ家的な場所に彼は現れるというのか。
「ねえ、もしかしてダラーブって仮面の紳士の事、知ってるの?」
「知ってる…とは…?」
「例えば、身内、とか」
バートフは屋敷で拾った時、既に記憶を失っていた。
彼が成長するまでの間、家族がいたと考えるのは至極当然だ。
「いや、残念ながら全く知らぬよ…」
「そう…」
「では、わしはまた移動するとしよう…」
占った後は必ずどこかへ行ってしまうダラーブ。
何でも、自分が近くにいる事で魔力の波長に乱れが起きるのを防ぐためなのだとか。
ちょっとよくわからないけど、そういうものなのかと納得した。
「あっ、ダラーブ。待って」
「…何か」
これは、ちょっとした疑問だ。
別に不満というわけでもない、ちょっとした好奇心。
「ダラーブ、あなたの言う通りにしていると確かに彼には会えるの。
でも、いつも何かに襲われて大変な目に遭うのよ。
もっと安全に会う事はできない?」
そう言うとダラーブはたまらず笑い出した。
「ファファファ…! ついに気付いてしまったか…。
すまんの、実は"魔力の波長"がどうというのはウソなんじゃ…」
「ウソ!?」
「お嬢さんが、その男と会うためには、お嬢さんがピンチになる必要がある…。
お嬢さんが自ら危険を回避した時には、現れなかったじゃろう?」
確かに、いつもピンチになるので、ローウェル達を連れてきた事があった。
悪漢の撃退には成功したものの、仮面の紳士には会えなかった。
翌日、占いが当たらなかった旨を話したところ、魔力の波長という話をされたのだが。
つまり私が一人でいて、ピンチに陥り、特定の場所にいると仮面の紳士が現れ私を助けてくれる、という流れだ。
思い返せばいつも同じパターンだった気がする。
それでも仮面の紳士が必ずいいタイミングで現れるわけではない。
割と、きわどいタイミングまで現れなかった事もある。
その日は結局魔法でどうにかしたっけか。
…もちろん仮面の紳士は現れなかった。
「わしはそれに巻き込まれたくないんじゃよ。すまんの」
なるほど、そう言う事なら確かにそうなのかもしれない。
仮にダラーブを無理に引き止めれば、ダラーブも襲われる。
ダラーブを助ければ危険は回避できた事になり、仮面の紳士は現れない。
「そう、そうなのね。
でも恨む気はないわ。
正直に話してくれて、ありがとう」
「ほっほっほ…、優しいお嬢さん。どうかお元気で」
「ありがとう、ダラーブ。あなたも明日まで元気でね」
ダラーブはゆっくりとした動きで店をたたむと、洞窟へと降りて行った。
ぱたんと、地下洞窟へ続くフタのような扉が閉じ、残された私は一人じっと待つ事になった。
そう、ピンチになる事を自ら待ったのだ。
ダラーブの話をきちんと噛み砕くとこうなる。
1.誰かに襲われる。
2.ピンチになる。
3.ピンチを回避しなければ、仮面の紳士が助けにくる。
つまり、この場にいれば、必ず危険がやってくるという事。
その覚悟だけはしておかなければならない。
危険をわが身で受ける、という覚悟を。
「………怖っ」
おどけてみるが、やはり怖いものは怖い。
部屋は薄暗く、いくつか立てられたろうそくの火だけがジリジリと熱を発している。
どこから敵が現れるというのか。
どんな方法で?
どんな攻撃を仕掛けてきて、どんな目に遭わされるのだろうか。
できれば本当にピンチになる前には、助けに来て欲しい。
だから私は覚悟を決める。
バートフに…仮面の紳士に会うため、多少の痛みぐらいはこらえてみせる。
そう、ハンナベルの街はずれだ。
この街は私と相性が悪いのか、毎回ひどい目に遭う。
しかし、その都度、仮面の紳士が助けにきてくれる。
彼はあくまで私の事を知らない振りをしているけど、何度も助けられているうちに、少しの雑談を交わす程度には仲良くなっていた。
しかし自分で探しても、仮面の紳士は決して見つからない。
だから、仕方なく、こうして通うのだ。
毎日、毎日。
仕方なく、ね。
いい加減エグザスやローウェルには呆れられてしまっているが、ウスシィだけはニコニコと送り出してくれた。
くぅ、やっぱり女の気持ちは女にしかわからないものなのね。
「占い師さん…どこにいるのかしら」
占い師は大体同じ場所で遭遇する。
店を構えている事は稀で、探しても見つからない時すらある。
基本的には偶然出会うのを待つか、向こうから声をかけてくれる事を待ち、こうしてフラフラしていなければならない。
困った事に、最近私が占い師と会っている事が知られてしまっているらしい。
占い師とはめったに会えない。
だが、そんな占い師と頻繁に会っている者がいる、と。
背後に気を配ってみれば、消しているようで消せていない足音が3人分。
今日も誰かが私の後をつけているようだ。
路地からさらに細い通路に入り込む。
人一人が通るのが精いっぱいのこの狭さなら、尾行は出来ないはず。
逆に前から人が来たら困るけど…。
「こちらへ…」
注意していなければ聞き逃しそうな細い声が聞こえた。
横にはどこかの建物の裏口が見える。
「…ここ?」
だが、裏口の扉は開かない。
悩んでいると、背後からガタガタという音が聞こえた。
振り向いてみれば、うずたかく積まれた箱が奇妙な動きを見せて、道を作っているではないか。
かがんでようやく入れそうな小さな穴が姿を見せ、私を誘っている。
「こちらへ…」
今度ははっきりと聞こえた。
占い師の声だ。
服が汚れるのも構わず、穴へと入る。
穴の中は、地下洞窟になっていたが、どうやら屋内につながっているようだ。
地下洞窟を歩いていると、周りの土壁が何だか懐かしく感じた。
私、なんだか洞窟と縁があるみたい。
洞窟の奥にある梯子を伝い、屋内へ出た。
薄暗い屋内には、規則正しく並んだろうそく。
その周辺に見える紫色の魔法陣。
陣の先を見ると、店構えをしている占い師の姿があった。
「やっと見つけたわ、ダラーブ」
「ふっふっふ、ようこそ。お嬢さん…」
占い師の名はダラーブといった。
元々は北方で修行していた僧侶らしいが、ある時、人の魔力の流れから未来が視えるようになったのだとか。
結果、ダラーブは占い師になったはいいが、人心を惑わせた罪として祖国を追い出され、あちこちの街に滞在しては占いを行っているらしい。
「いつも大変ね。どうぞ」
懐からパンとワインを取り出し、ダラーブに渡す。
「お嬢さん、いつも持ってきてくれなくていいんじゃがの」
「お礼の気持ちなの。受け取って欲しいわ」
「…では、ありがたく」
ダラーブは祈りを捧げた後、パンを頬張った。
お金を持っていくと「修行中の身ですので」と断られるものの、物品なら受け取っても良いらしく、最近はこうして食べ物を持参している。
ダラーブは老人のようではあるが、性別は不明。
いつも黒いローブを羽織っており、フードを目深にかぶっている。
ちらりと見える目じりには、深いしわが刻まれており、確かに老人であるように見える。
「お嬢さん、今日もかい…?」
「もちろん。
バートフの…、仮面の紳士と会う方法を教えて」
「…うむ」
ダラーブは私の胸の辺りをじっと見つめる。
これが男性だったらと思うと少々の気持ち悪さを覚えるが、仮面の紳士と会うためなら仕方がない。
ダラーブは性別不明だし、良しとしよう。
「見えるぞ…。
ここだ、この場所に彼は現れる」
「えっ、ここ?」
こんな隠れ家的な場所に彼は現れるというのか。
「ねえ、もしかしてダラーブって仮面の紳士の事、知ってるの?」
「知ってる…とは…?」
「例えば、身内、とか」
バートフは屋敷で拾った時、既に記憶を失っていた。
彼が成長するまでの間、家族がいたと考えるのは至極当然だ。
「いや、残念ながら全く知らぬよ…」
「そう…」
「では、わしはまた移動するとしよう…」
占った後は必ずどこかへ行ってしまうダラーブ。
何でも、自分が近くにいる事で魔力の波長に乱れが起きるのを防ぐためなのだとか。
ちょっとよくわからないけど、そういうものなのかと納得した。
「あっ、ダラーブ。待って」
「…何か」
これは、ちょっとした疑問だ。
別に不満というわけでもない、ちょっとした好奇心。
「ダラーブ、あなたの言う通りにしていると確かに彼には会えるの。
でも、いつも何かに襲われて大変な目に遭うのよ。
もっと安全に会う事はできない?」
そう言うとダラーブはたまらず笑い出した。
「ファファファ…! ついに気付いてしまったか…。
すまんの、実は"魔力の波長"がどうというのはウソなんじゃ…」
「ウソ!?」
「お嬢さんが、その男と会うためには、お嬢さんがピンチになる必要がある…。
お嬢さんが自ら危険を回避した時には、現れなかったじゃろう?」
確かに、いつもピンチになるので、ローウェル達を連れてきた事があった。
悪漢の撃退には成功したものの、仮面の紳士には会えなかった。
翌日、占いが当たらなかった旨を話したところ、魔力の波長という話をされたのだが。
つまり私が一人でいて、ピンチに陥り、特定の場所にいると仮面の紳士が現れ私を助けてくれる、という流れだ。
思い返せばいつも同じパターンだった気がする。
それでも仮面の紳士が必ずいいタイミングで現れるわけではない。
割と、きわどいタイミングまで現れなかった事もある。
その日は結局魔法でどうにかしたっけか。
…もちろん仮面の紳士は現れなかった。
「わしはそれに巻き込まれたくないんじゃよ。すまんの」
なるほど、そう言う事なら確かにそうなのかもしれない。
仮にダラーブを無理に引き止めれば、ダラーブも襲われる。
ダラーブを助ければ危険は回避できた事になり、仮面の紳士は現れない。
「そう、そうなのね。
でも恨む気はないわ。
正直に話してくれて、ありがとう」
「ほっほっほ…、優しいお嬢さん。どうかお元気で」
「ありがとう、ダラーブ。あなたも明日まで元気でね」
ダラーブはゆっくりとした動きで店をたたむと、洞窟へと降りて行った。
ぱたんと、地下洞窟へ続くフタのような扉が閉じ、残された私は一人じっと待つ事になった。
そう、ピンチになる事を自ら待ったのだ。
ダラーブの話をきちんと噛み砕くとこうなる。
1.誰かに襲われる。
2.ピンチになる。
3.ピンチを回避しなければ、仮面の紳士が助けにくる。
つまり、この場にいれば、必ず危険がやってくるという事。
その覚悟だけはしておかなければならない。
危険をわが身で受ける、という覚悟を。
「………怖っ」
おどけてみるが、やはり怖いものは怖い。
部屋は薄暗く、いくつか立てられたろうそくの火だけがジリジリと熱を発している。
どこから敵が現れるというのか。
どんな方法で?
どんな攻撃を仕掛けてきて、どんな目に遭わされるのだろうか。
できれば本当にピンチになる前には、助けに来て欲しい。
だから私は覚悟を決める。
バートフに…仮面の紳士に会うため、多少の痛みぐらいはこらえてみせる。
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