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第五章 動き出す人々
第七十四話 特殊なゴム
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事後処理を済ませたばかりのランディまで「面白いな」と興味深そうに見てくるのだから、相当厄介な代物なのだろう。そう、少しは警戒していたはずなのに、百聞は一見に如かずとは、よく言ったものだと思う。
まさに視界の暴力。これから訪れる快楽を教えるには、充分な役割を果たしていた。
「ね、それ。まだ在庫ある?」
「ロイはいけても、ランディは無理だろうな」
「一個ちょうだい」
スヲンがあごで示した在庫の場所にロイの姿が去っていく。
冗談じゃない。引き留めようとした腕は、散々虐げられて指先が揺れただけ。
「アヤ、入れるぞ」
足を持ち上げて、あてがわれたその言葉に意識が集中する。
そして、それを認識した瞬間。
アヤの目に、再び星が舞い散っていた。
「ぁ、ぁ、アァッ……ぅ、ァッ……あ」
凹凸の繊毛と突起物が散らばった特殊なゴムがスヲンと一緒に内壁を駆け分けて、一気に果肉をえぐってくる。
こんなものをスヲンに販売した人間はどうかしている。
使われた彼女が無事で済まないことを知りながら売ったのだとすれば、明日にでもレシートと一緒に叩きつけて返却したい。「在庫」が残り何個あるのか知らないが、出来ることなら使用済みになる前に知りたかった。
「アヤを殺すのは、俺。ロイでもランディでもない」
「ッ……ぅ……ぁ」
「どこにも逃げられると思うなよ。最後の息が切れるその時は、俺と一緒にいよう」
脱力した腕を無理矢理首にしがみつくように持ち上げられて、アヤは先ほどからイキ続けて馬鹿になってしまった身体をあやすスヲンにすがりつく。
頭を撫でられて、顔中にキスを落とされて、それでも止めてくれない腰の加速に逃げたくなる。実際、逃げていたかもしれない。だけど残酷な現実は、体力の限界と同時にスヲンの腕のなかにいることを突きつけてくる。
「一突きするごとに逝って、可愛いな。アヤ」
「す…ぉ……しゅぉ…ンッ…ぉ」
「うん、俺も。溶けそうなくらい気持ちいい」
ぎゅっと抱きしめられた腰だけを強く突き動かされる。
イキすぎて、声も満足に出せなかった。しがみついたスヲンの肌に息を押し付けて、黙って耐えて、耐えて、それでも絶頂を望む身体がのけぞって、スヲンの腕のなかで鳴く。
それこそ、生まれたての小さな子猫のように、掠れた悲鳴は耳を澄まさなければ聞こえないほど小さく零れ落ちていく。
「はっ……ぅ……はぁ……ぁ」
か細い息を繰り返し、小刻みに震えて涙をこぼす頬にスヲンのキスを受け入れる。
真っ白い海の果て。
自分でも驚くほど深い息を吸う音が聞こえて、アヤは正しくあの世の扉に触れた気がした。
「………み、ず」
どれほど時間がたったのか。
少し意識を飛ばしていたらしい。
喉が熱を通り越した乾きを訴えて、水分を求めてさまよっている。
妙に息苦しい。
海を越えて砂漠にでもやってきたのか。
ぼんやりと映る視界は、人肌のような色をしている。
「アヤ、水だ。飲めるか?」
「ぅ…ゴホッ…ぁ…ぅ……ごほっ」
「やっぱり無理か」
なぜか身体がうつぶせで、目の前が妙にぼやけている。
いつの間にかランディが隣にいて、ペットボトルの水を飲ませてくれていた。が、やはり上手く飲めずに口移しで飲まされる。
介抱されるのは今日が初めてじゃない。いつも、いつも、いつも。人間としての尊厳を失うほど酷使してくる彼氏たちのせい。
欲望にまかせてやり過ぎなのだと、アヤは酸素が薄くなった部屋が、うっすら明るくなっていることに気が付いた。
「いま……何時?」
気にするのはそこかと、ランディがちょっとだけ笑う。
時計の針は六時を回っているらしい。
どうりで、眠いはずだと。思考が記憶をシャットアウトし始めるのを感じていた。
「週末って本当、最高。ね、アヤ」
「ッ!?」
「おかえり。スヲンに殺されたのかと、本気で心配したんだよ?」
「……ぁ……ッ、ろ、い」
「だから言っただろ。土曜日の朝だ、ゆっくり楽しもう」
「すを……ん…っ」
なぜ自分がうつ伏せだと思ったのか。
またがり、重なるのはスヲンの肌。
吐き出したはずのスヲンの雄が、埋まったまま仰向けになっている。そこに乗せられている。
慌てて体を起こそうとして、はらりと落ちた髪をスヲンの指が愛しそうにすくって耳にかけてくれたが、慈愛に満ちたスヲンの笑みとは逆に、アヤの瞳は恐る恐る背後に移動していく。
背中に当たるロイの胸板。妙に苦しい身体。
「ひッ!?」
突如開始された律動に、アヤは慌ててスヲンの肩を掴んだ。
まさに視界の暴力。これから訪れる快楽を教えるには、充分な役割を果たしていた。
「ね、それ。まだ在庫ある?」
「ロイはいけても、ランディは無理だろうな」
「一個ちょうだい」
スヲンがあごで示した在庫の場所にロイの姿が去っていく。
冗談じゃない。引き留めようとした腕は、散々虐げられて指先が揺れただけ。
「アヤ、入れるぞ」
足を持ち上げて、あてがわれたその言葉に意識が集中する。
そして、それを認識した瞬間。
アヤの目に、再び星が舞い散っていた。
「ぁ、ぁ、アァッ……ぅ、ァッ……あ」
凹凸の繊毛と突起物が散らばった特殊なゴムがスヲンと一緒に内壁を駆け分けて、一気に果肉をえぐってくる。
こんなものをスヲンに販売した人間はどうかしている。
使われた彼女が無事で済まないことを知りながら売ったのだとすれば、明日にでもレシートと一緒に叩きつけて返却したい。「在庫」が残り何個あるのか知らないが、出来ることなら使用済みになる前に知りたかった。
「アヤを殺すのは、俺。ロイでもランディでもない」
「ッ……ぅ……ぁ」
「どこにも逃げられると思うなよ。最後の息が切れるその時は、俺と一緒にいよう」
脱力した腕を無理矢理首にしがみつくように持ち上げられて、アヤは先ほどからイキ続けて馬鹿になってしまった身体をあやすスヲンにすがりつく。
頭を撫でられて、顔中にキスを落とされて、それでも止めてくれない腰の加速に逃げたくなる。実際、逃げていたかもしれない。だけど残酷な現実は、体力の限界と同時にスヲンの腕のなかにいることを突きつけてくる。
「一突きするごとに逝って、可愛いな。アヤ」
「す…ぉ……しゅぉ…ンッ…ぉ」
「うん、俺も。溶けそうなくらい気持ちいい」
ぎゅっと抱きしめられた腰だけを強く突き動かされる。
イキすぎて、声も満足に出せなかった。しがみついたスヲンの肌に息を押し付けて、黙って耐えて、耐えて、それでも絶頂を望む身体がのけぞって、スヲンの腕のなかで鳴く。
それこそ、生まれたての小さな子猫のように、掠れた悲鳴は耳を澄まさなければ聞こえないほど小さく零れ落ちていく。
「はっ……ぅ……はぁ……ぁ」
か細い息を繰り返し、小刻みに震えて涙をこぼす頬にスヲンのキスを受け入れる。
真っ白い海の果て。
自分でも驚くほど深い息を吸う音が聞こえて、アヤは正しくあの世の扉に触れた気がした。
「………み、ず」
どれほど時間がたったのか。
少し意識を飛ばしていたらしい。
喉が熱を通り越した乾きを訴えて、水分を求めてさまよっている。
妙に息苦しい。
海を越えて砂漠にでもやってきたのか。
ぼんやりと映る視界は、人肌のような色をしている。
「アヤ、水だ。飲めるか?」
「ぅ…ゴホッ…ぁ…ぅ……ごほっ」
「やっぱり無理か」
なぜか身体がうつぶせで、目の前が妙にぼやけている。
いつの間にかランディが隣にいて、ペットボトルの水を飲ませてくれていた。が、やはり上手く飲めずに口移しで飲まされる。
介抱されるのは今日が初めてじゃない。いつも、いつも、いつも。人間としての尊厳を失うほど酷使してくる彼氏たちのせい。
欲望にまかせてやり過ぎなのだと、アヤは酸素が薄くなった部屋が、うっすら明るくなっていることに気が付いた。
「いま……何時?」
気にするのはそこかと、ランディがちょっとだけ笑う。
時計の針は六時を回っているらしい。
どうりで、眠いはずだと。思考が記憶をシャットアウトし始めるのを感じていた。
「週末って本当、最高。ね、アヤ」
「ッ!?」
「おかえり。スヲンに殺されたのかと、本気で心配したんだよ?」
「……ぁ……ッ、ろ、い」
「だから言っただろ。土曜日の朝だ、ゆっくり楽しもう」
「すを……ん…っ」
なぜ自分がうつ伏せだと思ったのか。
またがり、重なるのはスヲンの肌。
吐き出したはずのスヲンの雄が、埋まったまま仰向けになっている。そこに乗せられている。
慌てて体を起こそうとして、はらりと落ちた髪をスヲンの指が愛しそうにすくって耳にかけてくれたが、慈愛に満ちたスヲンの笑みとは逆に、アヤの瞳は恐る恐る背後に移動していく。
背中に当たるロイの胸板。妙に苦しい身体。
「ひッ!?」
突如開始された律動に、アヤは慌ててスヲンの肩を掴んだ。
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