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第17話 見慣れた街角 (前編)

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深緑だった庭の木々もすっかり赤や黄色にその色を変え、肌寒い冷気を運ぶ秋の朝は布団にくるまっていてもまだ熱を求めようとする。そうしてモゾモゾとシーツを身体に巻き付けようとしたところで、優羽は体の違和感に気付いた。
ずっしりと腰が重たい。


「───ッ!?」


瞬間。覆われた口に叫び声を飲み込んだ優羽は、その手の持ち主を確認して目を大きく瞬かせた。


「ふぇるッ?!」


どうしてここに?と、聞きたくても声はくぐもるだけで、その名前をもつ人物はどこかイタズラな笑みを浮かべて優羽を見下ろしている。自分の部屋に用もなく訪れる人物に何人か心当たりはあるが、嬉しそうに笑みを落としてくる輝の姿に、優羽は嫌な予感を巡らせた。


「おっと、暴れんなよ?」


予感は的中。
寝起き間近にどうしてここの連中たちは、おかしな機械を持って現れるのだろうか。
せめて起きてから、心の準備をさせてくれてからでもいいのに、まったくそのつもりはないらしい。


「ヒゥッ?!」

「こら、優羽。竜が起きても知らねぇぜ?」


卵形の小さな機械を膣に埋め込もうとしてくる輝から逃れようとした腰は、硬直した優羽にならって素直にそれを受け入れていく。状況がよくわからないが、輝の言葉通り竜が隣で寝ていることを確認した優羽は、昨日の夜を思い出して顔を赤く染めた。


「ほら、力入れんな。」

「~ッ…ンッ」


そうして竜に向けられていた視線は、秘部に埋めこまれていくもののせいでまた輝に戻る。


「よっしゃ、ちゃんと入ったな。」


ずるりと指を引き抜いた輝は、確認するようにポンポンと下腹部辺りを愛しそうに撫でて、優羽の奥に置いてきた卵を確認する。


「竜に渡すんじゃねぇぞ?」


そうして入れるものだけ入れて輝は行ってしまった。
ポカンとその背中を見送っていた優羽は、たしかに下腹部に埋め込まれたものを感じて顔を赤から青へと変えていく。


「ちょっ、輝?!」


嘘でしょと、去っていく背中に小声で訴えてみても、その人物は笑顔で手を振って部屋から出ていってしまった。
昨夜家族の一員になったばかりの竜の腕の中で目覚める朝にしては、あまりにも衝撃的な朝すぎる。


「も、やだぁ。」


消え入りそうな声だったにも関わらず、優羽の声に反応したらしい竜が眠そうに身体を動かしてきた。


「ん、優羽?」


どうやらまだ、完全には起きていないみたいだった。


「どないしたん、寒いからこっちおいで。」

「ッ?」


丁寧にシーツを引っ張って一緒にくるむように腕を回してきた竜に優羽の肩がわずかに震える。
捕まる前にベッドから抜け出そうとしたのに、優しく抱き締められた腕の中でそれはさすがに不可能だった。


「おはよ。」


そのまま至近距離で笑う竜にキスを求められて逃げられるほどの力は持っていない。


「んっ~ッおっおはよう。」


何度か甘い舌をはわせて、朝の挨拶が終わる。


「朝から優羽が横におるんて、なんかええな。」


無邪気な竜の笑顔にまた胸が苦しくなってきた。
ドキドキと異常な心拍はこの場合、輝のイタズラのせいだと思えなくもないが、普段怖そうに見える人が見せる笑顔ほど不意打ちなものはない。おまけに朝日がカーテンの隙間からこぼれおち、真新しいシーツの白さが彼のすべてを引き立たせていた。


「優羽、調子でも悪いんか?」

「えっ!?」


まさか、見惚れていたとも言えずに優羽は口ごもる。
ドキッと高鳴った心臓が、優羽をより不審に見せていた。


「もしかして、身体ダルいんか?」

「えっ?」

「昨日、えらいムチャさせてしもたからなぁ。」


すまんかったなと謝る竜に、ますます優羽の顔は赤くなる。


「優羽がえらい可愛かったから、ついついな。」

「可愛いって…ッ…そんな」

「アホいえ。優羽は可愛いで。」


真顔で言い寄ってくる竜に、優羽はゴクリと喉をならした。
なんなんだこの人は!?と一瞬身構えたが、ドキドキと鳴りやまない鼓動が彼に好意を寄せているため意味をなさない。


「なぁ、優羽。俺のことまだ怖い?」


ギシッと音をたててベットがきしんだ。
覆い被さるように上をとった竜に、優羽の心も軽くはずむ。


「うっううん。」


小さく首を横にふった優羽に、一瞬停止したように見えた竜が次の瞬間、勢いよく抱きついてくる。


「ほんまか、よかった。」

「ちょっ、竜ちゃンッ?!」

「うわっ!?」


深い口付けを交わそうとした竜が、しまったという風に身体をはなした。


「せっかく優羽が名前読んでくれたん聞き逃した!もっかい言ってくれへん?」

「ッ?!」


一体何事かと驚いたように竜を見上げていた優羽は、惜しみ無く恥ずかしいことを伝えてくる竜に言葉を失った。
そんな真面目に恥ずかしいことを口にされると、こちらのペースまでおかしくなる。
たかが名前、されど名前。
目を見つめながら囁く名前は愛の行為に等しい。


「あっ私、朝食の準備しなキャっ!?」

「逃がさへんで?」


グイッとつかまれたアゴが、強制的に竜の方にむく。
観念したように、優羽は顔を真っ赤にしながら彼の名前を呼んだ。


「りゅっ竜ちゃん。」

「なに?」


無駄に体が熱い。
冷気が差し込むはずの気候にも関わらず、優羽は体に変な汗がわき出るのを感じていた。


「何もな…ッ…ん」


甘い痺れにも似たキスの嵐に思考がふらつく。が、ふいに甦ってきた下肢の違和感に優羽は叫んだ。


「ダメッ!」


ドンッと、思わず突き放してしまった。
竜の少し驚いた顔に、優羽は言い訳を探して視線を泳がせる。


「朝、輝に膣に小さな卵を埋め込まれちゃったの。」


とは、もちろん言えない。
挙動不審に言葉を探して落ち着きをなくし始めた優羽に、竜はポンポンと頭を撫でてそれ以上の詮索はしないと優しく笑った。


「優羽、今日空いてるか?」

「えっ?」


突拍子もない竜の質問に、優羽は首をかしげる。
そんな優羽の額に自分の額を押し付けながら竜はいたずらに笑った。


「デートしよか。」


本当は両手をあげて喜びたいところだが、ついさっきそれを起こさせない出来事が起きたばかりに優羽は困惑の表情をむける。


「えっと…その」

「なっ?優羽の行きたいとこでいいから。」

「ぅ…う~ん」

「よっしゃ、決まりな!」

「えっ!?」


悩み声をあげただけなのに、すっかりその気になって笑顔をこぼす竜を見たとなっては、今さら行かないとは言えなかった。


「ほんじゃ、とりあえず朝飯でも食いに行こか?」

「あ。ご飯はそのっ、みんなで食べるっていうのが家族のルールで。」

「ああ、せやったな。」


すっかり忘れてたと笑う竜の仕草に、思わずつられて優羽も笑う。
なごやかな雰囲気が戻ったところで、優羽はホッと息を吐いた。


「よかった。なんとかバレてないみたい。」

「なんか言うたか?」

「へっ!?ううん、なっ何にも!?」


その後、浮かれる竜を横目にぎこちない動きで服を着た優羽は、うんともすんとも言わない小さな卵形の機械を埋め込んだまま台所に立っていた。
横には常に竜がいるので、気が抜けないどころか緊張感がますます募ってくる。


「輝のバカ。」


ここに来るまでに何度も竜の目を盗んで輝の部屋に行こうと考えてみたが、しっかり力をいれて意識していないと産んでしまいそうになる卵のせいでそんな考えもまとまらない。


「なんか、こないしてると新婚さん見たいやな。」

「えっ!?」


また、照れもせずに肩を組んでくる竜に顔が熱くなる。


「もう、竜ちゃ──ひッ?!」


思わずビクリと体に悪寒が駆け抜けた。
突然感じた違和感に、焼いていた卵焼きをひっくり返す腕が震えている。


「優羽?」

「ヤッ…なっ~…なんで」


焦げていく卵焼きよりも、音が聞こえるほど振動しはじめた下腹部の卵に意識が集中していた。
慌てて足を閉じてみたが、力を入れればいれるほど、それは優羽の中で暴れるように小刻みに揺れていく。


「アッ…だっだめ…ヤッ」


心配そうに肩を抱いてのぞきこんだ竜が、優羽の顔を見てスッと目を細めた。


「どないしたん、なんかめっちゃエロイ顔してるけど?」

「ッ?!」


誘ってんの?と唇を舐めあげられたせいで、優羽は顔を赤くしながら首を横に振って否定する。
自分が望んで今の状況を作ったんじゃない。
そう訴えたくて真剣に耐えてみても、それは優羽の願いを裏切るかのように強さを増していく。


「ちが…っ…クッ!?」


もうダメだと腰が抜けそうになるほど、膝がガクガクと震えていた。
竜に支えられているからなんとか立っていられるが、手を離されてしまえばここで崩れることは必死。


「ッ?!」


そこで視界に飛び込んできた人物に、もしかしてと思わなくても確信がいった。


「朝から見せつけんじゃねぇよ。」


台所の入り口に背を預けてもたれかかる輝の姿を殴りたい。
そう思って視線が合った瞬間、下腹部に感じていた振動が変な動きをみせた。


「ふァっ…ッア…ヒッ!!?」


思わずもれてしまった声を慌てて両手で押さえた優羽に、おのずと視線は集まる。


「あーあー。」


苦笑した竜の腕の中で、優羽は涙目で快楽を受け入れまいと奮闘していた。


「やめ…止めッ!?」


なんとかこらえて平常心を装ってみるが、まるで生き物のように身体の中をグルグルと駆けまわる機械の動きに理解が追い付かない。変にピンポイントを刺激してくる不可解さに難色を示した優羽は、クスリと笑った輝の手に握られているものを見て顔を青ざめさせた。
わざとらしく、手のひらにすっぽり収まるほどの小型リモコンを輝は見せつけてくる。
台所の入り口に体を預けたまま、意地悪な笑みでそのリモコンに指を走らせて遊んでいるのだからたまらない。


「ッ…あっ…ッぅア」


これ以上は無理だと、優羽は竜にしがみつくようにしてその体を反転させた。


「可愛いことしてくれるなぁ。」


どこか嬉しそうな竜の声が上から聞こえてくる。


「妬かせてくれるじゃねぇか。」


イタズラに笑う輝の声が後ろから近づいてきた。
二人の男の間で、生まれたての子羊のように立つことがやっとの優羽には快楽を圧し殺す方法が見つからない。


「はぁ…ッも…ヤメ───」


竜の服をつかむ手に力がこもっていく。
そうして小刻みに震え続けていた優羽の身体は、ピンポイントに集中しはじめた孤高の凌辱行為に限界を迎えようとしていた。


「──ッ!!?」


ヤバいと感じた優羽は、竜の腕の中から懇願するように背後の輝を睨み付ける。
だが、他の男の腕の中から涙をこらえた目で小さく首を横に振る優羽の姿は、輝にとってはただの餌にしかならないようだった。


「てるキライ。」


涙声でやっと紡ぎ出せた言葉は、絶頂への敗北を認めていた。
もう本当にダメだと全ての力を委ねようとしたところで、ふいに振動が止む。


「っ?」


突然、沸点の入り口を叩いていた快楽の振動が鳴りやみ、台所には静寂が訪れた。
妙にうずく身体を残したまま止まった機械に、優羽は潤んだ瞳のまま輝と竜の顔を交互に見上げる。


「はぁ…はぁ…ンッ」


ジッと見られていたことに反応して、ギュッとしまった内部から押し込まれたものが出てきそうになる。


「優羽、調子悪いんやったら休んどってもエエんやで?」

「甘やかすんじゃねぇよ。」


気遣いを見せてくれた竜を追いやるように、ゆっくり歩み寄ってきた輝が優羽の身体を引き寄せた。


「ちゃんと出来るよな?」

「ひぁッ?!」


半分飛び出していた機械を再び奥までパンツの上から器用に押し込んだ輝のせいで、優羽は背筋をしゃんとさせる。
訴えるように睨んでも、やっぱり輝には逆効果でしかないらしい。


「俺のことキライつったことは、後でゆっくり後悔させてやるよ。」

「な…ィッ!?」


パンっとお尻を叩いてきた輝の動きは、優羽を作業に戻らせるためのようにしか見えなかったが、耳元で恐怖の宣戦布告を受けた優羽にはそれが単なる序章でしかないことはわかっていた。
すでに後悔していると言えば輝は許してくれるだろうか。


「てか、輝は何しに来たん?」


安易に"邪魔だ"と言っている竜の口調に、輝は余裕の表情を向ける。


「竜が、優羽に手ぇ出してねぇか見に来たに決まってんだろ?」

「そんなこと言うて、どっちが手ぇ出してんねん。」

「俺はなんもしてねぇよ。なっ、優羽?」


許してもらえるなんて、浅はかな期待だったことはすぐにわかった。
なんとか動悸を落ち着かせようとしていたのに、輝が名前を呼んだせいで優羽は大きく息をのんで固まった。
無言で首を上下にゆらすことしか出来ない優羽に、細まった視線がふたつ。


「手ぇ出すなよ。」

「出さへんよ。」

「嘘つくなって、目が座ってんだよ。」

「もとからじゃ、ボケ。」


仲がいいのか悪いのか、顔を向き合わせて牽制し合っていた輝と竜は、真っ赤にうつむいていたはずの優羽の悲鳴にそろって顔をむける。


「どうした?って、あーあー。」


ちょっと目を放しただけなのに、しっかりと卵焼きは黒く変色していた。
おかしそうに輝が笑いをかみ殺している…いや、噛み殺しきれていないが、さきほどとは違う感情で泣きそうになっている優羽の肩に手をまわして慰めの台詞を口にする。


「まっ、気にすんな。」

「確実にお前のせいやんけ。」


優羽の心境を、そっくりそのまま竜が代弁してくれた。
卵焼きを焦がしてしまったことを人のせいにするわけにはいかないが、この場合はあきらかに輝のせいだから仕方がない。


「あぁ、もう。昼からのデートは邪魔せんとってなぁ。」


手際よく作業に戻る竜がこぼした愚痴に、優羽は隣にたつ輝の口角があがったのを感じた。
たぶん、よくないことが起こるに違いない。


「俺が街まで車出してやるよ。」


ほらきた。
でも、絶対に竜は断ってくれる!!
そう思っていたのに、あっさりと了承してしまった竜の後ろ姿に優羽の希望はガラガラと崩れ去っていく。


「ってわけだ。」

「ッ?!」

「しっかり歩けよ?」


パクりと耳たぶを噛んでくる輝に、優羽は口をパクつかせることしか出来なかった。
もうイヤだ!もう帰りたい!
車の振動に合わせて躍り狂う玩具に、優羽は必死に声を押し殺しながら後部座席に座っていた。
もう何度イッタかわからない。
街までそんなに時間がかからないはずなのに、こんな日に限って工事中で道が渋滞していた。


「なぁなぁ、どこ行く?」


眩しいほどの笑顔で助手席の竜が振り向いてくるが、優羽はうつむいたまま顔すらあげられない。


「酔ったんか?」


首を横にふることしか出来ない優羽に、竜はますます心配そうに顔を寄せてきた。


「ァッ?!」


ビクッと涙目で酸素を求めるように顔を上げた優羽の歪んだ顔に、振り向いていた竜とバックミラー越しの輝の視線が細く変わる。両手で口を押さえて声を我慢しながら、くねくねと腰と足を擦り合わせて絶頂を堪能していく優羽の姿に知らずと喉が鳴った。
時おり漏れる切ない吐息と、メスの匂いが車内に充満して理性を脇へ追いやろうとするが、今ここで犯してしまっては当初の目的は果たされない。


「めっちゃ、うまそう。」


真顔で見つめてくる竜の視線をそらすことも出来ずに、優羽は懇願の瞳で訴える。
羞恥を避ける唯一の方法として強く目を閉じてみたが、耳からでも聞こえるほど振動が増した玩具にそれは叶わなかった。
犯人は、わかってる。


「つく前から疲れてんのか?」


からかうようにバックミラーを覗きこむ、運転席の輝のせいだ。 


「ッぁ…ン…」


開けた目のかわりに、唇を噛み締める。


「ッ…ンッ…~ふ…ゥ」


イヤでも鼻から短い息がもれてしまう。
一度知ってしまった快楽は右肩上がりに昇っていくうえに、走る車から逃げられる能力は残念ながら持っていない。
獲物を狙う肉食獣のように見つめてくる竜と輝の視線に優羽の精神は限界を迎えていた。
自然と涙腺がゆるむ。


「ついたぜ。」


まるで頃合いを見計らったように到着した繁華街に、車内の空気が揺れた。


「優羽、立てるか?」


くすくすと、苦笑しながら見つめてくる竜を優羽は潤んだ目で見つめかえす。


「立たれへんのやったら、とったってもえーで?」

「ッ…ん?」

「寝起きから入れとったんやから、さすがに限界ちゃうの?」

「ッ!?」


ニヤリと口角をあげた竜の瞳に、絶句する優羽の顔がうつっていた。
バレてるかもしれないは思っていたが、まさか"あの時"からとは思っていなかっただけに心臓がギュっとつまる。


「抜くんじゃねぇよ。」


いつの間にか駐車し終えた輝がエンジンを切った流れで、そのままガシッと竜の手首をつかんだ。
ピリッとした空気が車内に走る。


「邪魔すんな。」

「そのまま、かえしたるわ!」

「それは俺が優羽のために作ったヤツだから、今抜いたら意味ねぇだろーが。」


何の意味がないのかはよくわからないが、言い争う二人へと救助を求めることも出来ないまま優羽は荒い吐息を繰り返していた。
断続的に漏れる声とこすりあわせるように動く太ももが、卑猥な機械音を優羽の体に深く打ち込んでくる。


「ヤッ…いやぁアッアァァア」


込み上げてくる強烈な快楽に、声が押さえられない。


「あっ、ヤッベ、最強になってら。」


逃げることも出来ないままもがく優羽に視線を向けた二人は、牽制しあった際に自分達の下敷きにしてしまったリモコンを見つけてスイッチを切った。


「どないしてくれんねん。」


トロンと脱力してしまった優羽を見た竜が、非難の目で輝を見る。


「まぁまぁ、替えの服はつんであるからよ。」

「そういう問題とちゃうわ!」


怒りながらも、竜は優羽の服を探すように車内を捜索し始めた。
ものの十分で愛液まみれの服から小綺麗なワンピースに着替えさせられた優羽は、それでもやっぱり取り除いてもらえなかった下半身に足元がおぼつかない。


「ちょ、まっ、アッ?!」


熱がこもった身体に外気は心地よいはずなのに、冷めない身体の熱に物足りなさを感じながら、優羽は車外に放り出した体をなんとか前へと進ませる。
追いかける二人の背中は、近いようでとても遠くに感じていた。


「どないするん。あんな顔、他のヤツラに見せるんイヤやし。」

「なっ、俺って天才だろ?」

「アホちゃうかってか、アホやろ。」

「優羽って最高にイイな。」

「人の話、聞けや。」


ボケたおした輝が大満足の顔で、必死にあとを追いかけてくる優羽を見つめる。


「せやけど、これ以上邪魔するんやったら俺も輝の邪魔すんで?」


冗談でかわすにはあまりにも低い声に変わった竜に、輝は肩をすくめて残念そうに息を吐き出した。


「しゃーねぇ。優羽、取ってやるからこっちこい。」

「えっ?」


やっと追い付いたと思ったとたんに、優羽は輝に腕を引かれて一軒の店の奥に連れ込まれた。それがひと目で高級な店だということはわかったが、奥にある特別室らしき場所に通された優羽は、ただただ驚きに目を見張っていた。場違いなほど綺麗で広い空間に知らずと身体が緊張する。
二人きりで使うには勿体ないほど贅沢なVIPルームのソファーで、慣れた様子で座る輝に手招きされても優羽は動けないでいた。


「いいからこっちこい。」

「ッ?!」
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