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サヨウナラ、アラーナ領都 3
しおりを挟むこうして、念話しながら彼等を見守る中円陣を組み戦っている5人の騎士。背中を預ける事の出来る仲間って良いよね。
たった5人だけど、優勢の様だ。うん、ゴロツキ30人と言えども、数の暴力は大きい筈。腐っても騎士。なかなかの手練れに見える。しかし、其の手練れよりも5人は強かった。まだ若いのに殺さず戦闘力を削いでいる。
この世界は手を切り落としてもスパッと切れていればポーションが有れば神経まで問題無くくっ付く。それがあるからか武器を持っている腕をスパ、スパと切り落として行く。大抵はそれで戦闘不能で転げ回っているけれど、それでも向かって来る者は両腕を切り落としている。出血死しない様に傷口だけ塞ぐか・・・その後くっ付くかは、知らない
こうしてクズラ以外の騎士達は戦闘不能になった。アワアワとしながら見ていたクズラ。逃げ道は無い。結界で囲っているから
「とうとう、貴方で最後ですね。クズラ様。まだ何か言いたい事が?」とリーダー格の騎士が
「う、うるさい!王家より使者が来ればお前達なんぞに好き勝手はさせん!」
「フッ、その王家が来るまでは私が領主。お前は何をされても文句は言えんな?」とニヒルに笑うアラーナ様。
「ヒッ!」と今更息を呑むクズラ
「馬鹿な人」思わず出てしまった
チラリとこちらを見遣り、また目線をクズラに移すと
「まぁ、お前なんかでも今すぐ居なくなれば領民達も困るだろう。見逃してやる。」刺す様な強い視線。殺気も込められたそれにズボンを濡らすクズラ
「そ、そんな強気で居られるのも今のうちだぞ!アラーナ、お前は平民となるんだ。何をされても文句は言えなくなるんだ!」
「ハァ。」ため息を吐き残念な者を見るアラーナ様
「アンタ、本当にバカね。今アンタの生命もそこに転がってる騎士もどき達の生命も、現アラーナ当主のアラーナ公爵様が握っているのよ?今直ぐ死にたいなら、私がヤッテあげるよ?ツマラナイモノは切りたく無いけど。それよりイライラの方が上だし、このままアンタ生きてたら他の人が迷惑しそうだし。」我慢出来無い私はスッとクズラの首筋に三日月〇〇を押し当てる。血がツーッと落ちる。
「や、やめろーーー、辞めてくれ!」
狼狽え無様を晒すクズラ。余計に出血した
「暴れないで。首、ちょん切れるよ?アンタは、アラーナ様を奴隷にしようとした癖に何言ってんのよ。」
「いや、平民だ。奴隷はその後に・・あ、イヤ、違うんだ!俺のペットにしようと、美しいモノを虐めるのが好きなだけだ!」
「あーあー、アンタの趣味はどうでも良い。てか、まさかアンタの館に居ないでしょうね?そんな不幸な人」
「いや、寧ろ私が求められて『もう良い。お互い両想いなら』・・・」
アラーナ様は苦笑いしながらクズラを見て
「では、私は行く。さらばだ。もう2度とこの国には戻って来ない。」
くるりと踵を返すと馬車に歩いて来られるアラーナ様。いや、もうアラーナの名は捨てられたのだ。後でお名前聞いておこう。
と、そこで門近くになって兄を心配して外を見守って居た15歳くらい?の少女が馬車から飛び出し
「お兄ちゃん!!」と飛びついて行く。
「ああ、心配かけたな。もう大丈夫だぞ。」とそっと妹さんを抱きしめる
うんうん。ありそうな展開でも涙が出る。良かったね。コレで売り飛ばされずに済む
騎士達と共にも元アラーナ様は馬車に乗られた。
最後に残った私達は
「あ、そう言えば彼等が居なくなったらモンスターや諸々アンタ達で対処するんでしょ?大変ね。まぁ、頑張って!5人に出来た事だもの大勢居ればなんて事無いもんね。ほら、手向けに手はくっ付けといてあげる。黒鉄!」と声をかけヒールで治してやる。すると
「ヲフ、ヲフッ!ワヲーーーーン」と黒鉄が吠える。それに呼応して、馬車から降りて来た狼父さんと、母さんが揃って
「「ワヲーーーーン!!!」」と遠吠えると存外近くから
「「「「「ワヲーーーーン」」」」」
と返って来て、狼の群れが出て来た。どうやら父さん、母さんの仲間が探しに来てくれた様で居並ぶ様は圧巻だ。カッコいい!
「「「「「「グルルルルゥ」」」」」」
「「「「「ギイャーーーーー!」」」」」
周りに居た騎士達はギャラリーとなっていた民達も皆一目散に門の中に入って行く。
「さっ、行こっか!」と私たちは幾分スッキリとして馬車に乗り込んで行く。ゾロゾロと。仲間の狼達と共に。
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