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優
しおりを挟む杏里・・・
初めて会った時から何か、こう気になっていた。 波長が合うと言うのか、甘えん坊なのに甘える事が苦手なその様子に苦笑いが出る。 犬気質なのに、野良猫の様に擦り寄って来ては、シャーーっと逃げて行く。不思議な子だ
それとなく、見ているその中で
ああ、色々あって、こうなったんだな。今迄は、奪われる事しか無かったんだなと分かった。 まあ、馬小屋の所で元婚約者のタカシ、と元婚約者を奪った可愛がって面倒をみていた会社の後輩のヤーコ。アイツらは、最低な部類の人間。それ以外の面でもクズ確定な言動をしていた。
☆ ☆ ☆
始まりは、あの、月の晩からだった。召喚なんて非現実的な事柄。
此処に召喚された奴らの半数は、まぁクズな奴らと言う印象だ。残りは、知らぬ異世界へ召喚されて戸惑って今後を決められない奴ら。
あの、俗物そうな、王族と貴族連中にまんまと騙された、まあ、騙されていたいと思ってる奴と、取り敢えずどうにも出来ず流れに乗ってみるやつ。色々だけど、皆んな我が身で精一杯だ。
そんな中で数人は、俺と似た波長で何となく信用しても良さそうって人達に声を掛けた。 その中でも、やたらと何故か?王女に敵視されてる杏里。 何とか頑張って愛犬を守ろうとする姿に好感を覚えたのと、コイツとは合うなと思ったから。
ステータス確認の間で、俺は市井に降りる組の生産者だと分かった。正直この城から抜け出すのに策を弄せずに済んで良かったと内心喜んだ。
さも、哀しげな表情をして見せる王女だが、その内心が透けて見えて怖気が走った。気持ち悪い。こちとら精神は45歳だそんな作り笑顔に騙されないさ。
全てが終わって、俺たちも部屋に案内される時、杏里だけ違う場所に連れて行かれたのを見逃さなかった。 取り敢えず部屋に案内された後に探すと。何と、馬小屋の外に居た。殺されなかっただけマシと彼女は笑った。 そう言う扱いに慣れている笑い。 全て受け入れて自分で何とかする事に慣れている者。人に頼る事を知らない者。 そう言う笑い
その時の笑顔を見た時から惹かれていたのかもしれない。 いや、初めて会った時から・・・せめて、自分は大切にしたいとそう思った。
そんな事を思っている俺に、あの王女は生産者でも、自分付きになればずっと王城に居ていいと。優遇してやると気持ち悪い上目遣いで言ってきた。 自分は、そんな器量は無いからとやんわり断ったがしつこかった。
ねっとりと上から下まで見て媚びてくる女は気持ち悪いだけだった。
何とか逃れ、城を出れて良かった。
城を出てから、それからの日々は、前へ向かってどんどん良い方向に進み順風満帆でコレからは、皆んなで幸せになれると確信していた。
あの時まで
愛犬の黒鉄を失ってからの杏里は、無になってしまった。
笑顔はなくなり。食事も清羅が無理矢理やっとの事で飲み込ませている。彼女の全てだったのだろう。黒鉄だけが杏里の心の置きどころ。俺は、まだ杏里の内側に入り切れていない。コレから俺を知って欲しいと思っていた矢先の出来事。俺も、悲しいくらいだから杏里の絶望は想像もつかない。
きっと、今迄関わった人間以上に大切な存在だったのだろう。黒鉄だけは裏切らなかっただろうから
オークとゴブリンに対峙する時だけ意識が覚醒する様だ。淡々と屠るその姿は、切なく美しかった。自分の身を切るように斬りかかる。黒鉄が斬られたのは自分が周りをきちんと見ていなかったせいだと自分を責めていた。
三日月丸の刀身が赤黒く染まる度に杏里の心の傷は深く闇に閉ざされていくようだった
そして、オークの集落・・・周りを気遣って、付与をした後た後、ホッとした様な安堵の表情を浮かべオークの集落の方だけを、その群れを率いるモノだけを見ていた
まるで、黒鉄の側に逝こうとするかの様に突き進む杏里 鬼神の様なその姿
置いて行かれそうな危機感があった
やっと追いつき、2人で背中合わせに戦う
そして、キングとクイーンに対峙した。
いつの間にか出ていた大きな三日月を、背負ったかの様なその姿は禍々しく、巨大でとても勝てる気がしなかった。強すぎる。それでも、何度でも起き上がり挑む杏里
俺も斬られ此処までか、と思った時皆が追いついてくれた。
清羅が癒しの光を届けてくれ生き返った気がした。力が漲る。気力も
ふと、杏里を見ると驚いた様に目を見張り何事か呟いた。 月の光に照らされた杏里が持つ三日月丸の刀身は漆黒に血の赤から月の光を放つ刀身に変わり憑き物が落ちたかの様な凪いだ表情の杏里が居た
月に照らされてその身に遷した様な杏里と共にオークキングを討った。討たれたオークのあの穏やかな優しい死に顔を俺は一生忘れないだろう
糸が切れたかの様にふらつき倒れる杏里を抱きとめ囁く
「俺にしておけ。俺が全て受け止めてやる。俺に堕ちてこい。黒鉄の事も全て受け止めてやる。」と
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