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あの頃の様に

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刺されてしまうのと、犬、猫にも関する残酷なシーンがあります。苦手な方はお読みにならない様お願い致しますm(._.)m


☆         ☆         ☆         ☆         ☆


少年視点

彼女は、眠ってしまった様だ。
色々と1人で抱えて生きて来たんだな。あの頃と同じで。言っても仕方のない、どうにも出来ない事だから言わない。 

前、何かの時に彼女が独り言で呟いたのが聴こえた。そんな想いは心の鎧の下に押し隠し、柔らかく優しく微笑んでいた彼女。猫と犬と共に暮らし、お互いが愛し支え合って生きていた。
幸せなのだと笑っていた彼女の事が、ずっと頭から離れなくなったのはいつからだったか・・・

出来るだけ彼女が散歩するコースや時間に合わせて散歩する様になった。
会った時の彼女のふわりと綻ぶ笑顔が好きだった。 

やっと勇気を出して彼女に好きだと。共に過ごす時間を欲しいと伝える決意をした。

そして、散歩の時会えず彼女の家に行ってみた。 いつもは閉まっている門が開いていた。嫌な感じのする空気感に不安を覚える。 別荘地の一人暮らしだからと、塀も高くし、防犯に気をつけていた彼女。

玄関扉も開いたままだ。靴が散らばっている。不安な気持ちを押し殺しながら愛犬と共に名を呼ぶも返事は無い。次第に大きくなる不安感。

藍凛あいりさーん、おはようございます。優翔ゆうとです。」

声をかけるも返事は無い。
藍凛あいりさーん、お邪魔しますよー?」

と、言いながら中に入った。彼女の気配が無い。 彼女の愛犬も愛猫も顔を出さない。今まではこんな事は無かったのだけど・・・そもそも、当たり前だが彼女の家の中に1人で入って来る事自体が無かった。


リビングの中は、荒れていた。争ったのだろうか?
そして・・・彼女は、いた。 明らかに事切れているのが分かる。それでも、確かめずにいられなかった。 まだ温かい彼女、藍凛さんを抱きしめる。 愛犬と愛猫を守ろうとする様に抱いている。3人共お互いを守ろうとしたんだな。

少し、離れた所に知らない女性が居る。血まみれだけど・・・怪我をしているようで泣いている。でも、この女性が私が愛する藍凛を殺したんだろう。 泣いていても可哀想とも思わない。 世界が急に色褪せていった。


泣いていた女が、
「助けてください!!犬と猫が襲って来て、すごく痛くて動けないんです。」
と気持ち悪い上目遣いで見て来る。冗談じゃない。こっちを見るな


警察に連絡して来て貰った。 


警察での取り調べに素直に自供している。
隣の部屋で最初の事情聴取を行っているから、聞こえてしまった。

犯人は、藍凛さんの元婚約者の妻。風子と言うらしい。元々が藍凛さんの会社の後輩だったらしいが結婚を間近に控えたクリスマスに所謂、略奪婚したらしい。

だが、元々浮気性だったのか元婚約者殿は浮気を重ねており、妻の精神は不安定だった様だ。 最近では、
『コレだったら、藍凛の方が良かった』と夫が言う様になりますます、不安定に。子はおらずまだ良かったと言える。

会社の情報に不正アクセスし、藍凛さんの自宅を調べた様だ。そして、今回の事に及んだと。


『先輩がいけないんです。別れて10年も経ってるのに、未練がましく夫に付き纏って。私の方が、若くて、可愛いのに!
先輩のせいで、仕事辞めようと思ったのに辞められなくてまだ、働かなきゃいけないし!ホント、嫌な女!!

それに、あの猫!先輩の事やっと切ってやったのに引っ掻いて来て、私の可愛い顔に傷がついたわ!だから殺してやった

それにあの犬!私に噛み付くなんて!なんてバカ犬なの!!あの犬のせいで、先輩の事、5回しか刺せなかったじゃない。もっと、顔とか切りつけてボロボロにしてやりたかったのにぃーーー!

それなのに、ネコを蹴り殺したら先輩、馬鹿みたいに泣いて助けようとして、刺しやすかったわー

そしたら、余計にあの犬が吠えてうるさいし、噛みついて来て、もう、あのバカ犬!!先輩そっくりでムカつくわー、

先輩をもっと刺そうと私が頑張ってるのに、噛みついて離さないから、先輩の代わりにあの犬を刺すしか無かったんだから。

あーーー、ホント嫌な女

でも、先輩、自分が刺されるよりネコとかイヌを痛めつけた時の方が、泣いて懇願して・・・アッハハハハバッカよねー

あ、でも、良い事もあったわ!あのイケメン!旦那よりあの、イケメンの方が良いわ!今度はあの人にしようっと』


なんてクズな事を言っていた。なんて事だ。あんなバカな・・・愚かな女に彼女が殺されてしまうなんて。

それから、裁判で藍凛さんの元婚約者の顔も見た。優しげではあるがどこか崩れた感じのする男だった。こんな奴らのせいで、



彼女がこの世界から、いなくなってしまった。虚しい日々の始まりだった






 ☆        ☆        ☆        ☆        ☆



気付いたら、俺はこの世界に転生していた。まるで、ラノベの様だなと思ったがこの世界でこうして貴族として生きて来たが、まだ、藍凛さんの事が胸から離れなかった。

俺は、どうせ貴族と言っても五男だ。跡目も関係ないし、コレからは冒険者となって生きていく事にしている。いくら公爵家と言っても五男なんて継ぐ爵位も無いし騎士には、三男、四男がなっている。俺は、冒険者になっても良いと許可を得ているから良いだろ。

来月からの冒険者活動に向けて剣も魔法もまだまだ力不足だから鍛えなきゃな。

と思っていたら、ある国の年に一度の夜会があり、兄の代わりに出る事になった。
我が公爵家から1人随行する事になっていたのだ。兄達が誰も行けない為俺が代わりだ。 たまには、公爵家の仕事もしなきゃな。 他国の情勢の勉強にもなるからな



そこで、俺は彼女と運命の再会をした。


いや。直接会ってはいない。見かけた。しかも彼女が断罪されて、追放されると言う最悪の事態だが、俺にとっては運が良かった。 

いくら、藍凛さんを愛しても、流石に他国の王太子の婚約者を奪うことはできない。
藍凛さんが、追放されて直ぐ護衛の騎士に頼んで彼女を探して貰った。

何とか、外交の問題にならない程度の社交を済まし逸る気持ちを抑えて彼女を追う事にした。

そして、彼女を運良く見つけたが、彼女は何だか勘違いして必死に逃げる。盗賊では無いのは分かっていると思う。
やっとの思いで藍凛に追いつき、宿に連れ帰り湯浴みをして貰った。


彼女との、やり取りに胸が痛くなった。詳しい情報は未だ得られていない。それでも、彼女が思ったよりも、よろしくない状況にいるのだろうと察することが出来た。


そして、泣き疲れて眠った彼女は俺の胸、というかシャツを握りしめて離れず抱きしめて眠った。
彼女が離さなかったから、良いよな?








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