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分かっていたのに
しおりを挟むドレスを脱ぐのも一苦労だった。よく脱げたと思う。やっとの思いで脱ぎ終わり眠る支度が済んだ頃・・・
ガタンッ!
ハッ!怖い!公爵家の敷地内である為危険はないはずだ。しかし、離れといえども大きな屋敷。ただ独り過ごすには怖かった。
いずれにせよ、ワンピースを着ていて良かった。それしかなかったのだ。
「アリアーナ!居ないのか!!」
あ、お父様・・・夜会が終わったのかしら
早く、早く行かなくちゃ。
急ぎ、父の元へ行こうとするも、足が縺れる。
「はい、ただいま参ります。」
「遅い!何をしておるのだ!それで良く王太子殿下の婚約者が務まるな!!」其処には、執事を引き連れたお父様がいた。灯りを持つ侍従も付いている。
「申し訳ございません。」
「本当に母親にそっくりだな。フンッ。まあ良い。お前が、ソフィアを虐げてきたのはイライザとソフィアから聞いているから知っている。だが、王太子殿下の婚約者であったから今までは、許されてきたのだ」
「わ、私はその様な事は本当にしていないのです。信じてください、お父様。」
「何を抜け抜けと、まだその様な事を申すか!イライザとソフィアが泣きながら教えてくれていたのだぞ!!」
「本当に、違うのです。」
パンッ、頬が燃える様に熱い。よろけて倒れると涙が溢れてきた。お父様にとって私の言葉は何よりも軽いのだ。
「フン、いつまでもしつこい、黙れ!もうその様な事はどうでも良いわ!今宵の事を受けてソフィアが第二王太子妃になる事が決まった。あの会場に居た者達は皆分ってくれた。ソフィアがどれだけ素晴らしい令嬢であるかな。
王太子殿下が婚約者にとあの場でおっしゃったのにも関わらず、ソフィアはお前を庇っておったのだ!だから、まだお前は婚約者のままで居られるのだ!ソフィアに感謝しろ!
お前が、王太子殿下の第一婚約者で居られるのも時間の問題かもしれぬがな!
それ迄は、仕方ないからお前をこの離れに置いてやる。そうでなくなった場合は分かっておるな?」
と、見なくとも冷えた眼差しを感じる。
「・・・・・」
何と言えば良いのか。本当に愛情が無いのだろう。知っていた筈なのに、突きつけられると胸が痛い。
イライザとソフィアへ向けられる眼差しはお母様と私には向けられた事がなかった。
「分かり、ました。」
「分かれば良い。その時は直ぐさま出て行くのだぞ!ツーリフ公爵家の名を語る事は許さぬ。良いな?」
「・・・はい」
足音高く出て行くお父様。執事と侍従が付き従う。涙がこぼれるも、泣いている暇はない。いつ出て行く事になるのか分からないのだから。次の夜会の前だろうか?
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