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君と僕の物語 ※アルベール視点
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学園に入学してから焦燥感に苛まれていた。
俺の気持ちも知らないで、次々と他の男を魅了していくエヴァ。エヴァは俺をすきだと言うけれど、 本当なのか?
親衛隊に加入してくれた時は、やっと俺の事を好きになってくれたのかと嬉しかったのに。
制裁もせず、俺が他の生徒に声をかけられようが何処吹く風。
婚約者という強固な鎖が、錆び付いてすぐにでも壊れそうな気がした。
(このままじゃ駄目だ。俺だけがエヴァを好きなまま)
「アルベール様、お会いできて光栄です」
そんなある日転入してきたエマ。
周りの生徒は愛らしいと持て囃すけれど、俺にはその魅力が全く分からない。
だって愛らしいというのはエヴァのような存在を言うんだ。
こんなブロンドの髪よりも濡れたように艶めいた長い黒髪。猫のような瞳にはブルーの宝石が埋め込まれているよう。何も塗っていなくても赤い唇は、男を誘う。
そしてツンと済ました態度を取るくせに、夜には男に縋り可愛らしい声で鳴くのだ。
そんなエヴァと比べればなんとちんけな事か。
しかし、良いことを考えた。
人間は窮地に陥った時ほど救ってくれた相手にすがる生き物。
俺がいないと君は駄目なんだって分からせてあげないと。
それからの俺は1ミリも興味が無いエマを特別扱いし、エヴァに見せつけるようにした。
食堂に来たエヴァが俺を思って怒っていた時は、にやけそうになるのを堪えるのに必死だった。
ああ、俺を想ってもっと嫉妬してよエヴァ。
親衛隊長という立場を剥奪し除隊させた。
悪評の流れていたエヴァが除隊されたとなれば、学園でどんな扱いを受けるかなんて容易に想像できる。
そして、その内俺との婚約破棄の噂まで流れ始めた。丁度いいと否定しなかったせいで、エヴァの立場はどんどん悪くなる。
学園の生徒達から虐められ始めたエヴァを見てにやけがとまらない。
もうすぐ、もうすぐエヴァは俺に泣きついてくるはず。
あんなにいい暮らしをして、蝶よ花よと育てられてきたエヴァがこんな扱いに耐えられるわけが無い。
きっと、助けてアルベールって。
可愛い声で、愛らしい顔で縋ってくれるに違いない。そしたらすぐにでもその細い体を抱きとめてあげる。優しくキスをして、離れていた分沢山抱いて、すぐにでも元の贅沢で何不自由ない生活に戻してあげるのに。
なのに
「何故・・・何故だッ・・・!」
上がってくるのはエヴァの浮気の報告ばかり。
俺と婚約破棄になりそうな事に悲しんでる様子もなく、他の男と逢瀬を重ねていた。
「ヴィリエ様は毎晩のように数多の男と関係を持っております」
「ッ・・・もういいッ!!早く下がれ!!」
エヴァを監視するよう命令していた部下を部屋から追い出す。
ギリッと噛んだ唇から血が滲んだ。
ねぇ、エヴァ。君はどこまで俺を絶望させれば済むの?
俺の怒りが限界に達していた時、あるものを見た。
「だからーアルベールがあんまり靡かないんだよ!優しくはしてくれるけどそこまでっていうか、なんか違うんだよね」
『そうかなぁ?でもエマに気がある感じじゃなかった?エヴァとは婚約破棄の噂も流れてるし順調にアルベール落とせそうだね』
「はぁ・・・ほんとお前の言うこと信じていいのか分からないよ」
初めはエマが1人で喋っているのかと思った。
けれど、宙に浮いてる生き物を見て目を見開く。
エマがその場を去った後、その生き物もふよふよと何処かに向かおうとしていた。
俺はその瞬間、手を伸ばしその生き物を捕まえたのだ。
「ぐぇっ・・・!なっなに!?」
「・・・・・・さっきの話詳しく聞かせてもらってもいいかな?」
「ッ!?!?」
手の中の生き物は酷く脅えた表情をしていた。
「ぐっ・・・も"っもう"やべでっ・・・!」
「それで、エヴァは本当は俺の事を好きじゃないんだ」
羽の根元にナイフを差し込み少しづつ抉りとるように切っていく。妖精は痛みのあまり気絶と覚醒を繰り返していた。
小さいとはいえ机の上は血だらけになってしまった。シャツについた血液に舌打ちをする。
「い"だい"ッ~!!??ぎゃあッ"!、?」
「おい気絶すんなよ。まだ話の途中だろ」
バタバタと暴れるため、まち針を足に突き刺す。
ああ、ようやく大人しくなった。
この妖精の話を聞いて俺は怒りで脳内が真っ赤に染まっていた。
曰く、この世界は物語の世界だと。
俺を含めた人間は全員物語の登場人物。転入生のエマは主人公で俺はエマと恋愛関係になる男の1人。そしてエヴァは物語の悪役だと。
この妖精は酷いことを言う。
悪役のエヴァと王子の俺は結ばれないって。
そんなはずないだろ?王子だって悪役と結ばれていいはずだ。それにエヴァが悪役?
悪役なのは俺とエヴァを引き離そうとするお前らだろ。
俺にとってのヒロインはエヴァで、エヴァこそ主人公。
「俺とエヴァが結ばれるにはどうすればいいの?」
「っ"・・・わ"・・・わ"がんな"・・・」
「言い方を間違えたね。俺とエヴァが結ばれるようにしろよ」
ナイフに力を込め羽をもぎ取った。
妖精の絶叫が部屋に響き渡る。なんてうるさい声だ。
「う"ぐ・・・え・・・エヴァ・・・は・・・両性・・・だから・・・妊娠・・・できる"・・・」
「知ってる。でも妊娠しなかったよ。あれだけヤッたのに」
「まほ・・・ぅ・・・かけ・・・てる・・・から・・・」
「へぇ、お前のせいだったんだ。じゃあその魔法解いてくれるってこと?そうしたらエヴァを妊娠させられるね。お前を殺さなくてよかった」
俺は妖精を鳥かごに放り投げ支度を始めた。
さあ、エヴァ仕切り直しだ。
もう君は悪役なんかじゃない。
これからは君と、僕の恋の物語が始まるんだ。
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