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思い通りにならない ※エマ視点
しおりを挟む様子がおかしいのはユリスだけでは無かった。
護衛騎士のアダン・ディディエ、彼もまた攻略対象の1人。
硬派で王都に対し忠誠を違う彼は不正や悪事を何より嫌う男。そんな彼は最初からエヴァを憎んでおり、アルベールとの婚約を早い段階から反対していたうちの1人。
僕がアルベールと結ばれるエンドでは、僕に散々嫌がらせをしたエヴァに対し、最終的に拷問を施して死刑にしていた。
僕がエヴァからの制裁を受け、泣いているところを通りがかったアダンは経緯を聞いて激怒するのだ。
そして僕を守るうちに恋をし、アルベールへ忠誠を誓う騎士でありながら、僕に恋をしてしまった罪悪感に悩む。
だが最終的にアダンルートでは駆け落ちをし遠い国で幸せに暮らすのだ。
だが、問題が起きた。待てど暮らせどエヴァが僕に制裁をしないのだ。勿論親衛隊の奴らは嫌がらせをしようとしているのだが、如何せん生徒会のメンバーがそばに居るせいかなかなか手を出して来ない。
このままではフラグがたたない・・・!
僕は直接アダンへ接触することにした。
「あのっアダン・ディディエ様でしょうか・・・?」
「・・・誰だ貴様は」
「僕は最近この学園に転入してきたエマと言います。実は少しご相談したいことがあるのです」
怪訝な表情を浮かべたアダンに僕は喋り出す。
最近エマから嫌がらせを受けていると。きっとアルベールの婚約者であるエヴァは、僕とアルベールが親密になっていることに嫉妬しているのではと不安を感じている。
こんなことエヴァの婚約者である、アルベールには相談出来ないと。
勿論エヴァから嫌がらせを受けているというのは嘘だが。
「こんな事言うのもなんですが・・・ヴィリエさんはあまりいい噂を聞かなくて。僕心配なんです・・・」
「そうか、確かにヴィリエの噂は俺もよく耳にする。素行が悪く酷く男好きだとな」
なんだヴィリエの噂知ってんじゃん!
これは落とすのも簡単そうだ。
「その・・・アダン様がよろしければ時折お話しても良いですか?アダン様のような頼もしい騎士様がいらっしゃれば、何かあったとしても安心です・・・!アルベール様の婚約者ということは、時期妃という事ですよね?あのような噂のたっている方がこの国をつぐなんて不安でしかなくて・・・」
「いや、その必要は無い。あいつは俺の伴侶になるからな」
「・・・・・・・・・は?」
大真面目な顔で言い放ったアダンに惚けてしまう。
「あれ程までに淫乱な奴がこの国の妃になどなれるわけが無い。殿下もその内突き放すだろう。護衛騎士である俺が国の危険人物である奴を娶り、鎖に繋いで一生屋敷に監禁するつもりだ。そして二度と他の男を誘惑出来ないようにしっかり躾てやる」
不敵な笑みで心の底から楽しそうに笑うアダンにドン引きする。
(な・・・何これ・・・!?どういうこと!?)
「あいつの泣き喘ぐ表情・・・今でも忘れられないな。俺の名を呼び、俺に縋り、あの白い肌を震わせ絶頂する姿。ああ、調教するのが楽しみで仕方がない」
気づいた時には、僕はその場を走り去っていた。
「何だよあれ!?何でアダンがあいつとデキてんだよ!!??」
何かがおかしい、確かめなければ。
そして元凶のエヴァ・ヴィリエと出会えたのはすぐだった。
作中通り悪役のような台詞を吐きながら近づいてきたエヴァ。僕はお人好しのような台詞を口にし、攻略対象立ちを味方につけた。
あのアルベールでさえ僕を庇いエヴァを避難する。エヴァの悔しそうな表情に、高笑いしてしまいそうになった。
ほらやっぱり!僕はこの物語の主人公なんだ!
ユリスとアダンは何かの手違いでああなってしまっただけ。
時期に目が覚めるだろう。
「エマ、大丈夫?エヴァはあんな事を言ってるけど気にしちゃダメだよ」
優しく僕の頬を撫でるアルベールに僕は微笑み返した。
しかしその後も次々と僕の元を離れていく攻略対象達に僕は焦りが増していく。
作中では親衛隊を死ぬほど嫌い、僕に制裁するエヴァを殴っていたガレルは心底僕に興味無さ気な視線を向ける。
他の男達だって
「エヴァは・・・僕のお姫様・・・」
「悪いエマ。俺あいつの傍にいてやんないと。あいつ俺のこと好きすぎて、俺がいないと何するかわかんないからさ。俺のエヴァがごめんな?」
一向に解決しない問題に僕自身が動き、エヴァを貶めようともした。エヴァに思いを寄せる一般生徒を唆して、攻略対象たちから離そうとしたのに。
結局そいつも懐柔されて使い物にならなくなった。
そして遂に副会長までもが
「すみませんエマ。私はエヴァを伴侶にします。エヴァの処女を奪ってしまった責任を取らなくては」
「しょ・・・処女って・・・冗談だよね?ヴィリエさんは色んな男に抱かれてるって」
「そんなの根も葉もない噂でしょう?エヴァは確かに処女だと言いました。私は、私の愛するエヴァの言葉を信じます。あの愛らしいエヴァが嘘をつくはずがありません」
僕は怒りに任せ妖精を鷲掴みにする。
「どういうこと・・・?なんで攻略対象達はエヴァ・ヴィリエに惚れてんだよ」
『ぼっ僕にも分からないんだ・・・!今調査中でっ・・・』
「調査中調査中って!このままじゃ僕の物語はどうなるんだよッ!?」
『っ・・・!』
「お前じゃ話にならない・・・。こうなったらどんな手を使ってもエヴァ・ヴィリエを地獄に叩き落としてやる。僕は・・・僕はこの物語の主人公だ」
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