上 下
102 / 130

思い通りにならない ※エマ視点

しおりを挟む










様子がおかしいのはユリスだけでは無かった。
護衛騎士のアダン・ディディエ、彼もまた攻略対象の1人。
硬派で王都に対し忠誠を違う彼は不正や悪事を何より嫌う男。そんな彼は最初からエヴァを憎んでおり、アルベールとの婚約を早い段階から反対していたうちの1人。
僕がアルベールと結ばれるエンドでは、僕に散々嫌がらせをしたエヴァに対し、最終的に拷問を施して死刑にしていた。

僕がエヴァからの制裁を受け、泣いているところを通りがかったアダンは経緯を聞いて激怒するのだ。
そして僕を守るうちに恋をし、アルベールへ忠誠を誓う騎士でありながら、僕に恋をしてしまった罪悪感に悩む。
だが最終的にアダンルートでは駆け落ちをし遠い国で幸せに暮らすのだ。

だが、問題が起きた。待てど暮らせどエヴァが僕に制裁をしないのだ。勿論親衛隊の奴らは嫌がらせをしようとしているのだが、如何せん生徒会のメンバーがそばに居るせいかなかなか手を出して来ない。
このままではフラグがたたない・・・!
僕は直接アダンへ接触することにした。

「あのっアダン・ディディエ様でしょうか・・・?」
「・・・誰だ貴様は」
「僕は最近この学園に転入してきたエマと言います。実は少しご相談したいことがあるのです」

怪訝な表情を浮かべたアダンに僕は喋り出す。
最近エマから嫌がらせを受けていると。きっとアルベールの婚約者であるエヴァは、僕とアルベールが親密になっていることに嫉妬しているのではと不安を感じている。
こんなことエヴァの婚約者である、アルベールには相談出来ないと。
勿論エヴァから嫌がらせを受けているというのは嘘だが。

「こんな事言うのもなんですが・・・ヴィリエさんはあまりいい噂を聞かなくて。僕心配なんです・・・」
「そうか、確かにヴィリエの噂は俺もよく耳にする。素行が悪く酷く男好きだとな」

なんだヴィリエの噂知ってんじゃん!
これは落とすのも簡単そうだ。

「その・・・アダン様がよろしければ時折お話しても良いですか?アダン様のような頼もしい騎士様がいらっしゃれば、何かあったとしても安心です・・・!アルベール様の婚約者ということは、時期妃という事ですよね?あのような噂のたっている方がこの国をつぐなんて不安でしかなくて・・・」
「いや、その必要は無い。あいつは俺の伴侶になるからな」
「・・・・・・・・・は?」

大真面目な顔で言い放ったアダンに惚けてしまう。

「あれ程までに淫乱な奴がこの国の妃になどなれるわけが無い。殿下もその内突き放すだろう。護衛騎士である俺が国の危険人物である奴を娶り、鎖に繋いで一生屋敷に監禁するつもりだ。そして二度と他の男を誘惑出来ないようにしっかり躾てやる」

不敵な笑みで心の底から楽しそうに笑うアダンにドン引きする。
(な・・・何これ・・・!?どういうこと!?)

「あいつの泣き喘ぐ表情・・・今でも忘れられないな。俺の名を呼び、俺に縋り、あの白い肌を震わせ絶頂する姿。ああ、調教するのが楽しみで仕方がない」


気づいた時には、僕はその場を走り去っていた。


「何だよあれ!?何でアダンがあいつとデキてんだよ!!??」

何かがおかしい、確かめなければ。
そして元凶のエヴァ・ヴィリエと出会えたのはすぐだった。
作中通り悪役のような台詞を吐きながら近づいてきたエヴァ。僕はお人好しのような台詞を口にし、攻略対象立ちを味方につけた。
あのアルベールでさえ僕を庇いエヴァを避難する。エヴァの悔しそうな表情に、高笑いしてしまいそうになった。
ほらやっぱり!僕はこの物語の主人公なんだ!
ユリスとアダンは何かの手違いでああなってしまっただけ。
時期に目が覚めるだろう。


「エマ、大丈夫?エヴァはあんな事を言ってるけど気にしちゃダメだよ」

優しく僕の頬を撫でるアルベールに僕は微笑み返した。


しかしその後も次々と僕の元を離れていく攻略対象達に僕は焦りが増していく。
作中では親衛隊を死ぬほど嫌い、僕に制裁するエヴァを殴っていたガレルは心底僕に興味無さ気な視線を向ける。
他の男達だって

「エヴァは・・・僕のお姫様・・・」
「悪いエマ。俺あいつの傍にいてやんないと。あいつ俺のこと好きすぎて、俺がいないと何するかわかんないからさ。俺のエヴァがごめんな?」 

一向に解決しない問題に僕自身が動き、エヴァを貶めようともした。エヴァに思いを寄せる一般生徒を唆して、攻略対象たちから離そうとしたのに。
結局そいつも懐柔されて使い物にならなくなった。
そして遂に副会長までもが

「すみませんエマ。私はエヴァを伴侶にします。エヴァの処女を奪ってしまった責任を取らなくては」
「しょ・・・処女って・・・冗談だよね?ヴィリエさんは色んな男に抱かれてるって」
「そんなの根も葉もない噂でしょう?エヴァは確かに処女だと言いました。私は、私の愛するエヴァの言葉を信じます。あの愛らしいエヴァが嘘をつくはずがありません」



僕は怒りに任せ妖精を鷲掴みにする。

「どういうこと・・・?なんで攻略対象達はエヴァ・ヴィリエに惚れてんだよ」
『ぼっ僕にも分からないんだ・・・!今調査中でっ・・・』
「調査中調査中って!このままじゃ僕の物語はどうなるんだよッ!?」
 『っ・・・!』
「お前じゃ話にならない・・・。こうなったらどんな手を使ってもエヴァ・ヴィリエを地獄に叩き落としてやる。僕は・・・僕はこの物語の主人公だ」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

弟に殺される”兄”に転生したがこんなに愛されるなんて聞いてない。

浅倉
BL
目を覚ますと目の前には俺を心配そうに見つめる彼の姿。 既視感を感じる彼の姿に俺は”小説”の中に出てくる主人公 ”ヴィンセント”だと判明。 そしてまさかの俺がヴィンセントを虐め残酷に殺される兄だと?! 次々と訪れる沢山の試練を前にどうにか弟に殺されないルートを必死に進む。 だがそんな俺の前に大きな壁が! このままでは原作通り殺されてしまう。 どうにかして乗り越えなければ! 妙に執着してくる”弟”と死なないように奮闘する”兄”の少し甘い物語___ ヤンデレ執着な弟×クールで鈍感な兄 ※固定CP ※投稿不定期 ※初めの方はヤンデレ要素少なめ

ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。 それが僕。 この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。 だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。 僕は断罪される側だ。 まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。 途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。 神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?   ※  ※  ※  ※  ※  ※ ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。 男性妊娠の描写があります。 誤字脱字等があればお知らせください。 必要なタグがあれば付け足して行きます。 総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。

魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。

柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。 頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。 誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。 さくっと読める短編です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

処理中です...