上 下
99 / 130

悪魔の罠 ※ダニエル

しおりを挟む












幼少期から厳格な両親に育てられた私は、傍から見たら酷く窮屈な生活をしてきたのだろう。
友達と遊ぶこともせず、勉学と習い事をこなす毎日。
友人達が自由に遊び、自由に生きるのを羨ましそうに眺めてきた。それが僕の人生だった。

16歳の年にこの学園へ入学した時、淡い期待を抱いていたんだ。
親元から離れ、僕も皆と同様に青春を過ごせるのではと。友を作り好きな人が出来て青春を謳歌出来るのではと。
だがその夢はすぐに消えた。

あれよあれよという間に生徒会副会長へと推薦され、親衛隊が作られる。好意を持ってもらえるのは嬉しかった。
だが、彼らは僕のステータスにしか興味が無い。
完璧な王子様像を作り上げて、少しでも僕が理想を損なう行動を取れば「そんなの副会長様じゃない」と避難するのだ。
親衛隊のせいで友達を作ることすら出来ず、今じゃ忌々しい存在でしかない。

夜伽の規則だって、心が惹かれない相手を抱いてなにになるって言うんだ。
時が経てば経つほど僕の心は疲弊していった。
そんな時現れたのがエマだった。

「僕の前では本当のダニエルを見せて!そんな演技なんてしないで」

眩しい光のようだった。
僕のことを理解してくれるのはエマだけだと。
エマはこの学園に染っておらず、純粋無垢だった。僕の話を優しく聞いてくれて、親衛隊みたいな汚い下心で接してこない。
これが恋だと。初めての初恋に僕は浮かれていたんだ。

でも、エマに惹かれたのは僕だけではなかった。
会長に会計、書記やその他の生徒まで。エマは様々な男を惹き付ける。
僕はエマに選ばれたくて必死で常に傍にいるように心がけていた。

だからあの生徒、エヴァ・ヴィリエを憎悪していた。
尻軽の親衛隊長。男を取っかえ引っ変えし、かなりの性悪だと有名だ。エマとは正反対の汚らわしい存在。僕の求める愛とは最も遠い存在だ。
だから、ヴィリエの魔の手からエマを守ろうとした。

だが、時が経つにつれておかしな事が起こり始める。
エマの傍にいた筈の男達が1人、また1人、と消えていくのだ。
そしてそいつらは皆エヴァの傍を侍るようになった。愚かな奴らだ。ヴィリエなんかの毒牙にかかるなんて。

「ダニエルは・・・ダニエルは僕の傍にいてくれるよね・・・?」
「勿論ですよ。私はエマから離れたりしません」

泣きそうなエマが僕に抱きつく。熱くなる頬を誤魔化しながら恐る恐る腕をエマの背に回した。
僕はエマを愛してる。
あんな悪魔の罠になどかからない。
そう、思っていたのに。






悪魔の誘惑は酷く甘美なものだった。
エマにさえ打ち明けられなかった僕のコンプレックスを、受け入れ甘やかしてくれる。
気づいた時にはその甘い身体を貪っていた。
そして理解する。
ああ、他の生徒達もこうしてヴィリエにハマっていったのだと。この身体を、エヴァを1度味わってしまえば終わりだ。
まるでドラッグのように次を欲してしまう。

普段、冷たい瞳をしたこの悪魔が自身の愛撫によって乱れる瞬間。このエヴァという存在を、自分のものに出来たという所有感でいっぱいになるのだ。
初めてをエヴァに捧げた夜は興奮して眠れなかった。馬鹿みたいにエヴァの柔肌を思い出し、 1人で自身を慰める。
ああ、次はいつその肌に触らせてくれるのだろう。
僕のことを呼び、愛らしい声で啼いてくれるのか。
ごめん、エマ。
僕は、悪魔の虜にされてしまった。





本気で結婚を考えた。
会長と婚約破棄したという噂は流れていたし、会長もエヴァには殆ど会っていないようだったから。
それなら、僕の物だと。
でも、そう思っていたのは僕だけだった。
冷たく突き放され、浮かれていた脳内が嘘のように凍りつく。
そうだった、エヴァは悪魔なんだ。蜜を与えるだけ与えて絶望に突き落とす。
ただでさえ他の男に遅れているのに、正攻法ではエヴァを僕のものに出来ない。

ああ、そうだ。絶好の機会があるではないか。
エヴァを僕の物だと大衆に知らしめる方法が。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。

柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。 頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。 誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。 さくっと読める短編です。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

処理中です...