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悪魔の罠 ※ダニエル
しおりを挟む幼少期から厳格な両親に育てられた私は、傍から見たら酷く窮屈な生活をしてきたのだろう。
友達と遊ぶこともせず、勉学と習い事をこなす毎日。
友人達が自由に遊び、自由に生きるのを羨ましそうに眺めてきた。それが僕の人生だった。
16歳の年にこの学園へ入学した時、淡い期待を抱いていたんだ。
親元から離れ、僕も皆と同様に青春を過ごせるのではと。友を作り好きな人が出来て青春を謳歌出来るのではと。
だがその夢はすぐに消えた。
あれよあれよという間に生徒会副会長へと推薦され、親衛隊が作られる。好意を持ってもらえるのは嬉しかった。
だが、彼らは僕のステータスにしか興味が無い。
完璧な王子様像を作り上げて、少しでも僕が理想を損なう行動を取れば「そんなの副会長様じゃない」と避難するのだ。
親衛隊のせいで友達を作ることすら出来ず、今じゃ忌々しい存在でしかない。
夜伽の規則だって、心が惹かれない相手を抱いてなにになるって言うんだ。
時が経てば経つほど僕の心は疲弊していった。
そんな時現れたのがエマだった。
「僕の前では本当のダニエルを見せて!そんな演技なんてしないで」
眩しい光のようだった。
僕のことを理解してくれるのはエマだけだと。
エマはこの学園に染っておらず、純粋無垢だった。僕の話を優しく聞いてくれて、親衛隊みたいな汚い下心で接してこない。
これが恋だと。初めての初恋に僕は浮かれていたんだ。
でも、エマに惹かれたのは僕だけではなかった。
会長に会計、書記やその他の生徒まで。エマは様々な男を惹き付ける。
僕はエマに選ばれたくて必死で常に傍にいるように心がけていた。
だからあの生徒、エヴァ・ヴィリエを憎悪していた。
尻軽の親衛隊長。男を取っかえ引っ変えし、かなりの性悪だと有名だ。エマとは正反対の汚らわしい存在。僕の求める愛とは最も遠い存在だ。
だから、ヴィリエの魔の手からエマを守ろうとした。
だが、時が経つにつれておかしな事が起こり始める。
エマの傍にいた筈の男達が1人、また1人、と消えていくのだ。
そしてそいつらは皆エヴァの傍を侍るようになった。愚かな奴らだ。ヴィリエなんかの毒牙にかかるなんて。
「ダニエルは・・・ダニエルは僕の傍にいてくれるよね・・・?」
「勿論ですよ。私はエマから離れたりしません」
泣きそうなエマが僕に抱きつく。熱くなる頬を誤魔化しながら恐る恐る腕をエマの背に回した。
僕はエマを愛してる。
あんな悪魔の罠になどかからない。
そう、思っていたのに。
悪魔の誘惑は酷く甘美なものだった。
エマにさえ打ち明けられなかった僕のコンプレックスを、受け入れ甘やかしてくれる。
気づいた時にはその甘い身体を貪っていた。
そして理解する。
ああ、他の生徒達もこうしてヴィリエにハマっていったのだと。この身体を、エヴァを1度味わってしまえば終わりだ。
まるでドラッグのように次を欲してしまう。
普段、冷たい瞳をしたこの悪魔が自身の愛撫によって乱れる瞬間。このエヴァという存在を、自分のものに出来たという所有感でいっぱいになるのだ。
初めてをエヴァに捧げた夜は興奮して眠れなかった。馬鹿みたいにエヴァの柔肌を思い出し、 1人で自身を慰める。
ああ、次はいつその肌に触らせてくれるのだろう。
僕のことを呼び、愛らしい声で啼いてくれるのか。
ごめん、エマ。
僕は、悪魔の虜にされてしまった。
本気で結婚を考えた。
会長と婚約破棄したという噂は流れていたし、会長もエヴァには殆ど会っていないようだったから。
それなら、僕の物だと。
でも、そう思っていたのは僕だけだった。
冷たく突き放され、浮かれていた脳内が嘘のように凍りつく。
そうだった、エヴァは悪魔なんだ。蜜を与えるだけ与えて絶望に突き落とす。
ただでさえ他の男に遅れているのに、正攻法ではエヴァを僕のものに出来ない。
ああ、そうだ。絶好の機会があるではないか。
エヴァを僕の物だと大衆に知らしめる方法が。
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