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問題発生

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「そういえばユリス、お前普段何してるんだ?俺の付き人として学園に来た、とか言ってた割には四六時中俺についてる訳じゃないのか」

ぎゅうぎゅうと、大男2人に抱きつかれている苦しさで眠りから覚めた俺。2人を叩き起し再び軽いティータイムを楽しんでいた。作っていたお菓子を出せばむしゃむしゃと食べる2人。こいつらどんだけ食べんだよ。

「ああ、すみませんエヴァ様には話していませんでしたね。俺はこの学園の生徒じゃないので、エヴァ様が授業を受けている日中は、学園の仕事をしているんです」
「学園の仕事?」
「はい、庭木の剪定だったり食堂の手伝いだったり色々です」

そういえばそうだった。作中でもユリスが主人公に出会ったのは学園の庭だったな。
じゃあ俺の知らない所で既に出会ってそういう雰囲気になってもおかしくないのに、なのにこいつはケロッと俺の所に来たりして・・・。

「なあ、本当に転入生と何にもなかったのか?好みは美人だとか言ってたけど・・・ちょっとは好きになっちゃったとかさ。てか、リュカお前も転入生の事あんなに好きだったのに、何で俺のとこ来てんだよ」

俺の言葉にユリスもリュカもティーカップを置いて目を見合わせる。

「エマは・・・俺の運命じゃ・・・ないから」
「転入生とは本当に何もありませんよ。というか、僕あの子苦手です。初めて会った時にエヴァ様の事悪く言われたんです。エヴァ様が僕の事こき使ってるとか、そんな生活普通じゃないとか」

苦手!?というか、まあそれは転入生が正しいだろ。逆になんでそれを言われて苦手なんて思うんだ。
俺はユリスの作中とは違う思考に戸惑う。

「僕はエヴァ様になら何を捧げてもいいと思ってるんです。どれだけエヴァ様が僕をこき使おうとそれが僕にとってのエヴァ様からの愛なのに・・・!あいつ・・・それを否定しやがってっ・・・!エヴァ様から離れた方がいいとか・・・!」
「おっおい、落ち着けよ・・・!エマはお前を心配して言ってくれたんだろ」

てか何で俺が主人公をフォローしてんだよ。ぶつぶつと怒り出したユリスに動揺する。
何故だかゲームと違う流れになっているかもしれない。転入生に惚れていないユリスも、ずっと俺を見つめるリュカも。
本当なら2人ともここにいていい筈ないのに。

考えるのも億劫で俺は不安を押し込むように、紅茶を飲み込んだ。








ともあれ、俺がどうすればいいのか。物語はどうなっているのか。あれから妖精が現れていない為確認するすべもない。俺はエリックの他に、何故か増えてしまった犬2匹の世話に奮闘していた。

用もなく現れるリュカとユリスに紅茶と菓子を振る舞い、目を話せば喧嘩をする2人にゲンコツをする。正直この3匹の中ではエリックが1番お利口だ。大好きなお菓子を作って2人に振舞って、こうして学園生活を過ごすの良いのだが1つ問題が出てきた。

「キッチンが狭い?」
「ああ、ここ共同キッチンだろ。だから気遣うんだよ。ユーゴは俺の事嫌ってるから、居ないときしか使えないし。自由度がないって言うか・・・」
「なるほど。確かに、エヴァ様のお菓子を食べたい僕としても、死活問題ですね」

うんうんとユリスと頭を悩ませていれば、あっとユリスが声を上げる。

「確かこの学園の3階に調理室がありましたよ」 
「3階?」
「はい、以前掃除をしてた時に見つけたんです。家庭科の授業で使ってたみたいなんですが、ここの学校お坊ちゃまだらけでしょう。保護者からうちの息子に使用人と同じ事をさせるなんてってクレームが入ったらしいんです。それ以来家庭科の授業自体が無くなって調理室も使われてないみたいなんですよね」

なんつー話だ。料理くらい貴族でも出来ないとまずいだろ。でも良い話を聞いた。もしそこの調理室が使えるようになれば、好きな時間に好きな物を作れる。それに調理室ならそれなりの広さもあるだろうしもっと色んなものを作れるかもしれない。

「よし、そこの調理室の使用許可を取るぞ!」




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