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除隊させられました
しおりを挟むこんにちは今日もいい天気ですね、いやめちゃくちゃ曇ってたわ。何ならめっちゃ雨降ってたわ。
そして最悪な空模様に比例して俺のロッカーの中も最悪な事になっている。
『消えろ』『くそビッチ』『性悪』
ハンガーにかけていたジャージは切り刻まれ教科書は落書きだらけ。なんかよく分からないゴミも散らばっている。
本当にお坊ちゃま学校かと疑いたくなるレベルの嫌がらせに溜息をつきながら片付け始めた。
こうなった原因は数日前に遡る。
その日俺は今親衛隊の奴らに詰め寄られていた。
「エヴァ・ヴィリエ貴方には親衛隊から除隊させて頂きます」
意気揚揚と宣言する副隊長。
「副隊長として僕は散々貴方の失態を見逃してきました。しかしいい加減我慢の限界だと隊員達からも声が上がっています」
「・・・どういう事」
「転入生への対応ですよ。彼がこの学園に来て生徒会の皆様に接触してから数週間が経っているにも関わらず未だなんの解決もしていない。隊長としてこれは由々しき事態では無いのですか」
まあ確かにそれはそうだけど。一応俺は身を呈して制裁というか忠告しにいったぞ。ほら見ろこの頬の殴られた後。
「このままでは我々親衛隊としての活動や士気にも影響します。という事で幹部で話し合った結果貴方を親衛隊から除隊させることにしました。もう貴方は親衛隊でも何でもない一般生徒です」
「・・・アルベール様はこの事に許可を出しているの」
「はっ許可も何も。今学園内で流れてる噂をご存知ないのですか?アルベール様は貴方と婚約破棄をしたいと仰ってるようですよ」
そう、ここ最近そんな噂をよく耳にしていた。
俺としては有難いことこの上ないが。アルベールに確認しようにもあいつ常に生徒会の奴らといるからなぁ。
そんなこんなで婚約破棄されそうな俺に後ろ盾が無くなったと喜んだのが副隊長派閥のやつらだ。
ここぞとばかりに俺のミスを指摘し俺を除隊させようって魂胆らしい。嬉し涙を流しそうになるが一応悪役令息だし悔しそうな顔でもしとくか。
「ふん、そんな顔したってこの決定は覆りませんから」
こうして俺はめでたく親衛隊を抜けられたって訳だ。てか俺より悪役っぽい顔すんなよ。俺のキャラが潰れるだろ。
とまあそんな訳で俺は一般生徒へ降格・・・というか逆に今まで一般生徒じゃ無かったんだ?
周りの俺への態度はびっくりするほど変わった勿論悪い意味で。
今まで俺に媚びへつらってたヤツらが嘲笑したような表情で見てくるようになったし廊下ですれ違う時わざとぶつかられたり悪口を言われたりする。
俺は学園内でかなり嫌われてたんだと改めて実感した。
「嫌われるのは良いけど毎回俺の私物にイタズラしてくるのやめてくんねーかな。何回教科書買い直せば良いんだよ!」
こうして教科書に落書きされるのもらX回目。流石にジャージや衣類は寮に持ち帰るようにしているが教科書はかなり大量にあるので置いていくしかない。一応鍵付きのロッカーだが毎回壊されるのでもはや修理すら間に合ってない。
『エヴァ~大変な事になってるね?』
「お前・・・誰のせいだと思ってんだよ」
『可哀想だから僕の魔法で直してあげる』
クソ妖精の魔法でボロボロの教科書が忽ち新品になった。全く少しだけでも教科書持って帰ろうか。
「俺アルベールに婚約破棄されるっぽい」
『えっ!?』
「皆が噂してる。だから親衛隊も除隊させられたんだよ」
『・・・・・』
「それよりいつまで俺は学園にいればいいんだよ。台本見たけど物語だと俺は学園裁判にかけられて追放されるんだろ?」
『あ~・・・うーん・・・そうなんだけどねぇ』
歯切れの悪い返答に思わず妖精を見る。
「なあ何その歯切れの悪い感じ。お前のせいでやりたくもない親衛隊とかアルベールの婚約者してたんだぞ?」なに、なんか問題でも発生してんの」
『いや・・・!いや!大丈夫!僕は天才妖精だよ?なーんにも問題なんて発生してないから!』
「あっそう、ならいいけど。それより俺学園から追放された後の事考えてんだけどさ西の国に果実が豊かな国があるんだって。俺そこに移住してエリックと一緒にお菓子屋さん開きたいんだよ」
『え・・・?ああ、良いんじゃない・・・かな?』
「だろー?この学園にいるのも少しの間だけだしお前も仕事?頑張れよ」
こいつの仕事なんて分かんないけど。
あれやこれやと追放後の計画を語る俺を妖精が不安そうに見ていたなんて気づかなかった。
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