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一抹の不安

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「でも・・・でも・・・僕はアルベール様が・・・」
「殿下が、今誰に夢中かお前が1番知っているはずだ」
「・・・・・」
「お前の婚約者という立場がどれだけ脆いものかいい加減自覚しろ。お前が殿下を想おうが婚約破棄されればお前の地位は底に落ちる。そうなった時に誰がお前の傍にいて助けてくれるのかよく考える事だ」

手を取られ指にキスをされる。

「初めてお前を見た時から俺の心はお前でいっぱいだ。お前を見る度その体を暴いて啼かせて俺だけのものにして甘やかしてやりたいと思う。今までどんな女にだってそんなことを思ったことはなかった。俺にこんな感情を抱かせたのはお前だけだ」
「ぼ・・・僕はそんな事・・・」
「殿下の婚約者である限りお前を俺のものにする事は出来ない。だが、殿下の手元から離れる時、俺は一瞬だってその隙を見逃さない。何がなんでもお前を捕まえ俺のものにしてやる」
「アダン・・・様・・・」
「そして俺はそのチャンスを待つだけの男じゃない。お前を婚約者という立場から必ず引きずり下ろしてやる。お前がどれだけ嫌がろうとその地位を奪ってやる」


覚悟しろよエヴァ


耳元で囁かれゾクリとした。
アダンの俺を見つめる瞳は捕食者のようで怖くて目を逸らしてしまう。
悪役令息の俺がこんな台詞を吐かれて良いのだろうか。もしかして俺は物語の根幹を揺るがすような事をしてしまっているのでは無いかと不安になった。








『大丈夫大丈夫~だってアダンはまだ主人公に出会ってないからさ。きっと一目見たらほかの攻略対象達みたいにメロメロになっちゃうよ』
「・・・嘘じゃないだろうな」
『僕を誰だと思ってんの?』

主人公が現れてから妖精と会話するのは初めてだ。昨日のアダンとの出来事を話せばエヴァの不安を他所に何ともまあ楽観的な事を話す妖精。

「じゃあ、じゃあユリスもそのうち主人公に惚れるんだな?それなら良かった・・・」
『エヴァの心配するようなことは起きないよ。物語は順調に進んでるんだから!それよりもエヴァ生徒会役員達にもっと接触しないと。副会長に書記に会計、作中でエヴァは生徒会役員全員に手出そうとしてたんだから』
「はぁ・・・?もう充分だろ俺の体が持たないって」
『大丈夫だって。少しの辛抱だからさ』
「おい変な粉かけんなよ!」
『ふふふエヴァがビッチになる魔法もっとかけておいたから☆』


全くクソみたいなことしかしない妖精め。
俺は最近用意した虫取り網を手に取り妖精を捕まえようとしたがひらりと逃げられてしまった。
舌打ちをしながらベッドでぷすぷす寝息を立てるエリックを抱きしめる。






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