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⑺悪役失格

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「エヴァ様、しっかり掴まってて下さいね」

馬に乗り来た道を引き返す。あんなに馬の乗り方を俺に教えて欲しいと言ってたくせにこなれたように手網を扱うユリスに少しムッとする。
(俺が教えなくても出来てんじゃん・・・)
あっという間に到着した屋敷。ひょいと馬から降りたユリスが俺に手を差し伸べる。
その仕草がまるで女性をエスコートするようでイラつきながら手をはたいた。悪役令息なのだからこれくらいの我儘は許してくれ。

「俺を女扱いするな」
「すみません、そんなつもりでは無かったんですが」
「なあお前最近勘違いしてないか」
「?どういう事ですか・・・」
「俺はお前の主人なんだ。何だか友達・・・?みたいに接してくるけどお前は俺の使用人なんだからな」
「・・・・・申し訳ありませんでした」

俺の言葉にショックを受けたのか大きな青い瞳がうるうると潤み始める。ああ、可哀想なことをしてしまったでも許してくれ俺は悪役令息なんだ。ここは心を鬼にして少し突き放さないと。
最近偉く距離が近かったからな、ちょっとは冷たい一面も見せておかないと。
痛む良心を堪え悲しげに佇むユリスを無視し部屋へと戻って行った。











「はぁ~~絶対言いすぎたよなぁ~・・・ユリス泣きそうだったもん・・・。あんな美少年泣かすとか俺絶対地獄に堕ちるてかもうこの状況が堕ちてるかもな」

夜になり自室で悶々と後悔の念に苛まれる。眠ろうと目を瞑ってもあの時のユリスの泣きそうな顔が脳裏を過ぎるのだ。ユリスは幼くして両親を亡くした上に恵まれない境遇で育ってきた可哀想な少年。  俺以外に気にかける友人もいないからきっと俺に優しくされたことで懐いてしまったのだろう。ユリスからしたら優しくしてくれた俺が突然冷たくなって戸惑う気持ちが出るのも当然だ。
もっと上手く接することは出来なかったのかと何度も考えてしまう。

『なぁにため息ついてんの~?』
「っ・・・!?お前は・・・!」
『久しぶりだね~どう?元気してた?』

あのクソ妖精!鬱陶しくはためかせている羽を掴もうとするが難なく躱されてしまった。

『何すんの!?僕の羽毟るつもり!?』
「大人しく毟られとけよ・・・つーか何の用?」
『あーあせっかくアドバイスしに来てあげたのに・・・。早速だけど君このままじゃ死亡ルートまっしぐらだよ』
「・・・は?」
『君ちゃんと悪役令息してないでしょ。まだ攻略対象の1人としか会ってないから良かったけどこのままじゃ物語の進行に影響が出る。ちゃんと悪役っぽいことして』
「なっ・・・!俺はちゃんと悪役っぽく冷たくしてる!」
『まさか今日の事言ってる?言っとくけどあんなの冷たいのうちに入らないから』

妖精の言葉に思わず黙る。

『エヴァは史上最悪の悪役なんだ。この物語にとって必要な悪役。悪が深ければ深いほど恋は燃え上がる!君ユリスに優しすぎなんだよ』
「・・・・・・」
『本来のエヴァならユリスに部屋なんて与えないしご飯だってろくに食べさせない。鞭打ち拷問は当たり前なのに君ってば何やってるのさ!手作り料理与えて乗馬して挙句の果てには添い寝?本当に悪役令息って自覚ある?』
「おっ俺は・・・ユリスにそんな残酷なこと出来ない・・・」

というかユリス以外にだってそんな事したくない。
俺の返答に妖精は呆れたようなため息をついた。

『ああもう、分かったよ。でも僕だってこの世界の案内人としてこのままじゃ駄目なんだ。痛い事が出来ないなら性的に嫌がらせすればいい』
「は・・・?」
『覚えてる?悪役令息のエヴァは残忍で非道でとんでもないくそビッチなんだ。イケメンを見たら直ぐに股を開くクソビッチ』
「う・・・あ・・・」

そうだそうだった。すっかり忘れてたがエヴァは攻略対象達を父親の権力で脅して肉体関係に持ち込むような奴だった。

『良い?エヴァ、想いの通じあってない相手との性行為程苦痛なものは無い。鞭打ちとか拷問とか出来ないならちゃんと攻略対象達と肉体関係を持って苦痛を与えるんだよ?君の為に物語の台本も置いとくから』
「あっちょっと待てよ!」

瞬く間に消えてしまった妖精に声をかけるが返答は返ってこなかった。考えただけで頭が痛くなる。
机に置かれた台本を手に取りため息をついた。



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