上 下
2 / 130

⑴目覚めるとそこは

しおりを挟む
突然だが俺はBLゲームの世界に転生したらしい。
嘘だと思うだろ?これが本当に本当の話なんだ。
遡ること1週間前、俺は足を滑らせレンガに頭をぶつけた。そうして意識を失い眠り続けること数日、ようやく目を覚ました時に前世の記憶と共にここが前世で妹が遊んでいたゲームの世界だと言う事に気づいたのだ。
全く興味もないBLゲームを無理やりやらされ感想を求められたあの作品。攻略対象であるイケメン達が総じてヤンデレの面倒臭い男ばかりで何なんだこいつらはと呆れながらプレイしたのを覚えている。
そしてベッドから起き上がり鏡を見た時俺は絶望した。
黒髪に猫のようなアーモンド型の大きな瞳、陶器のような白い肌に何も塗っていなくても桜色の唇。自然と庇護欲を掻き立てられる華奢な体、誰がどう見ても美少年。震える手で頬を触り俺は思い切り口を開けた。

「うわあああああああああああああぁぁぁ!!」

広い部屋に俺の叫びが響き渡る。
(嘘だろ・・・!?嘘だろこんなのって・・・!!??)
そう、俺は このゲームで悪名高き悪役令息へと生まれ変わっていた。





このゲームで登場する悪役である「エヴァ・ヴィリエ」はその天使のような見た目とは裏腹に残忍で卑怯でとてつもない性悪な事で有名な悪役令息だ。
父親が権威ある貴族であることからそれを傘にやりたい放題。気に入らない人間はいじめ抜き制裁を加える男に目がなく気に入ったイケメンには父親の権力を振りかざして肉体関係を求める等。主人公に対し色んな嫌がらせをすることやその内容の酷さからゲームファンの間でもアンチが多いことで有名なキャラクターだ。
そんなエヴァはその振る舞いの結果当然のように悲惨な結末を迎える。どの攻略ルートでも主人公に危害を加えた事で攻略対象達から残酷な殺し方をされ死ぬ結末。特に少しずつ肉を削がれ血を抜かれるルートは見るに絶えなかった。こんなのBLゲームに必要な要素では無いだろうと目を細めながら急いでクリックボタンを押したものだ。

「そっそんなの絶対に嫌だ・・・!!」

とにかくエヴァの殺され方は信じられないくらい残酷だったのだ。あんな拷問を受けて殺されるなんて死んでも回避しなければいけない。
改めて鏡を見ればエヴァはまだかなり幼い。
察するに7.8歳位か?主人公が現れるのは16歳頃、確か学園に転入する形でゲームがスタートした気がする。これから対策を練ってちゃんとフラグを折っていけば生き残る事は出来るはずだ。前世でクリアしたゲームを必死に思い出す。
その時だった。

「エヴァ様どうされましたか・・・?大きな声が聞こえたので・・・」

緩いシャツを身にまとった少年が脅えたようにそっとドアの隙間から現れた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

5人の幼馴染と俺

まいど
BL
目を覚ますと軟禁されていた。5人のヤンデレに囲われる平凡の話。一番病んでいるのは誰なのか。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

悪役令嬢の義弟に転生した俺は虐げられる

西楓
BL
悪役令嬢の義弟になったときに俺はゲームの世界に転生したことを知る。ゲームの中で俺は悪役令嬢に虐待される悪役令嬢の義弟で、攻略対象だった。悪役令嬢が断罪するその日まで俺は… 整いすぎた人形のような美貌の義父は… Rシーンには※をつけてます。 ※完結としていたのですが、その後を数話追加しますので連載中に戻しました。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

処理中です...