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La Madrugada 21 〔嬉戯 1〕# ......(ほんのり)

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 中庭パティオ出ることを許された日、この日も当たり前のようにチョーカーを鎖で繋がれ、弟は、ゼルソファファラに膝を抱いて座っていた。

 ーーすっ……と、何かを聞くように、或いは聞かないように、手の平が耳に当てられる。そしてその眼はただ、虚空こくうを見上げていた。

 衣擦れきぬずれの音がした、そう思った瞬間、眼がおおわれ、視界がさえぎられる。

「兄さま……?」

 眼の上をおおった兄の手が、弟が耳をおおっていた手に重ねられた。

「兄さま……、兄さま、今日は?」
 兄は忙しい。訪れるのは通常深夜よる。昼訪れる時には、基本無理をしている。

「今日はもう、戻らなくていい。どこぞの間抜けな賓客ひんきゃくは体調不良という名の、ギックリ腰だそうだ」

 本当はそんな簡単な話ではないだろうと思う。だが大事なのは、兄は今日、と、言うこと。

「お客様はお気の毒でしたね。でも、兄さまが早くに来てくれて……リシェは嬉しい」

「時間があるから、遊ぶよ? リシェ」
「はい、兄さま。ーーあ……」

 兄は、きれを弟に握らせる。
「怖いか?」

 この前は、途中で泣き出した。

「いいえ。……兄さまが、一緒に居てくれるなら」



 §



 眼を閉じてきれを巻かれ、視界は仄暗ほのぐらやみになる。

「……兄さま? ーーわ!」
 兄に抱き上げられ、恐らく兄の膝の上にいる。

「ああ、悪かった。先に言わないとな。ここで何かまもうーー食べさせてやるから」
「え……?」

 最初から“遊ぶ”、と言っている兄は楽し気だが、弟は落ち着かない。兄の膝の上で抱かれているーー性的にではなくーーことも、食べさせてやると言われた、そのことも。

「リシェ」
 ドキ……鼓動こどうが跳ねる。

「どうした? 緊張しているね」

「ーー少し……っ」
 兄の指先が弟の唇をなぞる。ーー一瞬で、官能の灯がともってしまう。

「口を開けて」
 おずおずと唇を開くと、葡萄ぶどうを口に入れられる。指先が舌を探っていきながら。
 口に入れられた葡萄ぶどう咀嚼そしゃくして飲み込む。                                                                                                                                                             

「甘い?」
 兄の声にうなずき、弟は薄く唇を開いて待つ。

「ぁ…………んっーー」
 次に、兄は葡萄をくわえ、唇が触れた時に噛み切り、半分を弟に口移して分け合う。

「美味しいか?」
 兄が、微笑をたたえている姿が見えるようだった。

「ん……美味し……兄さま、もっと、欲し……」

 クスクス笑いながら、兄が、弟の半開きされた唇を舌でなぞっていき、誘われるように出されてきた弟の舌を食む。

 唇が離れると、弟は、甘えるように兄の胸に手を置き、あえかにささやく。

「もっと……」

 兄はふっ、と笑みを深めると、葡萄ぶどうをひとつ、弟の口に放り込んでやる。

「……! ……、……、……」
 コクん、と葡萄ぶどう咀嚼そしゃく嚥下えんげした弟の唇が、『葡萄コレじゃない』と言いたげに、引き結ばれ、兄に声をあげて笑われてしまう。

「兄さまは……リシェに意地悪するの、やっぱり好きなんだ……」
 今なら言えるかな……と、弟は呟くように言ってみる。

「やっぱり? ーー兄は弟を揶揄からかうのが好きな生き物だよ、リシェ」
 あごを持ち上げられ、兄の親指が唇をなぞる。

「ぅ……じゃあ、リシェ、兄さまに意地悪いじわるされて、よろぶ生き物、なの?」

 兄はハーブ水を含み、弟に口づける。 
 弟ののどが上下し、口移くちうつされたハーブ水が飲み下された。

「……早く、そうなれ」
「ーーもう、そうなのに」
 何故? と言いたそうな弟に、兄の笑みが深くなる。

「……もっと」
「ーーやっぱり意地悪いじわるだ、兄さま……」
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